日課
これは、とても順調というやつなんじゃないだろうか
この前のお茶会のことを思い出して、顔を赤くする。あの時、花を飾られた左の耳を触りながら。
彼との時間を思い返してニヤニヤするのが、すっかり日課になってしまった。
そんな私に、マリーが苦笑する。
「またオーキッド様のことを考えていらっしゃるんですか?」
マリーは私の専属だからか鋭い。マリーに言わせると、私がわかりやすすぎるらしいのだけれど、そんなことはない筈だ。
困り顔で肯定する。
我ながら、彼のことを考えすぎだと思いながら。
「うん…」
この前もらった花は、マリーに教えてもらって押し花にした。
あまりに綺麗に色鮮やかにできたので、思わず
「いよっ!押し花マイスター!」
とマリーを褒めたら、苦笑いを通り越して渋い顔をされた。我に返ってお父様の遺伝子を実感したのは、最新の苦い思い出だ。
ああ、えっと。何の話だっけ。
そう、彼が素敵という話だった気がする。
彼は本当に素敵な人なのだ。
容姿も声も仕草も服装も気づかいも。
どうして元婚約者は他の男の人を選んだのだろう?そんなに素敵な人だったのだろうか?
そう思って自分の元婚約者を思い出そうとしたけれど、あまりはっきり思い出せなかった。
どんな会話をしたのか、どんな表情だったのか。思い出そうとすると、今の婚約者の顔がちらついてしまって。
うん、やっぱり彼の方が素敵。
そう結論づけて、再びニヤける。
彼の婚約者になれてよかった。
素直にそう思える。
そう。元婚約者に捨てられたことはもう気にしていない。だってあのまま婚約していたら、彼とは出会えなかったから。
「結果オーライ!」
彼のことをとても気に入っているお父様が豪快に笑っていたけれど、その通りだ。
彼と結婚できるのだから、ちょっと嫌な出来事がその少し前にあったけど、もうどうでもいい。