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all breaker  作者: paruseito
第Ⅱ章-Ⅳ バンセンヌ編
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コレクションルーム

 ブライアンのコレクションルームは、地下に設けられていた。

 部屋の前に着くと、ブライアンは、中に入るために儀式の様なことを始めた。

 スキャットは、興味津々で見ている。


 ブライアンは、パンパンと柏手を打つ。二礼二拍手一礼。


 すると、部屋の扉が開く。


 「はわわわ・・・これは、誰がやっても良いのですぅ?」

 「ははは・・・これは、私がやらないと開かないよお嬢ちゃん。」

 「凄いのですぅ。」


 ブライアンを先頭に部屋に入る。最後にシフォンが入ると、扉が堅く閉じられた。


 コレクションルームは美術品の数々が綺麗に飾られている。

 「はわわわ・・・ジャカールの絵画ですぅ・・・あれは、コガンの石像ですぅ・・・こっちには、ボクサイの墨絵ですぅ・・・」

 スキャットは、興奮気味で美術品を見廻している。

 「スキャットちゃん、詳しいですね。」

 「芸術が好きなのですぅ。なので、詳しくなりましたのですぅ。」

 「お嬢ちゃんは、目が肥えているのだね。」

 「はい、なのですぅ。」


 シフォンは、数ある美術品には目もくれず、伝説記レジェンダリーが飾られているケースの前にやって来た。


 「・・・・・・」

 シフォンは、喰い入る様に見つめていた。感無量。


 「どうかな?私のコレクションは・・・」

 「はい・・・本当のことを言いますと・・・贋作か写本の一つなんじゃないかと思ってました・・・」

 「それで、実物を見てどう思いました?」

 「これは・・・まごうことなく、本物の伝説記レジェンダリーです・・・」

 饒舌に語り出すシフォン。

 「この特殊な魔法が付与された書物は、伝説記レジェンダリーのみの特徴です。そして、この付与された魔法は、現代では再現できていないのです。それに・・・この伝説記レジェンダリーの状態は、すこぶる良い。サンカレンで見た伝説記レジェンダリーは、欠損もあれば、文字が薄れて読み取れなくなっていた物もありました・・・でも、この伝説記にはそれが、ほぼ無いのです。なんて素晴らしい。」

 シフォンはテンションが上がっている。

 「お嬢さんは、伝説記レジェンダリーに詳しいね・・・じゃあ、この伝説記について・・・」

 「待って下さい。」

 シフォンは、ブライアンが話すのを制止した。

 「第何篇かを教えようとしてくれたのでしょう?」

 「ああ、うん・・・」

 ブライアンは、説明したそう。

 「わたしが読んで判断させて下さい。」

 「お嬢さんも、古代文字を読めるのかい?」

 「多少ですけども・・・」お嬢さんも?

 「血は争えないってことかねぇ・・・」

 ブライアンの言葉に思うとこはあったものの、伝説記レジェンダリーの前ではどうでもよかった。


 シフォンは、読み解こうと、ケースに噛り付くように見ている。

 「ちなみに、直接、手に取っても・・・」

 「それは、ダメ。」

 「ですよね。」


 シフォンは、たどたどしく読み上げた。

 「え~と・・・辰ノ月3日・・・・・・・・・本日・・・セグン・・・エルとの再びの・・・戦い・・・が・・・起こった・・・かな?」


 ・・・・・・・・・・・・



 シフォンが一通り読み終わると考察する。


 「マリアベルの名も出ているし・・・勝利の描写もあった・・・おそらく・・・第56篇、アーネストがマリアベルの配下と戦ったことが記されていますのは・・・」

 

 ブライアンは、感心しきりで言う。

 「お嬢さん。よく知っているね・・・正解だよ。いや~若いのに大したもんだ。」

 「それほどでもありません。勉強していただけですから。」

 「謙遜する必要はないと思うよ。」

 「そうなのですぅ。凄いのですぅ。」

 スキャットも感心しきりだ。


 「ブライアン会長。お願いがるのですが・・・」

 「何かな?」

 「写しを撮らせて貰ってもいいですか?」

 「ジェイちゃんの親戚だし・・・まあ、良いでしょう。でも、わかっていると思うけど・・・原本からの直での写しの価値は計り知れない。売買目的ではないですよね。」

 「もちろん、そんなことする訳ないです。」

 「写本が多く出回ってしまうと、とある界隈がうるさいのだよ。」


 「とある界隈ってなんですぅ?」

 「・・・・・・ここだけの話しだよ、いいね。美術品や骨董品のブローカー団体だよ。奴らは金の亡者だからね。」

 「写本でも、価値を下げたくないってことですか・・・」

 「まあね。」

 「一杯あれば、多くの人の目に触れるのになのですぅ。」

 「そうですね。手に入れやすくなれば、研究者の裾のも広がるのだけど・・・」


 シフォンは、ブライアンの許可が出たので写しの準備をする。

 事前に購入していた無地の用紙を取り出し、魔法の詠唱を始める。


 「光よ、その輝きをもって、影を浮き上がらせよ。その影を新たな天地へと誘え。」


  『追写トレース


 原本に光り輝き、そこから光が用紙に移動する。

 まっさらな紙に文字が浮き上がり、瞬く間に写本が完成する。


 「はわわわ・・・初めて見ましたのですぅ・・・これが複製なのですぅ?」

 「複製とはちょっとだけ違いますね。」

 「どう、違うのですぅ?」

 「複製は素材そのもの全てを同じにするもので、今のは文字だけを写しただけのトレースです。」

 「勉強になるのですぅ。」

 「トレースの魔法まで使えるとは・・・本当に大したものだ。」


 「ありがとうございます。」



 「会長、そろそろ、お時間です。」

 今まで一言も喋らなかったボディガードが告げた。

 「おお・・・もう、そんな時間か?」

 「はい。」

 「どうしたのですぅ?」

 「この結界内に入れるのは、1日1回、そして、時間制限もあるのだよ。」

 それで、全員が入れなかった訳ですね・・・言ってくれれば・・・


 「はわぁ・・・時間制限を越えるとどうなるのですぅ?」

 「わたしも興味あります。」


 「それはねぇ・・・実に簡単、出れなくなります。」

 「それだけなのですぅ?」

 「制限時間を越えるとここから出れなくなると同時に、空気が抜かれるのです。」

 「中に居ると窒息すると言うことですね。」

 「はわわわ・・・怖いのですぅ。」

 「私が一緒に居れば、何時でも出れるから安心だよ、お嬢ちゃん。」

 「なるほど、賊に入られた時の対策にもなっているのですね。」


 「会長、お急ぎを・・・」


 「そうだった、そうだった。」

 ブライアンは、二礼二拍手一礼する。

 結界が解かれ扉が開くと、コレクションルームから退出した。


 「ブライアン会長、ありがとうございました。」

 「貴重な経験ができたのですぅ。ありがとなのですぅ。」

 シフォンとスキャットはお辞儀をした。


 「ははははは・・・こちらこそ、コレクション自慢に付き合ってくれて。」


 シフォンとスキャットは、興奮冷めやらぬ様子で目を輝かせていたのだった。

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