セブンスベル
サバック地方。
元々は、一つの国であったが、複数の民族の集まりでできた国であったが故、民族間の軋轢が生じた事と、権力者たちの腐敗が明るみに出た事により国は崩壊。
国は4つに分裂した。
北サバックは、ルースレス王国の後ろ盾を得て独立を宣言するのを皮切りに東サバックは、ルランツ王国を頼り独立、中央サバックはサバック最大勢力であった民族バック人の集まりで自分たちこそがサバックの盟主と主張し、南サバックには、旧王族たちが逃げ込みカパネッレの支援を受けていた。
4ヵ国間で紛争が絶えなかったのだが、カパネッレが魔族の手に落ちた事で事態は一変した。
魔族の力は強大でカパネッレは、僅か1日で陥落。
それを受けて、サバックの国々は、一旦、紛争を止め一時的に停戦した。
魔族の脅威に対抗するために・・・。
しかし、それはあくまでも上の人間が決めた事。
末端の者たちには、理解が得られず、実際には紛争は続いていた。
公式的には、彼らは野盗として扱われていた。
そんな事とは露知らず、シフォンたちは、北サバックに入ろうとしていた。
◆◇◆
魔族の拠点となったカパネッレ。
そこの主になったマリアベルによって、名称の変更が告示された。
かつて地上に作ったマリアベルの国の名・・・ベルグラントに。
既に再建されたベルグラント城にマリアベルと側近たち数名が会していた。
マリアベルは怪訝そうに皆を見ていた。
先のルースダムの一件でワーストベルが深手を負い死の淵を彷徨っているからだ。
側近の筆頭のファストベルが嘆く。
「自分が今回の件を知っていれば諫められたかも知れんのに・・・クワトラベル!何故、まずは自分に話しを通さなかった!」
「こっちだって、あいつを連れてくつもりはなっかた。」
「なら何故、ワーストベルを連れって行った?」
クワトラベルは、マリアベルの方を見た。
ファストベルは、察したのかマリアベルに視線を向けた。
「マリアベル様・・・あなたの差金ですか・・・。」
「まあ、今回の件は、ウッドマンの事を侮っていた事は認めましょう。だがな、この程度で死ぬのならワーストベルはそれまでの存在だったって事・・・。」
マリアベルの言葉に側近たちは押し黙る。
「でも、あの子がこのまま死ぬなんて事はないわ・・・そんなこと私がさせないから。」
「クケケケ・・・そろそろ私の出番ですかな?」
暗がりから一人の年老いた魔族がトコトコと歩み出てくる。
「イレブンズベル・・・」
「クケケケ。お呼びにより馳せ参じませしたマリアベル様。」
「うむ。早速で悪いが、ワーストベルを診てやってくれ。」
「ははぁ。」
「ちょっと待てイレブンズ。」
「クワトラベル殿、何か?」
「貴様、魔改造するなよ。」
「はて?私が魔改造なんてしたことは、一度もないのですが。クケケケ・・・」
「忘れたか!セブンスベルの事を・・・」
「あれは、不幸な事故でした。クケケケ。」
「貴様!!」
クワトラベルが今にも掴みかかりそうになるところを制止する様に・・・。
「マリアベル様の御前だぞ。」 ファストベルが一喝する。
「しかし、こいつは、セブンを・・・。」
「あれは、セブンスベル殿が望んだことクケケケ・・・。」
「貴様が魔改造したからあいつは・・・」
「もう、よさんか!」
マリアベルは遠い眼をしながら口を開く。
「セブンスベルか・・・同じ相手に2度も負けた。そして、安易に力を求めた。その結果だ・・・仕方あるまい。」
マリアベルは、そっと目を閉じた。
「では、私は、ワーストベル殿の治療をして参ります。クケケケ・・・」
気色悪い笑いをしながらイレブンズベルは下がった。
「奴め、ヘンな事をしたらタダじゃおかねえ・・・ところで、マリアベル。ウッドマンの事だが・・・俺様に任せてくれ。」
「なんだ、意趣返しか?そんなこと、私の許可などいらないだろう。好きにすればいい。」
「わかった。そうさせてもらう。」
クワトラベルもこの場から去った。
クワトラベルが居なくなるとマリアベルは、笑い声をあげた。どうやら、ずっと笑いを堪えていた様だ。
「マリアベル様。そんなに笑うことですか。」
「これが、笑わずにいられるか。」
「そうですよ。マリアベル。そんなに笑っては、クワトラに失礼ですわよ。」
お姐言葉の剣士風の魔族がマリアベルをたしなめた。
「お前がそれを言うか、セブンスベル。」
マリアベルは、ケラケラと笑いながらセブンスベルを見る。
「あら?可笑しいですか?」
「それは、当人がすぐそこに居るのに大真面目に話しをしているのだ。その場で笑いこけそうになっておったわ。」
「あれは、あたしが女になったのが気に入らないだけですわよ。可愛いじゃないの。」
「お前・・・女になった訳ではないだろ。」
「あらやだ。あたしはれっきとした女ですわよ。イレブンに獲って貰ったもの。」
「取ったからって女になれんだろ。」
「ファスト・・・あなた、イレブンを舐めてなあい。手術は完璧よ。身も心も今や乙女よ。子を成すことだって可能なんですから・・・どお、あなたの子を孕んであげてもいいわよ。」
「いらんわ!」
「あら。残念・・・」
セブンスベルは上目遣いでファストベルを見ていた。それを見たファストベルは、ぞっわとした。
その様子を見てマリアベルは爆笑していたのだった。
「マリアベル。あたしもクワトラを手伝っていいかしら?」
「はははは・・・ああ、構わん好きにしなさい。」
セブンスベルは、一礼すると瞬時に消えた。
「マリアベル様。自由にさせすぎでは?」
「お前も好きにしていいんだぞファストベル。」
「あなた様は、目を離すとすぐに居なくなる。自分が見張っていないと・・・身分をわきまえて下さい。」
「相変わらず堅いな・・・」
ベルグラントでの一幕であった。