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転移巫女と勇者の二大陸物語(仮)  作者: 煌清
1章 1部
14/82

14.優の旅立ち


闇の鎧騎士は座りこむめぐみさんに向かい膝をついて手を差し伸べる。


「あなたが巫女の友紀様ですね・・・私はアラン様の使い魔にございます。」


「・・・・・えっと・・・違います。」


「・・・・・・・」


そこにエリアドルさんが現れ闇の鎧騎士に頭を下げた。


「助勢感謝いたします。で・・・あなたは魔法なのですか?」


「はい。私はアラン様の闇の力で産み出された兵士です。友紀様はどちらに?」


エリアドルさんは神妙に頷く。


「では、こちらに参りましょう。」


鎧騎士はエリアドルさんと一緒に馬車へと向かう。


「友紀様ですね?私はアラン様の使い魔でございます。さとし様の件でお話があります。」


友紀は大きく目を開けて前へ一歩踏み込むがエリアドルさんに止められた。


「今は怪我人を速やかに馬車に乗せ急ぎ南に向かいましょう。ゼスト王の息子、娘、孫、ひ孫。年齢はバラバラですが今生存している要職が20から30人とも言われております。

第2陣がこないとも限りません。」




はっ、と俺は目が覚めた。そして友紀に干し肉を渡される。めぐみさんは?カレンさんやリカルドさんは?

俺は周りを見渡す。馬車が揺れ外はもう昼過ぎというところだ。皆ピンピンしている。俺だけ寝てたのか?起き上がろうとしたがふらついて起きれない。


「大丈夫?もう3日も寝てたんだよ?話は後だよ。まずその干し肉を食べてみて?」


俺は何のことかわからず干し肉を友紀の言われるがままに口に入れ咀嚼し飲み込んだ。頭の痛みや身体の痛みが抜けていく。


「何だこれは?そういう薬なのか?」


「いや違うよ。さとしが家の近所で買ってくれたビーフジャーキー。私達のメロンパンも回復するんだってー。それとね、さとし生きてるよ。

まあ今は・・だけど。アランさんって人の所にいるんだって。」


俺はエリアドルさんや友紀に、さとしやアランさんについてと南のラナ大陸のこと、異世界の食べ物など色々聞かされた。

要は霧の砂漠の下に大きな大陸があって昔から生きてるアランさんに拾われた。と、あと異世界の食べ物は万能薬だと。それ以外は知らないと。まあそういう事だ。


「だがまだ闇の魔法を操る方が存在していようとは・・。」


エリアドルさんが顎に手を当てて呟く。

この闇の騎士がそのアランという人の闇の魔法なのか?


「闇の騎士・・殿、俺は優といいます。そのアランという人とさとしは今一緒にいるんですか?」


闇の騎士は俺にも膝を付いて話し始めた。


「優様ですね。わたしはアラン様の使い魔。あなたも守護するよう仰せつかっております。・・・さとし様とアラン様は4日前は一緒でした。私にこれ以上、お話する知識はありません。」


