ウリエル降臨
広場では、魔族になったバオンが暴れていた。
ステイジーとプライムはその様子を窺っていた。
「隊長。トレアンの姿が見当たらないです。」
「・・・あいつの事は、放っとけ・・・。」
「でも・・・」
「あいつは、ガブリエル様の親衛隊だ。放っといていい。」
「ええぇ!?エリートじゃないですか!」
「そうだな。」
「だったら、媚び売っとかないと・・・。」
「媚び売ってどうする・・・プライムよ。」
「ところで、隊長・・・アレ、どうするんですか?」
プライムは、怪物を指さす。
「魔族の相手をするつもりはない・・・。」
「でも、アレ、こっちに来るかもですよ。」
「そん時はそん時・・・不可抗力ってことで・・・」
「やっちゃっていいんですね?」
「わかってるじゃないか。」
二人の神族は臨戦態勢を取っていた。
◇◇◇
遥か彼方で様子を見ている魔族が二人・・・。
「キャハハハ・・・もう、始まちゃってるよクワトラ~。」
「嗚呼・・・そうだな。」
「じゃあ、行ってくる~。」
「ちょい、待ち・・・」
クワトラベルは、ワーストベルの首根っこを掴むと持ち上げた。
「俺様たちは見学だと言ったろ。」
「なんで!なんで!」
「どうやら、もっと面白いことになりそうだからだよ。」
ワーストベルは、首をかしげる。
「神族やウッドマンだけじゃねぇ・・・厄災までいやがる・・・こりゃ、見物だ。」
「だったら、早く行かなきゃ!」
「バーカ。まだ、前哨戦だぞ。俺様たちが出張る必要はねぇ。」
ワーストベルは、ジタバタと手足を動かし抜け出そうとしていた。
「嫌だ!絶対に今行くぞ!」
「あのなぁ・・・今、行っても面白くはならんぞ。」
「ほへ?」
「もっと待てば、強えーヤツがわんさと出てくるって言ってるんだ。」
「そーなのか?」
「そーなのだ。」
「そーなのか・・・うん。わかったぞ。ちょっとだけ待つぞ。」
ワーストベルは待てを覚えた。
◇◇◇
広場の混乱を他所にジェイドは外の建物の屋根の上で高みの見物を決め込んでいた。
「いやいや、凄いことになってんね・・・」
「ハハハ。そうだな。大変なことになってるな。」
そこには、既に先客がいたのだ。
その者は、白い着物を着た筋肉粒々の暑苦しい白髪の男?だった。
ジェイドと白髪の男?は、顔を見合わせる。
「ハハハ。君も良い趣味してるね。」
「そちらこそ。」
ガハハと高笑いが響いた。
「・・・ところで、あんた誰?」
「ハハハ。そっちこそ何者だ。」
「・・・今・・・何者っていたよね?」
「ハハハ。言ったぞ。」
ジェイドは、ニヤリと笑うといつもの自己紹介を始める。
「私の名前は、ジェイド=オージェン。享年24歳。残念ながら既婚だ。
でも、嫁はまだいない。」
「ハハハ。大儀であるぞ。」
「突っ込まないの・・・。」
「ハハハ。何をだ。」
「いえ、なんでもありません。」
「では、今度は吾輩であるな・・・吾輩は、ウリエル。天使長ウリエルだ。」
「ウリ・・・エル・・・。ハハハハハ・・・カッコイイな。」
「ハハハ。崇めてもよいぞ。」
「ははー。」
ジェイドは、崇める格好をした。
「ハハハ。おぬし、ノリがいいのう・・・。」
「そちらこそ・・・。」
ワハハと高笑いが響いた。
二人が馬鹿をやっているうちに広場は大惨事になっていた。
「ふむ、そろそろ、吾輩は行くとするかのう。」
「閣下、どちらへ?」
「勿論、救いを求める者たちの元へ。」
「おお・・・流石、閣下。」
「ハハハ。又、会おうぞ。ジェイドとやら。」
そう言った後、ウリエルは、カッコイイポーズ(ウリエル的に)を取ると。
これが吾輩の・・・変身!!
すると、ウリエルが眩く輝いた。
光の中から天使が現れる。 天使の衣 『真・ウリエル三式改』登場。
その天使は、白と赤を基調としたカラーで、8枚の羽根を持ち、
とても派手な出で立ちをしていた。
天使は、天空高く舞い上がった。
ジェイドは、感嘆の声を上げながら拍手をして天使を見送った。
◇◇◇
広場では、逃げ遅れた観客と黒装束たちが怪物に蹂躙されていた。
「ダメだ・・・お仕舞いだ・・・俺たちの勝てる相手じゃない・・・。」
黒装束の一人が嘆くと同時に・・・怪物の拳でベチャっと圧し潰された。
怪物は標的を変える。
腰を抜かして動けなくなっていた女性の観客に・・・。
「誰か・・・誰か・・・助けて・・・・・・。」
女性の観客が悲痛な叫びがこだました。
その時、頭上より大きな声が響く。
天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ、悪を倒せと吾輩を呼ぶ・・・。
人々が天を見上げた。
8本羽根の白と赤の派手な天使が腕を組みながら降ってきたのだ。
ウリィィィィィエルゥゥゥゥ!こぉぉぉりん!!
ウリエルは、そのまま怪物の頭上に落下した。
ズドオオオォォォォォン
怪物は、地面にめり込んだが未だ健在。
ウリエルは宙返りをし、怪物の前に降り立つ。
「ハハハ。ふむ。今のを耐えたか・・・やるではないか。」
ガルルルルル・・・・
「なんだ、知性がないのか・・・つまらん。」
ウリエルは、羽根の1本を手に取ると、業火の剣へと変わった。
「興味が失せたわ・・・早々に召されよ。」
ウリエーーーーール ダイナミック!!
一閃。
怪物は、真っ二つに両断されると、灼熱の炎に包まれた。
人々は呆気にとられていた。あの怪物を一撃でしとめる奇妙な物体に。
「ハハハ。人の子らよ。吾輩を崇めよ!」
ウリエルは、高らかに勝鬨を上げるのだった。