合流
シフォンたちは、人けのない場所に身を潜めていた。
「本当、便利な魔法ね・・・よく考えたらこの魔法があれば、この街を出るのも楽勝だったじゃない。」
「本当にですね。いきなりの出来事で思いつかなかったですね。」
「イエ、ワタシハ、キヅイテマシタ。」
「だったら、早く言いなさいよ。」
「オモシロソーダッタノデ、ツイ・・・」
シフォンたちを捜す人々が近くを通りすぎる。
「お姉ちゃんたちどこ~。」
「皆さん、出て来て下さい。悪い様にはしないそうですよ。」
親子の声がする。
昨日とは別人の様に変わっていた。まるで何かに獲り憑かれている様に。
それをやり過ごすシフォンたち。
「あの女の説法で操られているのかしら?」
「あんなことが出来るなんて彼女は、普通の神官では無いのでしょう。」
「リチャードサンタチモ、シンパイデース。」
「そうね。でも、あっちはあっちで何とかして貰うほかないわね。」
「何とか彼らと連絡できれば良いのだけど・・・」
「この騒ぎを知って向こうも動きがあるかもしれない。」
◇◇◇
リチャードたちも異変が起こっている事を察知していた。
周囲を慌ただしくヴァリアシオンの兵たちが走っていた。
至る所で真偽不明の話しが漏れ伝わってくる。空から女の子が降って来たと。
「空から女の子が降って来たって?本当かな~・・・。」
「さあな・・・最近色々とあったからな。何が起ころうが不思議ではない。」
「お兄ちゃんたち、俺、母ちゃんたちが心配だよ。」
「そうだね~。僕らもシフォンくんたちと連絡を取りたいし・・・」
「他の連中もここを抜け出している。私たちもここを離れても大丈夫だろう。」
「でも、向こうもこっちに向かっているとしたら、行き違いになるかも・・・」
「その可能性はある。だがな、ここに留まっていても何も始まらないぞ。」
「う~ん。誰かここに残ればいいのだけど・・・」
パッとジェイドが現れる。
「やっと撒けたよ・・・あのごっついおっさん。」
「唐突に姿を現すね~君は・・・でも、丁度良かった。」
「丁度良かった?いやぁ・・・それほどでも・・・」
「う、うん。兎に角、君はここで待っててくれないかい。シフォンくんたちがこっちに来るかも知れないからさ~。」
「少年。何処か行くのか?」
「シフォンくんの方に行ってみようと思うんだ。」
「なるほど・・・そう言うことね。だったら、少年これを進ぜよう。」
ジェイドは、リチャードに何かを手渡した。
「こんなの貰ってもこれをどうしろと・・・」
「役に立つも立たないも君しだい・・・使いどこを間違えなければ、きっと役に立つさ。」
「こんなもの寝る時くらいにしか役に立たないよ~。」
「人の好意を無にするのかい・・・悲しいなぁ・・・」
「わかったよ。貰っとくよ~。」
「そうこなくっちゃ。」
「話しは終わったか?だったら行くぞ。」
「今、行くよ~。」
リチャードたちは女性たちが連れて行かれたと思われる場所へと向かった。
◇◇◇
サリエスは、聖十字教信者を引き連れて逃げたシフォンたちを捜していた。
「皆さん、あの邪教徒を見つけて下さい。あの方たちは、邪教の教えをすり込まれています。私があの方たちを解放して差し上げなければなりません。」
「はい・・・見つけだします・・・」
人々がサリエスの言葉に従いシフォンたちを捜しに行く。
「あの方たちに救いを・・・・・・そろそろ・・・サンカルロお戻りなさい。」
引き戻されるサンカルロ。
「サリエス・・・まだ、やっとんのか・・・」
「サンカルロ。あの方たちを捜して下さい。あなたなら簡単でしょう。」
「簡単だが・・・」
「だったら、早くお願いします。」
「やれやれ・・・」
サンカルロは、目を閉じ集中している。程なく目を開ける。
「見つけたぞサリエス。」
「案内して頂戴。」
「まあ、いいが・・・あんまり無茶すんな・・・」
「早く行きましょう。」
サンカルロは、サリエスをシフォンたちの元へと連れて行った。
◇◇◇
シフォンたちは、リチャードたちと合流すべく急いでいた。
「男どもと合流して、とっとと、この街から脱出よ。」
コリーダは息巻いていた。
「うまい具合に合流できたとして、このままでいいのでしょうか?」
「あの親子のことを気にしているの?」
「放っとく訳にはいかないかと・・・」
「何か方策でもあるなら聞くわよ。」
「・・・・・・」
「無いんなら急ぐわよ。」
追手を気にしつつ足早に進むと、その途中でリチャードたちと鉢合わせした。
お互いの再会に歓喜する間もなく現状を報告しあった。
現状の問題を把握する。
「聖十字教のおかしな神官に絡まれて大変なことになっているんだね・・・」
「そう言う訳よ・・・で、その子をどうしましょうか?」
リチャードたちと一緒に行動していた少年を目を移す。
「困りましたね・・・あの親子があの状態ですと・・・」
「母ちゃんたちに何かあったのか!」
「え・・・あ・・・いえ、何もありませんよ。」
「嘘だ!」
「デハ、ワタシガ、セツメーシマース。アナタノオカアサンハ・・・アヤツラレテマース。」
「あやつられてる?」
コリーダが補足する。
「ある種の暗示にかかっているみたいね・・・自分の意志で行動していない。」
「どうしてそうなったんだよ・・・」
「その神官って何者なんだい?」
「知らないわよ。突然、空から降って来たんですもの・・・」
「その話し本当だったのか・・・」
その時、後ろから声をかけられる。
「あなた方、見つけましたわよ。」
そこにサリエスとサンカルロが立っていた。