奇跡の味
『君の事が好きなんだ。付き合ってほしい。』
僕は勇気を出して彼女に告白をした。
でもこの想いは絶対伝わらないし叶わない。何故なら僕は女だから。
心は男、体は女、トランスジェンダー。
君は秀才だし綺麗だしクラスの人気者。それに比べ僕は不器用でブサイクで何の取り柄もない。
『あ!流れ星。』
彼女が目を閉じた。慌てて僕も目を閉じた。
『願い叶うなら今すぐ僕の夢を叶えてください』告白して間もなく心の中で奇跡を願う。
奇跡なんて叶うはずないのに。先に目を開けたのは彼女だった。
『私が何お願い事したかわかる?』
彼女は僕の返答を待たずに答えた。
『私、男の子になりたいって願ったの。何故だかわかる?』
僕は頭を横に振りながら涙を流して答えた。
『駄目だよ。二人の願いが叶ったら、また振り出しに戻っちゃう。』
『じゃあ、奇跡を願うより私達のこれからの未来についてじっくり考えよう』
彼女はそう言って僕の手を握った。
奇跡なんて簡単に起きないと人は言うしその通りだと僕も思う。でも君と出逢えた事が1番の奇跡だしそこに嘘偽りは無い。
この奇跡もう少しだけ味わっていたい。