七刀流
セブンスベルが躍り出る。
「トラちゃん。ここは、あたしに任せてちょうだい。」
「おい、こら。」
クワトラベルが制止するも、構わず刀を抜き突っ込んで行く。
瞬時に間合いを詰めるセブンスベル。そして、振りぬかれる刀。
ガシンっと音が響くと刀は、受け止められていた。ティンバーの氷で覆われた腕で。
「あら、やるじゃなあい。」
腕を氷で固めてあたしの刀を止めるなんて・・・厄災ちゃんをも両断したあたしの速さについて来れるなんて・・・まあ、厄災ちゃんは、わざとやられてたけどね。
セブンスベルは、ティンバーを壁代わりにし蹴って後ろに跳び距離をとった。
「知ってるぜ。七刀のセブンスベル。七本の刀を使うおかまだって。」
「おかまじゃないわよ。乙女よ。」
セブンスベルは、憤慨しつつそう言う。
「丁度いい、さっき手に入れたこの武器の試し斬りをさせてもらうぜ!!」
ティンバーが武器を手に取り活力を吹き込むと、みるみるその形状を変化させ、戟へと変わった。
「こいつぁ、すげーぜ。」
「トラちゃん。」
セブンスベルが声をかけると、クワトラベルが察し解説を入れた。
「あれは、持ち主にとって最適な形状になる魔剣・・・遷移剣の類いだろう・・・」 金棒になるんじゃないのかよ。
「へ~面白いもの持ってんじゃない。」
「変わろうか?」
「馬鹿言ってんじゃないわよ。今度は、本気でやるから・・・」
「おう、そうか・・・」
クワトラベルは、そこから少し離れた。
セブンスベルが両手に持った刀とは別に、異空間から更に5本の刀を取り出し、宙に浮かせた。
「見せてあげるわ・・・七刀流・・・。」
宙に浮いた刀がクルクルと回転しはじめた。
「ケッ!見せる前に終わらせてやるわ!」
ティンバーは、大きく飛び上がった。
【氷結吹雪】
ティンバーの放った魔法がセブンスベルに襲いかかる。凍てつく吹雪で視界を遮り身を凍らせる。そして、ティンバーの戟がセブンスベルに振り下ろされる。
「馬鹿が・・・隙だらけだ・・・」クワトラベルが漏らした。
ティンバーが飛ぶのと同時に5本の刀は、射出されていた。
その刀は、魔法もろとも切り裂いて行く。
空から切り離された四肢と頭と体が地上へと降り注がれた。
地上に落ち転がる頭・・・頭部だけになってもティンバーは、喋っていた。
「な、何故だ・・・」
「あなた、いちいち、動作が大きいのよ。やって下さいって言っている様なものよ・・・それとも、その魔剣がそうさせたのかしら?」
「ヂ・ギ・ショー・・・」
グシャッ
セブンスベルがティンバーの頭を踏み潰すと戦闘は終わった。
「流石だなセブン。奴が飛び上がった時には、勝負はついていた。飛ばした5本の刀で手足を切り、心の臓を突き刺し、奴の振り下ろし際に首を落とす・・・なんて、早技だよ。」
「解説ありがと。」
「ほんと、馬鹿な奴だ。防御に徹していたら、もっと、ましな戦いになってたのによう。」
「じゃあ、行きましょ。邪樹四将ってヤツ全員始末するんでしょ。」
「ああ・・・今度は、俺様がやるからな!」
「はいはい。」
セブンスベルは、落ちた魔剣を手に取ると、刀に変化した。
「お!?今度は八刀流か?」
「・・・ん~~ん。8本目は、要らないわね・・・トラちゃん要る?」
「俺様は、武器は使わん。」
「だと思ったわ。」
セブンスベルは、手にした魔剣をポイっと投げ捨て、草むらに消えた。
「そんな、ぞんざいに扱って・・・仮にも魔剣だぞ。」
「いいのよ。ああ言うものは、回り回って手にすべき者の手に渡るものよ。」
「んじゃ、次に行くか。」
クワトラベルとセブンスベルは、町の住人には、目もくれずその場を去って行った。
ドラールスミスは、期せずして解放された。
◆◇◆
シフォンたちは、恐る恐るドラールスミスの町を窺っていた。
でも、様子がおかしい。聞いてた話しと違った光景が広がっていた。
壊された家屋の片付けをする住人の姿を目にしていた。
「これは、どう言うことなんだい?」町まで案内させた男に聞いた。
「こっちが、聞きてえ・・・」
男は走り出し、住人を捕まえ事の経緯を聞いた。
「バケモノが仲間割れしだして全滅したんだよ。こんなこともあるんだねぇ・・・」
「仲間割れで全滅・・・考えられないわね。」
「でも、良かったじゃないか~。魔族と戦うってことにならなくて。」
「なに、ホッとしてるのあんた。」
「僕は、平和主義者だからね。戦わないに越したことはないさ~。」
「だが、そんなに喜んでいられない様だな・・・」
見れば、住人たちは至るところにアザや切り傷の跡が残っていた。中には歩くこともままならない者もいた。恐らく死んだ者もいるだろう。
凄惨な状況が容易に予想がついた。
「シフォンサン、コリーダサン。ワタシタチデ、ココノヒトタチヲ、チリョーシマショー。」
「そうしましょう。」
「僕たちは何を・・・」
「あんたたちは、町の片付けを手伝いなさいな。」
「お、おう、そうだな。」
案内した男は、仲間を呼びに元の町へ急ぎ戻った。
ジェイドは、独り佇む・・・その腕は揺らいでいた。
「思ったほど・・・もたないみたいだな・・・」少し寂しそうに呟いた。