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細かいことは気にせずに、スカッと楽しく、
少年漫画的なノリで、爽快なメカレースバトル小説を目指して描いております。
展開はべたべたに、設定的には、がばっと勢い重視でやっていますので、
エンターテイメントとして楽しんでいただけると幸いです。
ルートが見えた!
マガネは、体を大きく傾け、マシンをドリフトさせた。
土煙を上げ、直線の細い道に差し掛かると、スロットルを全開にして後輪を加速させる。
渓谷を乗り越え、前輪を上げたバイクが空に舞い上がり、くるりと回転した。そのままマガネのバイクは前後の二輪を収納すると、折りたたまれた関節機構を展開して四足形態へと姿を変えた。
岩から岩へ飛び移るその姿はまるで獣のようだ。
「マガネ!こっちよ!」
前方から声がかかると、巨大な樹木の枝に足をかけたマシンが、マガネに向かって手を伸ばしている。幼馴染のティナが駆るビーストマシンだ。
「ティナ!」
大きな枝を蹴ると、マガネがマシンの手を伸ばし、アンカーワイヤーを撃ち放った。枝葉にワイヤーを巻き付けると、二足歩行形態に変化した二機は、木々の間をターザンのように飛び交っていく。振り子のように大きく円弧を描き、その反動を使って大きく跳ね上がった。
ワイヤーを回収して、シンクロするかのように降下すると、折り重なる巨大な枝葉の道に降り立ち、マシン同士で手を取り合いながら滑るように疾駆していく。入り組んだ樹木の連なりを超えて、うっそうとした密林を超えると、二人のマシンは、切り立った崖の下へダイブして行った。
二人の機体が奏でる華麗な空中軌道がスクリーンに大写しにされ、観客たちが、一斉に歓声を上げた。
ここまでのルートでミスはない。ラップも好タイムが狙えるだろう。
マガネとティナは互いにうなずき、二人同時に断崖の先からジャンプした。
自分たちの前にレーサーはいない。後はゴールを目指すだけ!
そう確信したマガネがマシンの起動を上げて加速して行くと、罵るような声が後ろから響いた。
「させるかよ!マガネ!」
マガネのマシンに衝撃が走る!
マガネに取りつき馬乗りになったマシン。そのコクピットから見下すように笑みを浮かべる。
「ビフ!」
ことあるごとにマガネに突っかかる、いやな同級生!ビフ!
「インチキライダーの息子のくせに、いっちょまえのビーストライダーを気取んなよ!」
「なにを!」
あがらうも、ねじ伏せられ、激しく地上をバウンドするマガネ。
あんなに調子よく走っていたのに!早くコースに戻らないと!
焦るマガネがスロットルを上げて加速しようとするも、泥に後輪が取られて前に進まない。マシンを立て直そうとするマガネ、しかし、ぬかるみが全身に絡みつき、どんどん身動きが取れなくなっていく。
さっきまで歓声を上げていた観客たちがざわめきだし、ぼそぼそとお互いにひそめきあう。
「インチキライダー?」
「あの男の子が?」
「いかさまライダーの息子?」
「そんな子供が、ビーストライダーって?」
「じゃあ、このレースも?いかさま?」
その声に翻弄され焦るマガネ。
違う違う!俺は!ちゃんと走っていた!
「マガネぇ!おまえのパパはビートライドでいかさまをした、詐欺師ライダーだ」
違う!違う!俺とパパは関係ない!
「詐欺師の息子はしょせん詐欺師!いかさまライダーだ!そんなお前が、ビーストライドになろうだなんて!許されるわけねえんだよ!」
ぬかるみにはまるマガネの体。
「なにが鋼!だ!お前なんか鉄くずだ!スクラップ野郎だよ!」
冷たい観客の目と、見下すようなビフの笑いがマガネを心を突き刺していく。
違うんだよ!俺は!俺は!
もがくように暴れるマガネ。しかし、ぬかるんだ泥は、容赦なくマガネの体を飲み込んでいった。