呪言
シフォンたちの前に現れたサリエスたち。
「どうして、ここに・・・」
驚きを隠せないシフォンたち。
覆い隠す霧は完璧だったはず・・・
サリエスは、笑みを浮かべて言う。
「私に認識阻害の魔法は効きませんよ。」
「サリエスお前が見つけた訳ではないだろ。」
「私が命令してあなたが見つける。うん。私が見つけたのと変わらないじゃない。」
「どーしたらそーなる。」
「さあ、あなた方。今度こそ私のお話しを聞いてもらいますよ・・・・・・
人数が増えてますけど、丁度いいですね。」
「シフォンさん。もう一度やるわよ。今度は二人で・・・」
「多重にかけるのですね。わかりました。」
「嬢ちゃんら・・・もう無駄だ。わしには認識阻害は効かんし。
既にこの辺り一帯に人で固めておる・・・」
「そんなまさか・・・」
シフォンたちは、周囲を見渡すと、道の節々に人で壁が築かれていた。
「ほんとだ・・・これじゃ、逃げ出せない。」
「サンカルロ。この方々にも聞ける姿勢にして差し上げてくれます。」
「ああ・・・と、言いたいところだが・・・そうもいかないらしい。」
「私の命令が聞けないの?」
「そうじゃない・・・わしには相手をしなければならん奴がおる。それに、お前ならわしがやらんでも自分の力でどうにでも出来るだろう。」
サリエスは、腑に落ちないといった表情を浮かべた。
「私には、その様な力などありませんが・・・」
「全く・・・相変わらず自覚がないのか・・・」
サンカルロはあきれ顔をしていた。
「まあいい・・・わしは奴とやり合う。」
「ヤツ?誰ですかそれ。」
「ほれ、そこにおるだろ。」
サリエスは、辺りを見渡すがシフォンたちしか見当たらない。
「あの方たちの中にいるのですか?」
「そこおるではないか。」
サリエスは困惑する。それはシフォンたちも同じだった。
サンカルロにはその男の姿をはっきりと捉えていた。
「しかし、君たちは、面倒ごとに巻き込まれるなぁ・・・」
毎度のことながら唐突に姿を現したジェイド。
「いつの間に・・・あなた何者?」
「ん!?今、何者って言ったよね。」
「ジェイドとやら、わしらがやるには、ここでは狭すぎる場所を変えようぞ。」
「いや、その前に名乗りをだな・・・」
「さあ、行くぞ!」
サンカルロはジェイドの首根っこを掴み場所を移動しようとする。
「ちょっとサンカルロ!命令します。ここに居なさい。」
「サリエス。それは聞けんな。そこの者どもはお前さんでも、どうにもできる。でも、こやつはそうはいかん。」
「その方はそれほどの相手だと?」
「ああ。」
「・・・仕方ありませんね。あなたが後れを取るとは思えませんが・・・負けは許されませんよ。」
「わしが負ける訳なかろう。」
サンカルロは、ジェイドを連れ姿を消した。
残されたサリエスは、シフォンたちに語りかける。
「さあ、あなた方。聖十字教の教えを説きましょう。」
「結構です。」
シフォンは、間髪入れず断るのだが、サリエスは、お構いなく話しをしようとする。
「シフォンさん。彼女一人ですし無力化して逃げましょう。」
「それしかないでしょう。」
「あら、いけませんね。《ここに居なさい》」
そのサリエスの一言でシフォンたちの動きが止まった。
「なんなんだこれは?体が動かない・・・」
「・・・手は動かせます。しかし、ここから動くことが出来ません・・・」
「私の話しを聞く気になられたのですね。」
「あんた、何をしたのよ!」
「何を言っているのですか?私は何もしてませんよ。」
「ヤハリ、コレハ、ジュゴンデース。」
「あなたは、何を恐ろしいことを言っているのですか?」
「ワタシ、ホントーノコトイッテマース・・・」
「どうやら、あなたが一番信仰心が足りないようですね・・・ああ、なんて嘆かわしいことでしょう。私が改心させてあげましょう。」
「マニアッテマース!」
サリエスは、シルクに狙いを定め、彼女の前に立ち祈りを捧げ始めた。
それを尻目にシフォンとコリーダは、魔法で拘束を解こうとしていた。
「状態異常解除の魔法を使っているのにこの拘束、解除できませんわ・・・シフォンさん。あなたの方はどう?」
「わたしの方も無理みたいです。ただの状態異常では無いのかも・・・」
「そうなると、シルクの言ってる通り、呪言なのかも。」
「呪言かどうかは別として、強烈な暗示じゃないかと・・・。」
「暗示だとしたら、どうしたら解けるんだい?」リチャードが言葉を挟む。
「痛覚を刺激すれば或いは・・・。」
「だったら簡単だな。私がリチャードを殴ればリチャードの暗示が解けるって訳だな。」デービットが言う。
「なんで、僕が殴られる前提なんなんだい。」
間髪入れずにデービットは、リチャードを殴った。
鈍い音がするとリチャードはぶっとばされ、地面に這いつくばった。
リチャードは気を失った。
その状況に気づいたサリエスが一旦、シルクからシフォンたちの方に目を向けた。
「あなた方、何をなされているのですか?」
「デービットの馬鹿。加減ってものがあるでしょ。」
「いやその・・・これぐらいしないと解けないと思って・・・」
「仕方ありません。あなた方全員まとめて改心させてあげましょう。」
「《跪きお聞きなさい》。」
サリエスの言葉がシフォンたち掛けられる。
シフォンたちはその言葉に抗いすぐに跪くことはなかったが、一緒に付いてきた少年はすんなりとその言葉に従った。
少年の目は虚ろになり只々、その言葉に従順に従っている。
「さあ、他の方々も《従いなさい》。」
抵抗を続けていたシフォンたちであったが、デービット、コリーダ、シフォンと言う順に跪いて行く。
最後まで抵抗していたシルクだったが遭えなく陥落した。
その横で気を失っていたはずのリチャードがゴソゴソと動いていた。