コリーダ強化計画
ブライアンの話す言葉の視覚化に挑むコリーダ。
「え~あ~その~なんだ~・・・何、話せばいいの?」
ブライアンは、困惑気味に聞いてくる。
「その調子、その調子・・・適当でいいから。」
「適当でいいって言うけど、そう言うの困るんだよね。」
「だったら、儲け話でもしたら?」
「儲け話は聞くものだ。話すなんてもってのほか。」
「だったら、儲かった話しで。」
「儲かった話しは、一杯ありすぎてな・・・あれもこれも話したいな・・・」
コリーダは、ブライアンの発する言葉に集中する。
身体から発散する魔力を視覚として捉えるのと同じ様に発した言葉を魔力として視覚として捉えた。
それは、実に簡単だった。
コリーダは、自身の目に魔力を注ぎ込むイメージをした。
ブライアンの口から青色の吐息が吐き出されている様にコリーダの目に映る。
「見えました!私にも見えました。」
「うん。では今度は、見えた魔力の術式を見れるようにする。」
「また、簡単に言いますね・・・で、具体的にはどうすれば?」
「見えた魔力を呪文として認識すればいい。」
「普通に話しているのに呪文として認識できるものですか?」
「言葉自体が術式になっているのだから、普通に話していても呪文として捉えられるはず・・・」
「はずね・・・まあ、やってみますけど・・・」
「じゃあ、ブゥちゃんよろしく~。」
「よろしく~じゃないよ。」
「まあまあ、小気味のいい喋りを聞かせて下さいよ。」
「小気味のいい喋りなんて芸人じゃあるまいし、できるわけないだろ・・・私は商人、商人なんだよ。」
「うん、うん、わかるわかる。よ!喋れる商人、待ってました。」
「しょうがないなぁ・・・じゃあ、私がイスパーンで大儲けした話しをしようじゃないか。」
ブライアンの自慢話が始まると、コリーダは、再び自身の目に注ぎ込んだ。
先程と同じ様に青色の吐息が目に映る。
コリーダは、更に目を凝らした。
青色の中に、何か異物のような何かが漂っている?
灰色の何か・・・
多分、これが術式の痕跡なのだろう・・・
コリーダは、術式の痕跡だろう灰色の異物を目で追った。
呪文として捉えられるのなら、あの灰色を読み解く必要があるわね・・・
読むと言っても、文字にすらなっていない・・・
となると、どうする・・・目で捉えた物をありのまま、感じたままを言葉にすればいい。
コリーダは、感じたままを口にする。
それは、文章にならない文字の羅列、意味をなさないモノだった。
「うん。いきなりここまで行けるとはね・・・」
ジェイドは、にこやかに話す。
「今日はここまでにしておこうか。今度は実際に魔法の詠唱してもらった呪文を視覚として捉えてみよう。白い娘なら手伝ってくれるだろうし。」
「わかりました・・・」
「・・・とその時、スパーオ商会の邪魔が入ってね、競売の値がつり上がって行ってね・・・」
「はいはい。ブゥちゃんもう結構です。」
「ここからが、いいとこなんだけど・・・」
「会長さん、ありがとうございました。」
「ええ・・・これからなんだよ、これから・・・」
ブライアンは、寂しそうに帰って行った。
そして、ジェイドも続いて帰ろうとしていた。
「待って下さいオージェンさん。」
「ん?今日はもう、いいでしょ。」
「・・・聞きたい事があります。」
「まあ、いいけど。」
コリーダは、神妙な面持ちで話し出す。
「なんで・・・急に私に教える気になったのですか?前に頼みに行った時は、渋々と言った感じでした・・・何故ですか?」
ジェイドは、淡々と答える。
「最初に言ったと思うけど、君にシフォン嬢ちゃんより強くなって貰いたいだけだよ。」
「どうしてですか?」
「シフォン嬢ちゃんは、停滞している・・・前に進めないでいる。幾度となく窮地に立たされて尚・・・」
「それでも私よりは良くやっています。」
「良くやっているか・・・そうかもしれない・・・しかし、このままだとあの子は・・・大事なものをなくすだろう。今、自分自身の力と向き合う必要がある、手遅れになる前に・・・。
残念なことに私は、あの子に嫌われているからね・・・私の言うことは聞かないだろう。だから、やり方を変えることにした。」
「御学友、君には悪いと思っている。君をあの子の当馬にしようとしている・・・」
「あてうま・・・」
「ライバルが先に進めば・・・或いはあの子も奮起すかもしれない。」
「要は、あなたは、シフォンさんの為に私に教えるってことですね。」
「悪いね・・・」
「いいえ。逆です。ありがたいです。私はシフォンさんのライバルでありたい。でも、今の私では胸を張って言えませんから・・・当馬でも構わない、それで強くなれるのなら」
「教えて下さい。これから私がすべきことを。」
「ああ・・・」
私には時間がないのだから・・・
コリーダとジェイドの利害が一致した瞬間だった。
コリーダ強化計画始動。