おけら
ブライアン商会本部前で呆けているシフォンたちがいた。
とある人物を捜すよりも、ひょっこり現れるのを待った方が得策だと判断したからだ。
「やっぱり、捜しに行った方が・・・」
「当てもなく捜すよりマシだと思うけど・・・疲れるし。」
「ワタシニ、イイカンガエガアリマース・・・シフォンサンガ・・・・・・
タスケテージェイチャンサン!ッテイエバ、キットキマース。」
「絶対に嫌です。」
「オウ・・・イイカンガエダト、オモイマスノニ・・・」
「その、ジェイちゃんさんって人が会長さんと知り合いなのですぅ?」
スキャットは、屈託なく聞いてくる。
「その可能性がある・・・らしいです。」
「どんな人なのですぅ?」
「・・・ふざけた人。」
「わけがわからない人。」
「オチャメナヒトデース。」
「ノーコメントだね~。」
「発言も行動もアレだな・・・」
「私は、会ったばかりなので何とも・・・」
「う~ん・・・おバカな人なのですぅ?」
「それだ!」
その様子を見ている男がいた。
「おバカじゃないよ。アホだから。」
何時の間にかにジェイドは、シフォンの横に立っていた。
「やあ。」
「ビックリさせないで下さい。」
「この人がジェイちゃんさんなのですぅ?」
ジェイドは、見慣れぬ少女をマジマジと見た。
「この可愛い生物はなんぞ?」
「スキャットですぅ。」
「君たち・・・幼女を拉致るなんて・・・いけないなぁ・・・」
「わたしたちが、そんなことしませんから!」
「私は、18歳なのですぅ。」
ジェイドは、スキャットとシフォンを交互に見比べている。
「嘘だ!」
「嘘じゃないですぅ。」
スキャットは、大きく手を広げ本当だとアピールしている。
「もう、その辺で、本題に移りません?」
「本題?」
「あなた・・・ブライアン商会の会長と知り合い?」
「なんだ、いきなり。」
「いいから、答えて下さい。」
ジェイドは、なにやら悪い顔をしている。
「さて、どうだったかな・・・」
明らかにとぼけている。
シフォンの表情が険しくなる。
「知り合いじゃないのですぅ?」
スキャットが可愛く聞く。
「うん、うん。知り合いだよ。」
ジェイドは、スキャットの頭を撫でている。
この男は・・・
シフォンは、憤慨している。
まあ、まあ、となだめる様にコリーダが割って入る。
「ならば、話しが早いですわね。会長と会えるよう話しをして貰えませんか?」
「なんで?」
コリーダが気を利かせて説明する。シフォンが話せば、話しが進まないと思ったからだ。
「そこは、自分たちの力でなんとかすべきだね。」
「言いたいことは、わかりますが・・・少しは融通を利かしてくれても・・・」
「そんなこと言われてもねぇ。」
「会長さんに会いたいですぅ。」
スキャットが可愛くおねだりする。
「うん、うん。会いたいか~。仕方ないなぁ・・・」
スキャットの頭を撫で撫でしている。
この男は・・・
コリーダが憤慨した。
ともあれ、もう一度、ブライアン商会に乗り込むシフォンたち。
事務所に入ると男が又かと言う表情で出迎えたのだが・・・
「よお!ブゥちゃん居る?」
「あ、あんたは・・・」
男は、奥に居るだろうヤシマを呼びに行った。
ヤシマが訝し気にやって来る。
「どの様な御用件でしょうか?」
「ブゥちゃんに会いに来たんだけど?」
「はあ・・・あなたはどなたですか?」
ヤシマは、棒読みだ。
「私の名前はジェイド=オージェン。享年24歳。・・・残念ながら既婚だ!!でも嫁はまだいない。」
お決まりの自己紹介をしている。
「はい、はい。会長は自宅です。勝手に行って下さい。」
「つれないなぁ・・・第一秘書様は・・・」
「こちらは、忙しいのです。」
ヤシマは、シフォンたちを見ると。
「その方々は、あなたの知り合いだったのですか・・・だったら、最初に言ってくれれば良かったのに・・・」
「はわわわ・・・おじさんは、顔パスなのですぅ。」
「おじさんは、やめよーね。」
スキャットの頭をワシワシする。スキャットの髪は、ボサボサだ。
「やめるのですぅ。」
「私は、仕事がありますのでこれで・・・くれぐれも変なことをしないで下さいねオージェンさん。」
ヤシマは、一言、釘を刺し仕事に戻って行った。
「では、私たちも行きましょう。」
「はい。なのですぅ。」
シフォンたちは、ブライアン会長の自宅へと向かうことになる。
「ちょっと、気になることがあるんだけど~。」
リチャードは、ジェイドに疑問を投げかける。
「アーリントンに行ったと言うなら、君もアーリントン成金なんだろ~。」
「お金持ちには見えないのですぅ。」
「そう言えばそうね。」
「何々、気になる?気になる?」
「どうせ、ろくなことに使ってないのでしょうね。」
「フフフのフ・・・時代は投資だよ。投資。」
「あら、意外にまとも・・・で、何に投資したのですか?」
「馬。」
「はい?今、なんて言いました?」
「だから、お馬さん。」
「・・・ちなみに聞きますけど、どう投資したのですか?」
「勿論、突っ込んだ。」
「・・・何に・・・」
「だから、お馬さん。」
「投資したお金はどうなりました?」
「綺麗さっぱり、無くなった。」
えへんと自慢げに話すジェイドを白い眼で見る一同。
「全部ですか?」
「もち、全額。」
シフォンたちは、頭を抱えた。
「私、わからないですぅ。お馬さんで、なんでお金が無くなるのですぅ?」
「ルランツやヴィクトリアでは、競馬が盛んなんだよ~~。」
「けいば?」
「ギャンブルさ~。」
「賭け事はいけないですぅ。」
「スキャットちゃん。ダメな大人の見本ですよ。真似してはいけませんよ。」
「マネなんかしないですぅ。」
「君たち・・・視線が冷たいんだけど・・・」
「さあ、早く行きましょう。」
「早く、案内して下さい。」
シフォンたちは、ジェイドを軽蔑しつつ会長宅へと向かうのだった。
金は命より重いそうだから仕方ないね。