もう一人のブライアン
ブライアンは、屈強な戦士たちをかき集めて自宅の警備にあたらせた。
「フフフフ・・・こんだけ厳重な警備だ。ストームキャットも迂闊には手を出せないだろう。」
「このボケェ!なにさらしてんねん!」
マニータイプは、ブライアンをどついた。
マニータイプは、警備に取り押さえられ連行されて行った・・・END
「ちゃーう!そや、ないやろ。」
マニータイプは警備に羽交い絞めになりながらも叫ぶ。
「申し訳ございません会長。うちのマーニーが失礼しました。」
フラットクラフトが頭を下げる。
「君は?」
「マーニーの相棒・・・助手のフラットクラフトです。」
「ほうほう。君は、まともなんだな。」
「ははは・・・」
「おい、そこ、まるでわいが、まともじゃないみたいやろ。」
「まともじゃないだろ。」
ブライアンの集めた人々で敷地内、外に溢れかえっている。
「こんなに人がおったら、ストームキャットが既に紛れ込んどるわ。」
「うん。奴は関係者に成りすまして、盗みをすることもあるからな・・・」
「うちの者にすり替わられる間抜けはいない。」
「・・・だと、いいがな。」
そこに、シフォンたちもやって来る。
「来たな、ガキ共・・・」
シフォンは、マニータイプに軽く会釈するとブライアンと話し始める。
「会長さん。準備は万端です。」
「そうかい、そうかい。頼りにしてるよ。」
「なんや、なんや、しょーもない作戦でも立てとったか?」
「ええ。」
シフォンはにこやかに答えた。
なんやこのガキ、えろー余裕があるやないかい。
「マニータイプさんでしたっけか・・・勝負はあなたの勝ちでよろしいですよ。」
「はあ!?やる前から敗北宣言かいな。おもろないなぁ・・・」
「わたしたちは、伝説記を守るのに全力を尽くしますので、ストームキャットは、ご自由にお捕まえ下さい。」
「どうせ、捕まえられへんやろから、ええ判断やで。」
「どうも。」
シフォンはすまし顔で答えた。
「マーニー・・・君の負けだ。」
「なんでや!わいの勝ちやろ。」
「彼女たちの方が大人だ。」
マニータイプは憮然としながらもストームキャットが現れるのを待った。
◇◇◇
少しだけ前のこと、シフォンたちは、屋敷全体に結界を張った。
「こんな結界で、本当に大丈夫?」
コリーダは、疑問を投げかける。
「この結界は、破られる前提で張りました。」
「どう言うこと?」
「相手は、コレクションルームの結界を何とかできる自信がある様ですし、こんな結界、いとも簡単に突破するでしょうから・・・」
「ヤブラレレバ、ストームキャットガ、キタコトヲガ、ワカルトイウスンポウデスネ。」
「来たことがわかれば、対処も容易になるでしょうからね。」
「それに今回は、切り札もあるからね~。」
「サリエス先生、お願いします。」
「仕方ありませんね・・・何とかしましょう・・・・・・サンカルロが!」
はい、知ってた。
「と、言う訳でサンカルロ、コレクションルームに入って伝説記を守るのよ。」
「空気がなくても幽霊なら問題ないものね。」
「わしを何だと思っている・・・」
「最高の警備員ね。」
サンカルロは、ブツブツ言いながらもコレクションルームに入ってくれた。
「わたしたちも、屋敷内に戻って警備に加わりましょう。」
◇◇◇
陽も傾きかけた夕刻・・・ストームキャットの予告状の刻限がやってくる。
「ストームキャットは、まだ、現れんのか。」
ブライアンは、イライラしている様子。
「まさか、もう・・・盗まれている?」
「それは、ありませんわ。サンカルロが異常なしって言っています。」
サリエスが自信満々に言う。
マニータイプとフラットクラフトは、周囲を警戒している。
鋭い眼光でその場にいる人々を見ている。
「マーニー。」
「ああ、多分、この中にストームキャットがおるで・・・」
「誰かわかるか?」
「ガキ共の誰かが怪しいと睨んではいるが・・・確証がもてん。」
「僕は、会長の取り巻きの中にいると思うけど・・・」
グハァ!
ブライアンのボディガードが泡を吹き倒れた。
ボディガードは手足をピクピクと痙攣を起こしている。
マニータイプがボディガードに駆け寄る。
「外傷はない・・・毒や。」
「ワタシガ、ゲドクシマース。」
「おお、すまんの姉ちゃん。」
シルクが解毒魔法をかける。
ボディガードの痙攣が治まり青ざめた血色も徐々に回復して行く。
「ボディガードは大丈夫か?」
ブライアンは、心配そうに覗き込んでいる。
「モウ、ダイジョーブデース。」
その騒ぎの最中、サリエスが叫んだ。
「サンカルロが結界が破られたって!」
見れば、コレクションルームの扉は開かれていた。
そして、その中には、サンカルロと対峙している男がいた。
その男の姿に皆、目を疑った。
ブライアン会長がもう一人いるのだ。
「私は、ここに居るぞ。」
もう一人のブライアンも言う。
「そいつは、私の偽物だ!」
「何を言う、そいつが偽物だ!」
「どう見てもお前だろ!」
サンカルロがコレクションルームに入って来たブライアンをふんじばった。
「こらぁ!貴様、何をする!!」
サンカルロがコレクションルームから偽ブライアンを連れだすと、その場にいる全員の前で床に押し付けられる。
「正体を現さんかいストームキャット!」
マニータイプが偽ブライアンの仮面を剝がそうとすると・・・
ボン!!
偽ブライアンが破裂し、中から別の男が現れる。
「こいつが、ストームキャットの正体か・・・」
よく見ると何処かで見た顔がそこにあった。
「この方は・・・・・・」
昨日、スキャットに親切にしていた門番だった。
その男は、白目をひん剥きうわ言を言っている。
「もう・・・許してくれ・・・何でもする・・・」
「こいつ、なに言うとるんや?」
「懇願してるね・・・」
良く見れば、拷問を受けた様な跡が体中に残っている。
「おい、しっかりせぇ!」
男に往復びんたをして、我に返らそうとした。
ビタン!ビタン!ビタン!
男は虚ろな目でマニータイプを見ると、懐から手紙を取り出し渡した。
「ああ・・・これで助かる・・・」
そう言うと男は気を失った。
「なんや・・・」
マニータイプは、すかさず手紙を開く。
「伝説記は、いただいた。怪盗嵐猫。」