更にもう一人のブライアン
見れば、コレクションルームの扉は開いたままだった。
「しもうた!確認や!」
コレクションルームに入ると、ケースに納められていた伝説記は、もぬけの殻だった。
「わ、私のコレクションがぁ・・・・・・」
ブライアンが嘆くが、すぐさま、支持を出す。
「まだ、近くにいるはずだ!探せ!」
「会長はん、ちょっと待った!」
マニータイプがそれを制止しようとする。
「なんだね君、早くしないとストームキャットに逃げられてしまうだろ。」
「大丈夫や、会長はん。犯人はまだ・・・この中におる!」
「全員、この部屋から出るんじゃない!」
フラットが探しに行こうとする者たちを止めた。
「本当にまだこの中に犯人がいるのかね?」
「間違いあらへん。この一連の騒動は、想定内や。やから、この部屋の出入りは予め制限してるし把握もしている・・・」
「ほう、それでは、もう犯人の目星は付いているかな?」
「せやな。」
「それは誰かな?」
「そんなもん、簡単や・・・わいら、ガキ共、会長はんの取り巻き・・・真っ先に疑われるやろ・・・一番安全に成り代われる奴は一人・・・そんでもって、既に偽物が現れて注意が反れている奴・・・」
「会長はん、あんたや!」
「はははは・・・面白い冗談を言うね君・・・」
「冗談じゃあらへんで、怪盗嵐猫!」
「語るに落ちたとはこのこと・・・君がストームキャットだな!この私を陥れてストームキャットに仕立てあげる腹積もりなんだろう!」
「なんやて!」
「早くその男を捕まえんか!」
ブライアンの支持を受け、取り巻きたちがマニータイプににじり寄る。
「ちょ、ま!フラット!ガキ共!見てへんで、なんとかせぇ!」
静観していたシフォンがヤレヤレとばかりに前に出る。
「それでは、茶番を終わらせましょう・・・」
「茶番とな・・・」
「はい・・・では、入って来て下さい。」
別室の扉が開くと、ジェイドとブライアンが出て来る。
「馬鹿な・・・見つかるはずが・・・」
「と言う訳や、偽会長はん。」
「残念でしたね。こっちには、探しものを探すのが上手い人たちがいましたから・・・」
「お前、何故、会長はんを始末しなかった?」
「・・・殺しは、私の盗みの美学に反する・・・」
「美学?毒も拷問も美学かいな!」
「毒は、致死量を踏まえて投与したはずだよ。拷問の方は、私の関与外のこと・・・私は、ブライアンの手下を一人見繕ってくれと頼んだだけだったんだが・・・」
「誰や!誰に頼んどった!」
「そんなの名探偵さんなら、もうわかっているのでは?」
「ええから、教えんかい!」
「闇のブローカー集団・・・『コカトリス』・・・これでいいかな?名探偵くん。」
「やっぱりかいな。じゃあ、そろそろ、本性を現したらどないや!」
「それは、できない相談だね。」
「じゃあ、捕まえてからゆっくり正体見たるわ!」
「それも、できないねぇ。」
取り囲まれるストームキャット。だが、余裕の表情を見せている。
「貰える物は貰ったし・・・そろそろ、お暇しますかな・・・」
「待ちなさい!伝説記を返しなさい!!」
シフォンが珍しく大声をあげる。
ストームキャットは、伝説記を見せつけながら言う。
「これは、もう私の物・・・返して欲しければ力ずくでどうぞ。」
シフォンは、ブルブルと震えている。
「貴重な伝説記を・・・素手で触るなんて・・・許しません!」
わたしだって、触れたことないのに。
「おや?怒ってんの?」
「怒ってません!」
「シフォンサンガ、キレテマース。」
シフォンの怒りは頂点に達していた?