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all breaker  作者: paruseito
第Ⅱ章-Ⅱ ルースダム編
133/280

方針

 ルースダム壊滅・・・。

 シフォン達は、危険は承知の上でルースダムに戻ることに・・・


 途中、早馬が駆け抜けていくのを何度か見かけた。


 陽が沈みかけた夕刻、そこで、彼女たち目にしたものは・・・見るも無残な街並み・・・否、瓦礫の山だった。


 「これが・・・ちょっと前まで栄えてたルースダム・・・」


 もう何もかもが原形を保っていない。ただ・・・見るに堪えないものが見え隠れする・・・

 それは、人の形をした何か・・・嗚咽をもよおす。


 少し歩いただけで、それだ・・・誰も生きてはいまい・・・。


 一人でも助けたい思いはあった。


 しかし、それは希望的観測。誰がどう見ても生きている者はいないと思うだろう。


 「ここまで、酷いなんて・・・」

 「・・・私たちの出来ることは無いようね・・・弔うにも・・・多すぎます。」


 シフォン達以外にも難を逃れた人々も若干ながら戻って来ていた。

 彼らも又、絶望していた。泣き叫ぶ者。放心状態の者。嗚咽する者。様々だ。


 そんな中、ピョンピョンと瓦礫の山を飛び跳ねるように移動して来る見慣れた男。


 「やあ、君たち無事で良かった。」ジェイドが何時もの調子で話し掛けて来た。


 「おっさん、生きてた・・・。」

 「おっさん言うなし・・・」

 「あなた・・・悪運だけは良いのですね。」

 「まあ、既に死んでるけどね。」


 「・・・・・・ともあれ、良かった、あなたの様な人でも居なくなるのはちょっと・・・。」


 「心配してくれたのね。あんがと。」

 シフォンは、苦笑いを浮かべていた。



 夜が訪れるとルースダムのほど近くで焚火で暖を取る一団にシフォン達の姿もあった。

 生き残った人々が自然と集まり、僅かばかりの食料を分け合っていた。

 どうやら、関所にあった備蓄の食料を持ってきたみたいだ。


 シフォンたちは、今後の方針を考える。

 ルースダムの復興を手伝うと言う意見が態勢を占めていたが異議を申す男が・・・。


 「私は、反対だ。この国から早く出たほうがいい・・・。」


 「また、難癖つけるのですね、あなたは・・・。」

 「おっさん。何か理由があるのか?」


 「斥候を見た・・・恐らくは、地方貴族か、隣国のだ・・・。」

 「それが何か問題でもあるのかい?」

 「これから、この国は荒れる・・・王が居なくなったんだ、権力争いが始まるだろう。隣国もこれを機に領土拡大を図ってきてもおかしくない・・・。」

 「それは、ここが戦場になるってことですか・・・」


 「小競り合いはあるだろう・・・だが、ここは放棄されるだろうな・・・。」

 「王都を放棄?ありえない。」

 「復興には、金も人もかかる・・・・・・金はいいとして、人がね・・・失いすぎた。復興させるより生き残った人々を移住させた方が手っ取り早いからな。」

 「それはそうだが・・・。」


 「もう少し考えてから結論を出しなよ。この国の争いに巻き込まれたいのなら、これ以上は何も言わないよ。」

 そう言い残すとジェイドは、席を外した。


 シフォン達はもう一度、今後について話し合いをした。

 ジェイドの言うことは、御もっともだと言うのはわかってはいた。

 しかし、彼女らの正義感が邪魔をする。被災者を見捨てる行為じゃないかと。

 このまま、議論しても結論が出そうもなかった。


 「仕方ありません・・・多数決で決めましょうか・・・」

 「そうですわね。それで良いでしょう。」


 復興を手伝うに挙手したのは、シフォンとデービット。

 この国を出るに挙手したのは、コリーダとリチャード。

 シルクは、うつむいたままだった。


 「シルク!シルク!聞いてるの!」

 コリーダがシルクの両肩を揺さぶる・・・。

 「ハイ?」

 「あんた、昼間からおかしいわよ。」

 「ゴメンナサイ。チョット、ボーット、シテタダケデス。」

 「何かあったんじゃないの?あの混乱の時に・・・」

 「ホント、ダイジョウブ、デスカラ・・・。」

 「どう見ても、大丈夫じゃないでしょ!」

 「・・・・・・」


 「まあ、まあ、コリーダさん。その辺で・・・。」

 「シフォンさん!あなたは心配じゃありませんの!」

 「心配してますよ。本人が話したくないなら仕方ないじゃないですか・・・シルクさん・・・独りで抱えきれなくなったら、何時でも話して下さいね。」

 「・・・ゴメンナサーイ・・・。」


 場の空気が重くなっていたのを変えたかったのだろう。

 リチャードがパンパンと二回、手を叩いて、注目を集めた。


 「はい、はい。君たち~リクリエーションはお仕舞いだよ~。シルクくん。後は君しだいだよ~・・・僕らのこれからが決まるのは、復興を手伝うのか、この国を出るのか。」


 シルクは、少しだけ考えるとすぐに答えを出した。

 「ワタシハ・・・・・・コノクニカラ、デタホウガ、イイトオモイマース。」


 「うん。この国を出ることに決まりだね。」


 「シルクさんがそう言うのなら・・・」

 今まで、シルクの助言は的確だったことを考えれば、その言葉に素直に従えた。

 正直、シフォンには、後ろ髪を引かれる思いはあった。

 だが、これが最善だと自分に言い聞かせ納得した。


 シフォン達は、たった1日でルースダムを後にすることになった・・・。


 



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