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ビーストライダー・マガネ【鋼】  作者: 時波彷徨
0章 ~悪夢からの始まり~
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02

 激しい衝撃とともにマガネは目を覚ました。


 傍らに転がった目覚まし時計がジリジリとけたたましい音を立てている。

 ベッドからさかさまに転がり落ちたマガネは、ベージュの天井を見上げていた。寝起きのうえに頭を打ったのか、視界がぐらりと回転しているかのようだ。


「マガネ~!朝ごはん~!」


 一階から聞こえてくるママ、ユウミの声。また、嫌な夢を見たなあ…と、仏頂面を浮かべて起き上がると、目覚ましのスイッチを切った。一緒に落ちてくしゃくしゃになったシーツをたくし上げて元に戻すと、マガネはそのまま階段を下りて洗面所に向かっていった。


「もう、ずーっと鳴りっぱなしよ、そろそろさっと起きられるようになさいよ」

 ユウミの小言を聞きながら、がしがしと歯を磨くマガネ。口をゆすいで顔を洗う。

「テーブルの上に用意してあるから、朝食、冷める前に、早く食べちゃいなさい」

 ベーコン、目玉焼き、トースト、サラダが並んだテーブルについて、コップにミルクを注ぐと、マガネはテレビのリモコンのスイッチを入れた。朝の番組を切り替えながら、サラダドレッシングをかける。

「……あぁ、マガネももうすぐハイスクールなんだから、たまには自分でもご飯作ってみたら?そのほうが、女の子にモテるかもよ?」

「うん……」

 生返事をしながら、チャンネルを変えるマガネの指が止まる。


「さあ、今年も盛り上がってきました!ビーストライド、ワールドツアー!現在の順位は!」


 熱を帯びた口調でリポーターが声を張る。テレビ画面にワイプして現れる順位表と、その横で激しくデットヒートするビーストライドのレースの模様が映し出された。


 ビーストライド。


 それは、おおよそコースとは言えないようなエリアをアクロバティックに超えていく過酷なオフロードレーシングだ。


 用意されるコースは、サーキットのように平坦に整備された場所もあれば、アスレチックかボルダリングのように縦横に複雑な構造物が張り巡らされたトリッキーなコースもあり、密林生い茂るジャングル、険しい山や谷、切り立った崖や断崖、廃墟のような都市や遺跡の中を駆け巡ることもある。それらが全て混在した、コースと言えないような場所でも開催される、とても危険なエンデューロレースだ。


 そんな、道なき道の険しいコースを、肉体とマシンの性能を駆使して乗り越えていく。


 ライダーたちが駆るマシンは、二輪でまたがるバイクモードから、四足歩行形態のビーストモード、そして二足歩行形態のヒューマンモードへと変形をすることで、あらゆる地形を乗り越えゴールを目指す。外骨格を人工筋肉で操る強化服のようなマシンは、ライダーの身体の動きに動して、超人的な運動能力を発揮する。その特徴的な四足形態のシルエットから、様々な動物を模したマシンがライダーのシンボルとしてあてがわれ、人々からは“ビーストマシン“、そしてそのマシンを使って行う競技のことを“ビーストライド”と呼ばれていた。



「特に、今年の優勝候補、USAのジョン・ジェファーソンとジュディ・シンガーのバディは、タイガーに模したパワフルな走りで他を圧倒しましたが、ナイジェリアのフェィニティ・カヌとディナ・オリンピオのインパラのようなすさまじい跳躍力で、断崖絶壁のケイプコースでまさかの追い上げが──」


 レースの実況を見つめながら、朝食をほおばるマガネ。廊下からパタパタと忙しそうに駆け回るユウミの足音が聞こえる。


「ママ、今日は仕事で遅くなるからね。晩御飯はキッチンに用意してあるから、自分で温めて食べるのよ」

「うん」

 リビングに向かってくるユウミの足音が聞こえると、マガネはリモコンを手にすると、サッとチャンネルを変えた。

「晩御飯、多めに作っておくから、隣のおじいちゃんにもお裾分けしてね。」

「うん」

「あ、もう!行儀が悪いわね。食事中にTV見るのやめなさい。マナーがなってないって笑われるのはママなのよ」


 スマッシュポテトのボウルをもって現れたユウミは、TVを見ながら朝食を食べるマガネを見て、叱るように言った。画面からは今年のアメリカン・フットボールのプロリーグ成績表が映し出されている。三位リーグに勝ち上がった、地元チームのレッドパンプキンズがフィールドに集まってチームメイト同士がお互いを称えあっている。


「フットボール部のほう順調?」

「どうかな…、次の選抜でスタメン入りできればうれしいけど…」

「そう!ミドルリーグに間に合うといいわね」


 そう言ってユウミは、マガネの頬にキスをすると、キッチンに戻っていった。


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