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all breaker  作者: paruseito
第Ⅱ章-Ⅱ ルースダム編
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シルクの失態

 罪人バオンの首がゲラゲラ笑いながら宙に舞う。

 サンカルロ広場に集まった観衆は、ショーの続きだと勘違いしていた。

 「どう言う仕掛けになってるんだ?」

 「魔法だろ?」

 だがそれが、ショーでない事がすぐにわかった。

 舞い上がった罪人の首から樹が生え、異形の怪物に変わったのだ。

 地上に降り立った怪物は、騎士を片手で掴み持ち上げた。握り潰すように。

 グハっと血反吐を吐く騎士。

 そのまま騎士は・・・弾け散った。


 観衆はその光景を目の当たりにして歓声は悲鳴に変わっていた。

 逃げ惑う人々。正にパニック状態。

 人波がシフォン達を分断した。


 シフォンはあの怪物に心当たりがあった。

 学院に現れた化物・・・そして、ユーワの変貌。

 それに似たものを感じ取っていた。


 逃げ惑う観衆に揉みくちゃにされながらシフォンは考える。

 今は独り・・・みんなと合流してから・・・

 何をする?戦う?そんな義理はこの国にはない。

 逃げる?・・・でも、人々を見捨てるなんて・・・。

 悠長に考えている暇はなかった。怪物は人々を襲いはじめていた。

 恐ろしい咆哮をあげて。


  ぐおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ・・・・・・


 人々が次々と潰されて逝く・・・

 黒装束たちが立ち向かうが、まるで相手にならない。

 簡単に弾かれ、握り潰される。


 「今は、逃げるしかない・・・。」

 一人で立ち向かえる相手ではないことは、一目瞭然だった。

 シフォンは、人波に乗ってこの場から離れることにした。


  ◇◇◇


 コリーダ、リチャード、デービットの3人は一緒にいた。

 3人も人波に押される様に広場の外に・・・。

 外に出た3人は物陰に隠れ相談した。


 「シフォンさんとシルクとはぐれてしまったわ。」

 「ついでに、おっさんもな。」

 「あの人は大丈夫でしょう・・・。」

 「だね。」

 「兎に角、二人を捜しましょう。」

 「二人が一緒にいてくれるといいのだが・・・。」

 「この混乱状態だからね~見つけるのは骨だね~。」

 「合流場所を決めてそれぞれで捜そうじゃないか。」

 「わかったわ。」「わかったよ~。」


 3人は、合流場所を決め、1時間後その場に集まることを約束し分かれた。


   ◇◇◇


 シルクは既に広場外の路地にいた。

 そこに一人の女?がシルクに話しかけた。


 「久しぶり・・・キヌ。」

 「トレアン・・・。」

 シルクは、一瞬、驚きの表情をみせた。


 「ナゼ・・・アナタガ ココニ?」

 「僕も任務でここに来たんだ・・・。」

 「ソーデスカ・・・。」

 「君がここにいるって事は、ミカエル様も動いてるって事だね。」

 「・・・・・・。」

 「どうだろう、情報交換をしないかい?」

 「ジョーホーコーカン?」

 「うん。僕の持ってる情報と君の握ってる情報を交換するのさ。」

 「キャッカデース。メリット アリマセーン。」

 「ふぅ・・・同期のよしみでいいじゃん?」

 「カンケイアリマセーン。」


 トレアンは、そこで考えた。

 情報を引き出すため、こちらから先に情報を開示し、シルクのリアクションを見ることに。


 「そっか・・・じゃあ、一方的にこちらの情報を話すわよ。もう時期・・・

  ウリエル様がここに来るわよ。今、暴れてる魔族を倒しに・・・。」


 「ソレハ・・・ホントデスカ・・・。」

 「嘘を言ってもしょうがないじゃない・・・ねえ、キヌ、あなた何しにここに来たの?」

 「・・・・・・。」

 「それくらいいいじゃない。」


 シルクは思考した。トレアンの目的、狙いを。

 ミカエル様の情報を引き出そうとしているのは明白。

 さて、どうしたらいいものやら・・・。


 「ソレダケデハ、フジュウブンデース。

 モット、ユーエキナ ジョーホーナラ、カンガエマース。」


 トレアンは、ニッコリ笑う。

 「いいわ。もっといい情報をあげるわ。ウッドマンの幹部。アケボノもここに来てるわよ。」

 「・・・ナンデ、ソンナコトマデ、シッテイルノデスカ?」

 「それは、秘密。・・・今度はそっちの番よ。」


 「ゴットイーター・・・コレダケシカ、イエマセーン。」

 「神殺しゴットイーター!?居るのですかここに?」


 シルクは失敗した。トレアンは、神殺しゴットイーターの存在を知らなかった。

 当然、既に掴んでいる情報だと思っていた。ただ、それを確定させてやるだけのつもりだった。

 まさか、ミカエル陣営しか知らない情報とは思いもよらなかった。


 「ねえ、もっと詳しく聞かせてよ!」

 「・・・・・・。」

 シルクは何も答えなかった。いや、答えるどころではなかった。

 明らかな失態。軽はずみな言動。とんでもないミスだ。

 シルクの表情は変わらないが、明らかに動揺していた。

 察したトレアンは、話しを切り上げる。


 「まあ、いいわ。いい話しも聞けたし・・・又、今度ね。」

 トレアンは、その場をあとにする。

 トレアンの後ろ姿を見つめるシルクは、『今なら始末できる。』と思った。

 だがその時・・・


 「シルク~。」

 自分を呼ぶ声に振り返る。

 「コリーダサン?」

 息を切らせてコリーダがシルクの前にやって来る。

 「良かった見つかって・・・。」

 「ソンナニ、イキヲキラセテ・・・ドウシタノデスカ?」

 「どうしたじゃないわよ。はぐれておいて・・・。」

 「オー・・・スミマセーン・・・。」

 「みんなと合流するわよ。」


 シルクが振り返ると、既にトレアンの姿は無くなっていた。

 シルクは、唇を噛みしめるだけだった。


 「シルク。早く行くわよ。」

 「ハーイ。」

  二人は、合流場所に向かうのであった。

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