野暮用
ドラールスミスの町を山の頂上から見下ろす者が2人。
クワトラベルとセブンスベル。
「邪樹四将だっけ?そいつがあそこに居るんでしょ・・・」
「碧鬼ティンバーだったか・・・。」
「とっとと、殺っちゃいましょ・・・。」
「ああ、仕事は早い方がいい。」
後ろからガッサっと音がすると2人が振り返ると男が立っていた。
「なんか、ヤバいのが近くにいると思ったら、猫ちゃんたちか・・・。」
ばっと身構えるクワトラベルとセブンスベル。
「あら?厄災ちゃんじゃなあい。」
「・・・・・・。」
「あらあら、あたしの顔になにか付いている?」
ジェイドは、不思議そうに聞く。
「猫ちゃん猫ちゃん。私の記憶が確かなら・・・そこの方、オラオラ系だった気がするんだけど・・・」
「そいつは、タマを取っちまったんだよ。」
「なんと・・・お姐に・・・いやはや、驚いた。」
「あらやだ、そんなに驚くこと?」
「・・・別に・・・。」
「厄災。貴様、なにしに来た?」
「いやなに、野暮用を片付けにね・・・。」
「野暮用?何をしようとしているかは知らんが、こっちの邪魔をする様なら・・・」
「邪魔をする気はないけど・・・こっちはこっちでやらせてもらうだけなんだけど。」
「厄災ちゃん。これは、お互いのために、目的を話さなぁい。」
「おい、そいつに話す必要ないだろ。」
「トラちゃんは、黙ってて。こっちは、あの町にいるウッドマンの幹部を始末しにきたのよ。」
「ふ~ん・・・。結論的には、同じなんだろうな・・・。」
「結論的に同じってことは、あなたも同じ相手を狩りにきたってことよね。」
「ふう・・・こっちは、墓荒らしを懲らしめに来ただけなんだけど。」
「あらそう・・・あそこでそんなことをしそうなのは・・・」
「そう言うこと。」
「チッ。墓荒らしかなんかは知らんが、こっちは、妹分をやられた落とし前をつけるんだよ。引っ込んでな。」
「実際にやったのは、あそこにいる奴じゃないだろ。だったら、引くのはそっちなんじゃないの?」
「そんなの関係ねぇ!ウッドマンの手下は、全部始末する。」
「やれやれ、血気盛んだね・・・。」
「こっちは、引く気はないのよね・・・そっちは、どうする?」
「恩人の墓を荒らされたのを見過ごすわけにはいかないんだよね。」
「引く気はないってわけね。」
「だったら、やるしかねぇよな!」
クワトラベルとセブンスベルが距離を取るべく後方へと跳ぶ。
「好戦的ですねぇ・・・戦いでは、何も解決しませんよ。」
「そうですわね。」
そう言うとセブンスベルは、携えていた2本の刀を抜刀しその姿を消した。
次に姿を現した時、ジェイドが真っ二つに切断された。切り裂かれた体は、黒いモヤとなって消えていった。
「死んでなかったら、死んでた。」
ジェイドが何事もなかったように姿を現した。
「もう、訳わかんねぇな。」
「あら、ダメねぇ・・・。」
もう一度、対峙する両者。
だが、ジェイドは、背を向けた。
「や~めた。猫ちゃんたちに任すよ。」
「どう言うつもりよ?」
「な~に、斬られたわけだし、私の負けってことでいいや。」
「始めっから手を引いとけや!」
ジェイドは、手を振り去って行った。
「やけにあっさりと引いたわね。」
「アレが何を考えてるかなんて、どうでもいい。」
「まあ、そうね・・・でもね、トラちゃん。わかってると思うけど、あのまま戦っていたらあたしたち・・・消されたわよ。かつての同胞のように・・・。」
「アレは、弱体化している。勝機がない訳じゃねぇ。」
「そ~お?あたしには、以前よりも恐ろしい存在に映ったわ。」
「・・・・・・。」
「折角、譲ってもらったんだし、蹴りをつけちゃいましょう。」
「・・・ああ、そうだな。」
2人は、ドラールスミスに降り立つのだった。
◇◇◇
ドラールスミスは、邪樹四将、碧鬼ティンバーによる支配がなされていた。
男たちが追い出され、女子供しか残っていない町は、ティンバーの部下によって荒らされていた。
女たちは、毎日毎日、部下たちに辱められ、身も心もボロボロにされていた。
「ゲヘヘ・・・俺らの様な強者の子を孕むんだ光栄に思え。」
「いやあああぁぁぁ・・・」
豪勢な食事をしつつ、部下に女たちを犯させ、それを見てほくそ笑む碧鬼。
「グフフフ・・・女、本当は、気持ちいいんだろ?素直になれ、快楽に身をゆだねろ。」
「ティンバー様がああ、仰ってるんだ、もっと気持ちよく喘げよ。」
「きゃあぁぁぁぁ・・・・・・」
「しかし、アケボノの奴め。戦功をあげていい気になっているみたいだな。四将最弱の奴がだ。」
「たまたま、奴がウッドマン様に作戦の実行部隊に選ばれただけですぜ。ティンバー様。」
「当り前だ!あのデブにウッドマン様の信頼を置いている訳なかろう。」
そこへ、部下の1人がやってきて報告する。
「ティンバー様。又、見つけました。」
部下の手に古びた武器があった。聖剣、魔剣と呼ばれる遥か昔の遺物。
「どれどれ、見せてみろ。」
ティンバーは、持ち込まれた武器を手にした。
「ほう・・・これは、とんでもねぇ魔力を帯びているな・・・。やはり、ここは、ウッドマン様の見立ての通りとんでもねぇ、武器庫だぜ。」
ドラールスミス。そこは、伝説記時代に存在した名匠が拠点とした地だった。
「あら、上機嫌みたいね。碧鬼ちゃんは・・・」
「とっとと、片付けるぞセブンス。」
「貴様ら!!いつの間に!」
ティンバーが振り返るとクワトラベルとセブンスベルが、勤しんでいた部下を全て倒しそこにいた。