俺は頷き、バッグから方位磁針を取り出し指輪の赤い光と重ねる。さとしの光は少しだが西に移動しているようだ。

エリアドルさんも一緒に確認して頷いた。


「闇の騎士殿を召喚できるアラン殿と一緒に行動しているのであれば多少は安心なのではないですか?」


「確かにそうですね。」


闇の騎士はこちらをちらりと見て話し出す。


「我が主アラン様は全く移動はされてません。私はアラン様の魔法。動かれれば直ぐにわかります。」


友紀もめぐみさんもエリアドルさんも絶句し闇の騎士を見る。


「なんで?さとし1人で出発したってこと?無理だよ絶対。だって大陸違うんでしょ?」


友紀が歩み寄り食ってかかる。闇の騎士は平然と友紀の方を見る。


「それは我が主とさとし様が決めたこと。私に知る由もありません。」


「じゃあ私の指示に従うんでしょ?ならさとしを手伝いに行ってよ?出来るんでしょ?」


闇の騎士はまた平然とした態度で首を振る。


「いえ。あなた方を守護する。という主からの命が優先されます。その指示には従いかねます。」


皆が下を向き黙ってしまう。とそこに御者をしていたカレンさんがこちらを向いた。


「皆さん塔が見えてきました。ご覧ください。そこで話合いましょう。」


カレンさんが少しだけ笑顔を作り話しかけてきた。そこにリカルドさんが深く頷く。


「そうです。ゼストの襲撃は暫くはないでしょう。一緒に考える時間はあるはずです。」


俺は頷き「そうですね。」とリカルドさんに頷き返す。リカルドさんも俺を見て頷いた。


「到着次第作戦を練りましょう。もうすぐ到着ですよ。」


とエリアドルさんが付け加える。俺は馬車の御者のカレンさんの横に腰掛け前方を見る。

塔が見える。100m程か?旅行で行った大阪の通天閣くらいだろう。


「優さんでいいかしら?」


とカレンさんに聞かれ


「優でいいよ。俺は平民のガキだ。」


と答える。


「じゃあ優、あれが風の塔よ。高い塔でしょ?」


俺は何度か東京に行く機会がありスカイツリーも見ていた。そこまで高いとは感じなかったが渦巻き状のレンガ作りに神秘性を感じ感動を覚えた。


「・・・そうだな。凄い建築物だ。」


カレンさんは満足そうに頷く。


「私の住むリンドバル領からも冬の空気の澄んだ日は遠くに見えるのよ。」


俺は塔を見ながら頷いた。


「そうか・・・」


カレンさんは俺の素っ気ない返事にムッとした表情になるがすぐに笑顔になった。


「私はね。王都にいるのが嫌だったの。侯爵の発案に不安はあったけど生きてリンドバル侯爵領に戻れるって思ったら嬉しかった。リカルドもよね?」


リカルドさんは俺とカレンさんが御者の席に座る間の後ろに立って眩しそうに額に手を当て塔を眺めている。


「そうですね。カレンさん。俺も3人揃ってリンドバル領に戻れるのを嬉しく思います。巫女様や優さん達に感謝しているんですよ。」


リカルドはそう言って俺の肩にポンと手を置いた。


「優でいいよ。リカルドさん。」


リカルドさんは乗せている手を離しポンポンと2回俺の肩を叩いた。


「じゃあ私の事はリカルドと呼んでくれ。優。」


俺は頷き笑顔で答えた。


カレンさんが馬の手綱を引きブレーキをゆっくりかける。


「着きましたよ。皆さん。風の塔です。」


カレンさんが後ろを向き皆に伝える。リンドバル侯爵は昼寝から覚醒しアクビと背伸びをして「失礼。」と言って降りていく。幌馬車がよっぽどキツかったのだろう。

皆が降りカレンさんは馬車を塔の入口横の馬小屋に預けに行った。俺やエリアドルさん、リカルドが荷物の整理をして友紀は草原の草に寝転んで空を眺めている。めぐみさんはそれを見て微笑んでいる。

その時だ。塔の重い扉が開いて中から2人の男女が飛びだしてきた。


「エリアドルさんお帰りー。早かったね?そっか。あっちの帰りは元の時間に戻るんだっけ?」


「こらサラン。失礼だろ。エリアドル様お帰りなさい。どうでしたか?巫女様はお連れになれましたか?」


エリアドルさんは寝転んでいる友紀を見て少し微笑んだ。


「あちらでゆっくりとされてるお方ですよ。友紀様といいます。」


「ほうほう。あの日向ぼっこをしてる方かなー?」


サランは興味深そうに駆け寄って友紀の横に寝転がった。


「暖かいねー。巫女様。いい天気。」


友紀はちらりと横に寝転がった女の子を見る。

俺は荷下ろしをしながら空を見上げた。見渡す限りの草原に暖かい風が吹き、目の前の塔だけがこちらを見下ろしている。塔の門は北側に位置し、塔の後ろ、遥か遠くに大きな闇がうっすら目に入る。

俺は軽く指輪を握りさとしの安否を気にし南にいることを再確認した・・


「そうだねー。天気いいねー。それで君は誰かな?」


友紀がサランに話しかける。突然サランの首根っこを掴み男が座らせた。


「こらっサラン。巫女様、長旅でお疲れでしょう。ごゆっくりしている所申し訳ありません。私はミラン、これはサランで私の姉です。私達双子はエリアドル様と共に塔の管理を任されております。」


身長は同じ160cmくらいか、どちらも暗いグリーンの髪色でスラリと白いローブを着こなしている。耳がピーンと横に伸びてエルフ種なのが伺える。歳は16,7くらいに見えるが・・

ニマニマ笑って怒られている方が姉ということだ。


「そうでした。エリアドル様、南西の旧サウスリッド王国、死の森からアンデッドが発生したそうです。リンドバル領に押し寄せているそうです。」


荷を肩に背負ったリカルドさんと戻ってきたカレンさんがキッと双子を睨む。カレンさんは馬小屋にとんぼ返りで走り出す。リンドバル侯爵も目を閉じ息を吐き出す。


「エリアドル様、私はここでこのまま領に戻ります。アンデッドの数が心配です。大事ないとは思いますが、カレンとリカルドはこちらの領の要。戦線に戻りたいでしょう。」


エリアドルは頷きリンドバル侯爵にここまでの感謝を伝える。


「リンドバル侯爵、ここまで本当に助かった。ゼスト王と決別までさせて・・・なにかあれば加勢を約束しよう。」


カレンさんが馬車でこちらに駆けてくる。リカルドさんが頭を下げ馬車の荷台に飛び乗った。


「ちょっと待って下さい。俺も連れて行ってくれませんか?」


荷台のリカルドはキョトンとこちらを見ている。俺は馬車に駆け寄った。友紀やめぐみさんが驚いてこちらに走ってくる。


「友紀、めぐみさん、それにエリアドルさん世話になった。俺は南に行くよ。まずはアンデット討伐の加勢をしてくる。俺は少しでも強くならなければならない。」


友紀は不安そうな目でキョロキョロして落ち着ちつきがない。


「友紀、お前はエリアドルさんに色々教わるんだ。いつか戻ってくる。」


めぐみさんは友紀の肩に手を置き俺に頷いた。友紀は口をパクパクさせて言葉が出てこないが大きな目に一杯涙を浮かべている。・・・・泣いてくれるんだな。

俺は苦笑いのリカルドさんの手を掴み荷台に乗った。カレンさんがエリアドルさんや友紀達に手を振り馬に鞭を入れた。馬車は塔より更に南に進んでいく。


「馬鹿―ーーー。死ねーーーー。」


友紀の声が響き渡った。それはないだろう。と俺もリンドバル領組も苦笑いして手を振る。荷台に寄りかかり離れていく北の塔に向かいまた大きく手を振った。






優編 1部 終わりです。

次は友紀 1部 治政編です。

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