デービット魔剣を拾う
デービットがリチャードたちに憤慨しながら場所を移した。
あいつら、イチャつきやがって!なんで、私が他に行かなければならんのだ!
お!?丁度いい場所があるではないか。
ここなら、あいつらの邪魔も入らないだろう。
デービットは、チラッと遠くのリチャードたちを見る。
サリエスが甲斐甲斐しく世話を焼いているのがわかる。
まったく、けしからん奴らだ・・・あいつらの事は、気にするな、集中しよう。
一心不乱に槍を振るうデービット。
「えい!やぁ!とぉ!!」
槍を突きだしたその時、太陽光が眼に入る。
「眩しい!」
太陽はまだ頭上にある。普通なら、眼に入るはずがない。
デービットは、光さした方を見た。
草むらから太陽に照らされ輝くモノを発見する。
「ん?なんだ・・・」
草むらの中に細身の剣を見つけた。
「細い変わった剣だな・・・」
デービットが何気なくその剣を手にした。
すると、剣がブルブルと振動しはじめた為、デービットは、剣から手を放そうとしたが、剣が手に吸い付いたように放れない。
「なんだこれは!?」
剣は溶ける様にグニャグニャになって行く。
グニャグニャになったその物体は、細長い棒状になって行った。
そして、端整な槍に変わった。
槍に変わるとやっと、デービットの手から放れた。
「び、びっくりした。」
地に落ちた槍をのぞき込むように見ている。
剣が槍に変わっただと・・・ありえん・・・夢でも見ているのか?
しかし、この槍・・・私でもわかる・・・かなりの業物だ・・・
デービットは、自分の持つ槍とその槍を見比べる。
デービットの槍は、学院の入学祝いに貰った槍で、母が無理して買ってくれたもの。それは、どこにでもある、なんの変哲もない槍だった。
それと比べ、落ちた槍は、圧倒的な存在感を放つ槍であった。
「欲しい・・・」
いかん、いかん。これは、落とし物だ。私のものではない。
落とし主が探しているかもしれないしな・・・
しかし、どうしたら良いものか・・・
デービットは、落ちた槍を拾い上げた。
「うん。これは、一時的に預かるだけだ・・・落とし主を捜そう。」
デービットは、嫌々ながらもリチャードたちの方に歩いて行った。
◆◇◆
シルクは、山の中を歩いていた。
そして、見つけた。
「ジェイチャンサン!ミツケマシター。」
草木が生い茂る山の中に少しだけ開けた場所にジェイドは佇んでいた。
シルクの言葉で、ジェイドは、振り返った。
「白い娘じゃないか。」
「ジェイチャンサン!ドコニ、キエテタノデスカ?ハンノウガ、ロスト、シテマシタヨ。」
「・・・・・・」
「カッテニ、イナクナルノハ、イイトシテ・・・ロストサレルノハ、チョット・・・」
「私にも都合と言うものがあってだな・・・」
「ワタシノ、タチバガ、アヤウクナルノデ、ヤメテクダサーイ。」
「そうかい、気をつけるよ。」
「シカシ、コンナトコロデ、ナニヲシテイタノデス?」
「そうだな・・・黄昏ていただけさ・・・」
「ハア?」
シルクは、暫く思考した。
「ココハ・・・ハルカ、ムカシ、ドラーム トイワレタ、トチ、デスネ。」
「よく知っているじゃないか。」
「アーカイブカラ、ヒキダシマシタ。」
「ここには、腕のいい、鍛冶職人の集まる地だった。」
「ココノ、ヤマヤマニアル、ドークツハ、タンコウダッタノデスネ。」
「そうだね。」
「デモ、ココニハ、ナニモアリマセンネ。」
「遥か昔だ・・・もう、ここには、なにも残っていない。ただ・・・ここに、ある鍛冶職人が住んでいた・・・それだけさ・・・」
「ココノ、ドークツニ、オタカラガ、ネムッテイルミタイデスヨ。」
「魔族が漁っていたみたいだな・・・」
「オタカラッテナンデス?」
「なに、ちょっとした武具が貯蔵してあっただけだろう。中にはそれなりの代物もあるみたいだけれども・・・」
「ソーデスカ・・・デ、ダレナンデス・・・ココニ、ネムッテイルヒトハ?」
「ここに眠っているかどうかは知らん。ただ、ここに居た。自己満足の為にここに冥福を祈りに来ただけなんだよ。」
「ソレガ、ダレカ、オシエテクダサーイ。」
「・・・タネ無しのおっさんさ。」ジェイドは、笑って言った。
「イミ、ワカリマセーン。チャント、オシエテクダサーイ。」
ジェイドは、それ以上は語らなかった。
「さあ、帰ろうか白い娘。」
ジェイドは、シルクの背を押して山を下りようとした。
シルクは、クルっと反転してジェイドに言う。
「ジェイチャンサン・・・ハナシヲキイテクダサイ・・・」
「ん?告白かい。」
「ハイ。コクハクデース。」
「お、おう・・・」
「ジェイチャンサン・・・」
ゴクリ
「ジェイチャンサンノ、ソンザイガ、ユライデルノヲ、カクニンシテイマス・・・」
ジェイドは、少し残念そうな顔をしたが、すぐに答えた。
「なんだ、気づいていたのか・・・」
「・・・キエルノデスカ・」
ジェイドは、迷いがあったのか暫く考え込んだ。
「まあ、遅かれ早かれ、そうなるね。」
シルクの表情が一瞬だけ曇った。
「・・・コワクナイノデスカ?」
「なにが?」
「キエルコトガデース。」
「なんで怖がる必要がある?私は既に死んでいるんだぜ。」
「ソンザイガ、ナクナルンデスヨ。」
ジェイドは、よくわからいと言った顔をしている。
「ジブンガ、キエルコトガ、コワクナインデスカ!ワタシハ・・・ワタシハ、コワイデース・・・ジブンガ、ジブンデ、ナクナルコトガ・・・」
ふ~ん。白い娘は白い娘で悩んでいるのか・・・
「ジェイチャンサン・・・オシエテクダサイ。ワタシハ、ドウスレバ・・・」
「教えてと言われてもね。君が何に悩んでいるのか、わからないからね。どうにも・・・」
シルクは、ハッとした表情をした。
「スミマセン。イマノハ、キカナカッタコトニ、シテクダサーイ・・・」
ジェイドは、ヤレヤレと言った感じで喋りだした。
「私が言えることは、悩みなら、私よりも仲間に相談した方がいいんじゃないのかな?現在の仲間でも、他のところの仲間でも・・・」
「ソレガ、デキタノナラ、ソウ、シテマース・・・」
「・・・・・・」
「コンナコト、ブガイシャノ、ジェイチャンサンニシカ・・・」
「部外者は酷いな。まあ、部外者なんだけど。」
「ワスレテクダサーイ。ジブンデ、カイケツ、シマース。」
「そうか・・・でもね、本当にどうしようもなくなくなったなら、君が信頼をおける仲間に相談するんだ。君は独りではないのだから・・・」私と違ってね。
シルクは、なにも答えなかった。ただ、軽く頷いただけだった。