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all breaker  作者: paruseito
第Ⅱ章-Ⅱ ルースダム編
140/280

占拠

 兄妹の家は、小さいながらも、シフォンたち5人が泊っても十分な広さがあった。当然の様にジェイドは、何処かへ消えていた。

 咳き込みながら兄妹の母親が出迎えてくれた。


 「すみません。この子たちが無理を言って・・・。」

 「無理だなんて・・・困っている時はお互い様ですよ。」


 ここに来る途中で仕入れた食料をテーブルに広げる。

 以前の失敗を踏まえて、出来合いの物ばかりだ。

 兄妹は、物欲しそうに並べられる食べ物を見ている。


 「もう、食べてもいいですよ。」

 シフォンは、優しく兄妹に言った。

 余程、お腹が空いていたのだろう。もの凄い勢いでかぶりついていた。


 「あなたたち、慌てないで、ゆっくり・・・」

 母親は、子供たちに注意をしようとした時、咳き込みが激しくなった。

 「シルクさん。」

 「ハーイ。」


 シルクは、母親の元に行くと、回復魔法を唱えた。

 清らかな白い光りが母親を覆った。

 母親の病状は回復に向かい、顔色も良くなった。


 「アトハ、エイヨウノ、アルモノヲ、タベテ、タイリョクヲ、カイフクスルダケデース。」


 「あ、ありがとうございます。」

 「ナンテコトアリマセーン。」

 「あの・・・家にはその・・・魔法治療にかかる費用を支払うお金が・・・」

 「オカネ、ナンテ、イリマセーン。」

 「泊めてもらう、お礼だと思って下さい。」


 「お姉ちゃんたち魔導師なんだ。すごーい。」

 「そんなこと、ありませんことよ。」

 「コリーダサン、ナニモ、シテマセーン。」

 「そんなこと言ったら、シフォンさんだって・・・」

 そこに、笑いがこぼれていた。


 子供たちは、お腹一杯になり、早々に眠りに落ちた。

 眠ったことを確認するとシフォンたちは、母親と話しをした。


 「あの・・・お父さまのことですが・・・」

 「・・・わかってます。あの人は、もう・・・。」


 父親は、一月前、仕事で王都に出かけた。そして、帰宅の予定日を過ぎても帰って来ない。そこにきて、王都壊滅の知らせ・・・。

 元々、体の弱かった母親は、心労も重なり体調を崩したと言う。


 「そう、あなたたちも王都に・・・。」

 「その・・・なんか申し訳なく・・・。」

 「命あっての、物種ですし、お気になさらず。」


 「それに、まだ、死んだって決まった訳ではないだろ~。」

 リチャードの空気を詠まない発現。

 「あんたは、黙ってなさい。」


 「そうですね・・・まだ、諦めるのは早いですよね・・・。」


 王都の惨状を知るシフォンたちは、もし、父親があの場にいたのだったら助からないことは、容易に想像がついた。

 もし、一足先に王都を出て、何処かに寄り道しているのなら、助かっている可能性はある。

 でも、それは、希望的観測。現実味がない。が、そう言うことが、あったていいんじゃないかと思うシフォンもいた。

 

