出発
校庭には、試験を受ける生徒達が集まっていた。
武術科生徒は、一班5名の3班。魔導科は、一班のみの5名であった。そして引率の教師4名。
その中には、シフォン=クレアの姿もあった。
まだ、出発するには早く、教師も生徒も雑談するなど、各々の時間を過ごしていた。
その中、教師達の話しがもれ伝わってくる。
「最近、プリークネスの森に魔族が出没するって言う噂があるのを知ってますか?」
「只の噂ですよ!魔族は、遥か南の地カパネッレを占拠してから、まるで動く気配がないんですよ!こんな所までは来ないでしょう。」
「しかしなぁ、旅商人達が見たって言うんだ。彼らが嘘をつくとは思えないだがなぁ・・・」
「魔族もそうなんだけど、私は神族の方が問題だと思うんですよ。」
「あぁ、それもそうですね、北方の国タビーが神族の庇護下に入ってから神族は、そこを拠点としている様ですし、地理的にも近いですからねぇ。」
「まぁ、前の五日間の実地試験は、何事もなく終わってますし・・・問題ないでしょ!」
そんな話しを横目にしていた、シフォンは思った。
そう、数年前、突如として神族と魔族が地上に現れた・・・
それは、今まで伝説上の存在だった、神族と魔族を現実の存在と知らしめた・・・
だがそれによって、今まで御伽噺の様な扱いを受けてきた、伝説記が歴史書としての価値を上げる結果になった。
伝説記、伝説の時代に書かれた現存する最古の書物。
著者アーネスト=ヒストリー・・・とされているが、そもそも実在した人物かも不明。
現在、66篇が伝説記として承認されている。未だ未発見の伝説記が世界の何処かに眠っている・・・
わたしは、純粋に世界を自分の目で見てまわりたい・・・と同時に伝説記の発見の旅に出たいと・・・この想いを今日、試験が終わたら家族に打ち明けよう。
そうこうしてると、一人の教師が号令をかける。
「班ごと全員集合!!」
生徒達は班ごとに整列すると。
「全員揃っているな!そろそろ出発するぞ!」
シフォンは、班のメンバーを確認する。
ユーワ(女)、シルク(女)、シチー(男)、ダイナ(男)の4人だ。
ただ単に近くに居たってことだけで組んだ5人だ。
仲良しグループと言う訳でもないが仲が悪い訳でもなく、いい意味で自然体と言う感じな班だ。
「何度もやってる事だからって油断するなよ!お前ら!!」
一同は、審判の門に向かうため学院正門を出ようとしたときである。
制服を着た金髪碧眼美少女がシフォンに近づいて来たのだった。
「シフォンさん!これから最後の試験ですのね。」
「ごきげんようコリーダさん。」
「まぁ、貴女の事だから試験は、問題ありませんね。それはそうと、卒業前に明日もう一度、勝負よ!」
その様子を見ている生徒達がヒソヒソと話をしている。
「まーた、コリーダの奴、シフォンさんに絡んでるよ・・」
「一度も勝ったことないのに・・・」
「もう、諦めればいいのに・・・」
「あなたたち!!聴こえてますわよ!」
生徒達はソッポ向いてその場をやり過ごす。
「コリーダさん、明日は用事がありますので、又、今度と言う事で・・・」
「あら、逃げますの?」
シフォンはため息を付くと・・・
「それでは、コリーダさんの勝ちってことで宜しいでしょうか?」
「ふ、不戦勝ですか、それも悪くありませんけど、やはり、直接、叩き潰さないと気が済みませ・・」
とその時、一人の教師が割って入ってきた。
「こらぁ!コリーダ=セルシス!! 又、お前か。これから試験なんだぞ!邪魔をするんじゃない!」
「あら、先生。邪魔なんかしてませんわ、これから試験を受ける学友に激励に来ただけですわ。」(まだ、移動中なんだから、構わないでしょ。)
「わかったわかった!とにかく、君は、家に帰れ、授業はないんだから。」
「では、皆さんごきげんよう。」コリーダは、すごすごと帰っていった。
コリーダさんは相変わらずですね。何かとちょっかいを出してくる・・・嫌いではありませんけどね・・・わたしに真正面からぶつかってくるのは彼女だけだったから・・・
一同は、審判の門へと向かうのだった。