マニータイプのプロファイリング
マニータイプは、事務所に戻った。
事務所には、助手のフラットクラフトが待っていた。
「マーニー、首尾はどうだった。」
「まあまあや・・・それよか、こいつを調べてくれへんか?」
預かった予告状をフラットに渡した。
「こいつの何を調べるんだ?」
「その紙の出どこ、インク・・・とにかく、すべてや。」
フラットは、予告状をマジマジと見る。
「ストームキャットって、今、話題の怪盗じゃないか。」
「せや、そいつを捕まえなぁならんのや・・・」
「また、面倒な依頼を引き受けて来たな。」
「問題あらへん。むしろ、おもろいわ。」
「ふぅ・・・ほどほどにな・・・調べ物は任せとけ。」
「ああ、頼むわ。」
マニータイプは、自分のデスクをガサゴソと漁っている。
「あったわ、あったわ。」
「なにがあったんだ?」
「こんなこともあらへんかと、ストームキャットについての資料を集めとったんや。」
資料をデスクに広げ、目を通す。
資料と睨めっこしながら考えるマニータイプ。
「何かわかったか?マーニー。」
「う~ん・・・。」
「せやな・・・主なターゲットは貴族か富豪やな・・・場所に関しては、一貫性があらへんな、神出鬼没や・・・ただ・・・ルランツ国内だけで活動しているのか・・・よその国には、一度も被害報告があらへんな・・・。」
「ルランツ専門ってことか?」
「そりゃわからん。被害報告がないだけかも知れんやろ・・・」
「だと、参考にならないな・・・」
「わかったことは、もう一つある。盗んだのは美術品ばかり、金銭は、びた一文、盗んどらんのや・・・。」
「ってことは、コレクターってことか?」
「せやな・・・美術品は、物を捌くにも苦労するやろからな・・・でも・・・何か、引っかかるんや。」
「何が引っかかるんだ?」
「荒いんや・・・盗み方が・・・」
「どう言うことだい?」
「コレクターやったら、美術品の扱いは慎重になるやろ・・・」
フラットが資料を覗き込む。
「強奪まがいのこともしているのか・・・」
「せや、美術品を傷つける真似をコレクターがするかいな。」
「確かにしないな・・・」
マニータイプは考え込む。
「ただの収集目的の泥棒じゃあらへんな・・・こいつのバックには、闇ブローカーが関わっているかも知れへん。」
「ヤバい連中じゃないか・・・」
「ああ、こりゃ、気を引き締めていかんとあかんかもな。」
「しかし、このストームキャットと言う泥棒は、手口も一貫性がないな。」
「正面からの強奪、すり替えと何でもありや。」
「・・・これって・・・複数の可能性があるのでは?」
「せやな・・・仲間がおっても不思議やない。」
「仲間の目撃情報はないのか・・・」
「まあ、せやろな・・・簡単には尻尾は出さへんやろ・・・」
「さて、マーニー。君が推察するストームキャットの正体を教えてほしいな。」
「知らんがな!・・・が、盗み自体は単独だと思うわ。」
「ほう・・・その心は?」
「感や。」
「感かよ。」
「ふぅ・・・じゃあ、明日どうする。僕も一緒に行こう。」
フラットが申し出るが、マニータイプは首を振った。
「ガキ共と勝負せなならんのや、だから、一人でええ。」
「ん?勝負?何のことだ?」
「ストームキャットをどっちが捕まえるかの勝負や。」
「マーニー・・・君のことだ喧嘩腰になったんだろう・・・で、相手も一人なのか?」
「ちゃう。何人かおったわ・・・でも、ガキや問題あらへん。」
「ガキって言うからには、相手は子供なんだろ?大人げない・・・。」
「しゃーないやろ・・・向こうが喰ってかかって来るやから・・・」
「はあ・・・とにかく、明日は、僕も同行するから。」
「あかん!面目たたんやろ!」
「マーニー、よく考えろ。面目が大事か、依頼遂行が大事か・・・」
「・・・依頼や。」
「じゃあ、僕が行っても問題ないね。」
「・・・勝手にせぇ。」
「そうさせてもらうよ。」
マニータイプは、フラットクラフトを伴いブライアン邸に向かうことになったのだった。
◇◇◇
一方、ブライアン邸とあるベランダで・・・
ジェイドとブライアンが二人で語り合っている。
「怪盗嵐猫か・・・大変なことになったな、ブゥちゃん。」
「本当は、面白いことになったと思っているんだろ、ジェイちゃん。」
「まぁね。」
二人に笑いがこぼれる。
「本当は、何しに来たんだいジェイちゃん。」
「シフォン嬢ちゃんがブゥちゃんに会いたいって言うから来ただけだよ。」
「本当?」
「本当さ・・・だが、事情が変わった・・・今回の件、利用させてもらうよ。」
「利用ね・・・まさか・・・ジェイちゃんが手引きしたのか!?」
「そんなことする必要ないだろ私には・・・」
「だよね。」
「でも、利用するって?」
「シフォン=クレアと愉快な仲間たちの活躍を見たいんだよ。」
「しかしね・・・彼女たちに任せて大丈夫なのかい?」
「その為に専門家も呼ばせたんだろ。」
「あの探偵も頼りにならない気がするんだが・・・それに当て馬なんだろ?」
「そのつもりだったんだけど・・・意外にやるかも?」
「まあ、いいや・・・ジェイちゃん、最悪の場合だけは頼むよ。」
「その時はね。」
「どうだい、たまには一杯?」
「知っているだろ・・・私には、必要ないことを・・・」
「必要なくても付き合ってよ。今日は飲みたい気分なんだよ。積もる話もあるしね。」
ジェイドは、ヤレヤレと思いつつもブライアンに付き合うのだった。