  ◇◇◇


 闇夜を行軍する一団があった。

 翌朝には、バンフォーレストに着いていた。

 その一団は、休む間もなくバンフォーレストの街を制圧にかかった。

 唐突な出来事に、駐屯兵は為す術なく街を明け渡した。


 「ここバンフォーレストは、ヴァリアシオン侯爵の領地になった。只今より、人の出入りを一切禁止する!」

 この一団を指揮する男が宣言する。


 すると、その一団は、バンフォーレストにいた人々を男女に分けて集めはじめた。


 「やれやれ、また、面倒なことになったね。さあ、シフォン嬢ちゃん、これからどうする・・・」

 ジェイドは、達観していた。


   ◇◇◇


 シフォンたちが目覚めると、外が騒々しいことに気づく。


 「ミナサーン、タイヘンデース。ヘータイサンガ、マチノヒトタチヲ、ドコカヘ、ツレテイッテイマース。」

 「ん?シルクくん。どう言うことだい。」


 「ダカラ、ヘイタイサンガ・・・」


 兵士数人が家に押し入ってくる。

 「お前ら、一緒に来てもらおうか!」


 「何ですか、あなたたちは。」

 「我々は、ヴァリアシオン侯爵の兵である。悪い様にはしない。一緒に来てもらおう。」

 「そんな、一方的な・・・」

 「こちらとて、手荒な真似はしたくない。大人しく来てもらいたい。」


 「あの・・・子供たちもですか?」

 「勿論だ。素直に従ってくれれば何もしない。」

 「取りあえず、従った方が良さそうですね・・・。」


 シフォンたちと親子は、兵に従うことにした。


 「男は、こっちだ。」

 「この子もですか・・・」

 母親は、男の子をかばうように言った。

 「直ぐにすむ・・・」

 「僕たちもついてるから大丈夫さ~。」

 「貴様は、ともかく、私が一緒だ、ご安心を。」


 「あんたたち、任せたからね。」

 「任せたまえ~。」

 「・・・心配だわ。」


 シフォンたちは、男女に分けられ連れて行かれた。


   ◇◇◇


 男たちが集められた広場にて。

 広場には、続々と男たちが集まってくる。

 広場を囲むように兵が配置されている。


 「何か仰々しくないかい?」

 「男と女をわざわざ分けたんだ。ろくでもない事が起こるのだろうな。」

 「母ちゃんたち大丈夫かな・・・」不安そうな少年。

 「大丈夫さ~。向こうには、腕利きの魔導師が3人もいるからね。」


 人ごみをかき分けて1人の男がリチャードたちに接触した。


 「・・・少年が1人増えとる・・・。」

 「おっさん。やっぱりいたか。」

 「誰、このおじさん・・・。」

 「お!今、誰って聞いたよね・・・。」

 「はい。この人は、僕らの仲間さ~。」

 リチャードもジェイドの扱いを覚えた様だ。


 昨日のことを端的に説明し終えると。

 「おっさん、この状況どう思う?」

 「・・・どう思うって、別にどうも・・・」

 「真面目に答えてくれよ~。」

 「まあ、直ぐにわかるでしょ。」


 そうこうしていると、この場を仕切っている男が話しを始めた。


 「我らは、ヴァリアシオン侯爵率いる軍隊である。侯爵様は、広く人材を募集している。」


 「やはり、徴兵か・・・。」

 「まあ、ただの徴兵ではないだろうね。」

 「そうなのかい?」


 「諸君らも、愛する家族、恋人がいるだろう。そこで、提案がある。」


 「提案・・・悪い予感しかしない。」


 「この度、公爵様がルースレスを立て直す決意をなされた。しかしながら、兵が不足している。そこでだ、今、我が軍に加われば、高額な報酬と上級市民の地位を確約しよう。」


 「いやいや、僕は、貴族だよ。上級市民って・・・。」

 「貴様に言ってる訳ではないだろ。」


 「別に断ってくれても構わない・・・・・・しかし、諸君たちにも愛する人たちがいるだろ・・・それが、どうなってもいいと言うならな!」


 「チ!やっぱり、人質か・・・」

 「予想通りか・・・」はーつまらん。

 「そう言うことだったのか~」


 広場は、騒然となり、血気盛んな若者が兵に詰め寄ったのだが・・・。

 兵隊は、有無を言わさず、若者を斬り殺した。


 「逆らえば、こうなる!よーく考えて欲しい。」


 「何が良く考えて欲しいだ。」

 「選択肢がないじゃないか~。」


 「1日だけ時間をやろう。逃げ出そうとしても無駄だ。街の周辺は、既に固めてある。逃げ出した者は、即、殺す、いいな。」


 リチャードたちは、徴兵を迫られた。

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