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all breaker  作者: paruseito
第Ⅱ章-Ⅲ サバック地方編
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グングニル

 シルクが戻ると、シフォンたちが集まり、何やら話し合っていた。


 「ハーイ。ミナサン、ドーシタノデスカ?」

 「あ、シルク。あんたどこに言ってたのよ?」

 「サンポシテタダケデース。ソレヨリ、ナニカアッタノデスカ?」

 「シルクさんもこれを見て下さい。」


 デービットが拾った槍がそこにあった。


 「ヤリ、デスネ。」

 「でも、ただの槍じゃないみたいなの。」


 「私が拾った時は、剣だったんだ。」


 「剣が槍に変わったねぇ・・・嘘なんじゃないの?」

 「本当だ、本当に変わったんだ。」


 「確かに、魔力を帯びた槍ではありますね・・・シルクさん、何か知りませんか?」

 シルクは考えるとその可能性を話した。

 「モシカシタラ、マケン、カモシレマセーン。」

 「魔剣?そんな希少なモノが落ちているものかしら?」

 「魔剣ねぇ・・・どう見ても槍なんですけども?」

 「だから、剣が槍に変わったんだ。」


 「仕方ありません。私が鑑定して差し上げましょう。」

 「サリエス。君、鑑定も出来るのかい?」

 「勿論・・・サンカルロが。」


 サリエスは、魔法陣を描き、懐から古びた布切れを取り出し中心に置いた。


 「悠久の時を越え、顕現せよ。彼の英雄。サンカルロ。」


 魔法陣に置かれた布がヒラヒラと舞い上がり、布が歪み、グチャグチャに変形しだんだんと人型に変わっていった。

 「なんのようだ、サリエス。」

 召喚されたサンカルロは、自分の眼を疑った。

 あのサリエスが、先日の異教徒と一緒にいるのだから。そらは、サリエスと一緒にいるのは教団関係者か、従えた十字教信者しか見たことがなかったからだ。


 「どうなってるんだサリエス。」

 「この方々とご一緒に旅をすることになりました。」

 「・・・マジか?」

 「本当ですよ。そんなことより、この槍を見て下さいな。」

 サリエスは槍を差し出した。

 「これはまた、珍しいものを・・・」

 サンカルロは、まじまじとその槍を見ている。

 「わかりますか?」

 「ああ、これは、魔力で鍛え上げられた特殊剣だな・・・この時代で言う魔剣だな。」

 「魔剣なのは、わかってます。これがどの様な物か聞いているのです。」

 「遷移剣・・・持ち主によって姿形を変える剣だ。昔はそれなりに出回っていた代物だ。」

 「それでは、そこまで貴重な物ではないのですね。」

 「昔はな。この時代には、その技術も実物もほとんど残ってないのだ、その価値は全然違うぞ。」

 「へ~・・・そうなんですか。それでは、リチャード様。これをどうぞ。」


 サリエスは、さりげなくリチャードに槍を渡す。

 「何故、僕に渡すんだい・・・」

 「リチャード様がお使いになるのが良いかと。」

 「おい、ちょっと待て!それを拾ったのは私だ。」

 「あなたが拾っただけで、別にあなたのものではないでしょ。」

 「それはそうだが・・・」


 リチャードの手に渡った槍は、なにも変化しなかった。

 「あれ~・・・なにも変わらないね~。」


 「それは、持ち主が確定してしまったからだろう。」

 「どう言うことだい?」

 「まあ、こう言った魔剣は、自ら主を決めることもある。持ち主が決まれば、もう、変化はしない。主が死ぬか、所有権を放棄しない限りな。」

 「って事は・・・この魔剣の持ち主は・・・」


 「私か!」

 デービットは、ちょっと嬉しそうだった。

 「あら、そうなの・・・」

 サリエスは、残念そうに見ていた。


 「ソノ、マケンニ、デメリットトカ、ナイノデスカ?」

 シルクが疑問を口にする。

 「う~む・・・使ってみない事にはわからんな。」

 「ジャア、デービットサン、ツカッテミテクダサーイ。」

 「お、おう。」問題ないよなぁ・・・


 デビットは、1本の木の前に立ち、槍に変わった魔剣を構える。

 皆が、注目するなか、木に向かって槍の連撃を繰り出した。

 

 木は槍に貫かれ、その刃の形に幹に穴が空いていく。幾つもの穴が空いたため、木は、ギシギシと音をたて崩れ落ちた。


 「凄い威力だね~。」

 「デ、ドーデスカ?」


 デービットは、息が荒く、疲れた表情を浮かべていた。


 「ごっそり魔力を持ってかれてますね。」

 「私には魔力がなかったはずなのですが・・・」

 「魔力自体は、誰しもが持っているものですよ。ただ、魔力を魔法として扱えるかどうかで・・・」

 「魔法が使えないから魔力が無いと勘違いする人が多いのよね。」

 「そ、そうだったのか・・・」


 「魔力を威力に変換するタイプか・・・普通の魔剣だな。みたところ、魔力消費だけで、他のデメリットは、なさそうだな。」

 「それは、いいのだが・・・1回使うだけで、こんなに疲労すると使い物にならないな・・・」

 「それは、お前がその魔剣を使いこなせてないだけだぞ。」

 「そんなことはない。使いこなしただろ。」

 「これだから、若造は・・・魔力を持っていかれたのは、魔剣の制御が出来ていないからだ。要するにお前は、その魔剣に振り回されているだけだ。」

 「・・・・・・」

 「な~に、訓練すれば、ある程度は使いこなせる様になるさ。」


 デービットは、考え込んだ。

 「しかし、私には・・・私の槍がある・・・」

 「それなら、所有権を放棄して、リチャード様が使えば解決ね。」

 「ハハハ・・・僕には必要ないよ~~。」

 「そうか、リチャード様は、魔剣などに頼らなくてもお強いのですね。」

 リチャードは、苦笑いをした。

 「おめでたい子・・・」


 「槍は2本もいらない・・・やはりここは・・・」

 「別に持ってても良かろう。それは、遷移剣と言ったろ・・・普段はナイフとか短剣にして持ちやすい形に変えとけばいいのだ。」

 「そんな事も可能なのか・・・」

 「遷移剣とは、そう言う使い方をするものだからな。」


 「ナラ、チョット、ヤッテミルノデース。」

 「そうだな。」


 デービットは、槍を別の形にしようと試みた。

 だが、なかなか上手くいかず、悪戦苦闘したすえ何も変化は起きなかった。


 「やはり、まだまだ、だのう・・・まあ、手に入れたばかりなんだろ?悲観することもない。慣れも必要だからな。貰っておいても差し支えないはず・・・」

 「・・・そう言う事なら、私がこの魔剣を貰ってしまっても・・・」

 「いいんじゃないの。」


 「よ~し、今日からお前は、グングニルだ。」


 えええ・・・名前付けちゃうの。と、その場にいた全員が思った。


 


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