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【完結】余りもの同士、仲よくしましょう  作者: オリハルコン陸
オマケ

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新しい婚約者

(本編「知らない一面」より前の話)


◇ ◇ ◇


俺の新しい婚約者は、いつも俺に会うたびに嬉しそうに笑う。

俺のことが好きなんじゃないかと、勘違いしてしまいそうになるくらいに。


けれど、そんな訳がないのはわかっている。何故なら、初めて会った時から彼女の俺を見る目はあまり変わらないから。

もし俺のことが好きであんな顔をするのだとしたら、会った瞬間から俺のことが好き、ということになる。


それは流石にない。


俺は、前の婚約者に「地味すぎる」と言われたことのある男だからな。まあ彼女も悪気があった訳ではなく、口が滑った感じだったが。

…それでも一応傷ついたが……それは済んだことだ。


確かに元婚約者の「運命の人」だという男は、派手な顔立ちをしていた。舞台役者にでもなれそうな雰囲気の。

あれと比べたら、そう言われても仕方がない。


その派手顔の男は、つまりは俺の新しい婚約者の元婚約者だ。

…ややこしいな。

まあともかく、あんな顔の男の婚約者だった俺の新しい婚約者が…

ややこしいな。もうミシュと呼ぼう。


ミシュはあの派手顔を見慣れているのだから、俺の顔に一目惚れなどする筈がない。

ということは…

婚約者としての義務感から、あんな顔をしてくれているのだろう。


正直、ミシュのその態度は嬉しい。

たとえ義務感からでも。

けれど、彼女と婚約したのが俺ではなくても、他のどんな男でもあんな風に接していたのかと思うと、胸の中がどす黒くなる。

それに…あの態度は、確実にミシュの元婚約者にも向けられていた筈だ。あの派手でキラキラした男にも。


そう思うと、たまらない気持ちになる。彼女のあの顔を向けられていた男が、俺以外にもいるなんて…。

むしろ彼女は、元婚約者の姿を俺に重ねているからあんな顔をするのではないか…

そんな考えまで浮かんで本当に嫌になる。たとえそうだとしても、どうしようもないのに。

元婚約者に振られた時でも、こんな気持ちにはならなかったのにな…。



実を言うと、俺は前の婚約者のことが少し苦手だった。

美しく可憐な女性ではあったが、うっかり触れたら折れてしまいそうなほど儚げで。少し夢見がちで。…上手く説明できないが苦手だった。

一緒にいてもあまり…気が休まらなくて。


何か贈り物をすれば一応喜ぶ素振りは見せるけれど、本当は何か全く別の物を望んでいるように見えて。彼女が本当に望んでいる物など、俺は一生何一つ与えてやれないような気がして気が重かった。

それでも、婚約を解消することなど俺には思いもつかなかったんだがな。


…まぁそれも済んだ話だ。

彼女が俺を振ったおかげで、俺はミシュに会えたのだから。



ミシュといるとほっとする。張りつめた感じのない彼女の側は、居心地がいい。

たとえ彼女が、多少無理をして微笑んでくれているのだとしても。それでも俺は安らいでしまう。



そんな訳で、俺はミシュを気に入っている。前の婚約者よりずっと。

彼女の前の婚約者と比べれば、地味な俺はどうしても見劣りしてしまうだろうが、俺の方はミシュのことを気に入っている。

だから少しでもミシュに好かれようと、ミシュを楽しませようと実は必死だ。

だから、彼女の好きなことについて調べたりもする。



たとえば劇だ。

ある日、彼女とお茶を飲んでいたら、流れで話題の劇を観に行こうという話になった。

たまたま友人から聞いたこぼれ話があったので披露したら、彼女は目を輝かせて聞いてくれた。


それで嬉しくなって、演劇などには興味もなかった癖に、その友人や他の知り合いに聞いたり執事に頼んだりして、次に観る予定の劇について山ほど調べるようになった。


それを、劇を一緒に観た後で彼女に語って聞かせると、身を乗り出して聴き入ってくれるのだ。好物のフルーツケーキに手をつけるのも忘れて。

よほど彼女は演劇が好きなのだろう。


そんな風に何度も劇を観に行ったり調べたりしているうちに、俺も観劇を楽しめるようになったので、事前の調査も苦にならなくなったが。


それでもやはり、俺が彼女と劇を見に行く一番の目的は、観終わった後で彼女と語り合う為だったりする。


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