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all breaker  作者: paruseito
第Ⅱ章-Ⅱ ルースダム編
118/280

世にもおぞましい

 サンカレンからルースダムまでは、歩いて5日はかかる。

 馬車の定期便もあったが、シフォン達は歩いて行くことを選択した。

 先を急ぐ旅でもないし、ゆっくりと各地を見て廻ると言うことだ。


 道中、小さな村や集落で宿を取り、ルースダムまで後、1日といった距離まで来ていた。


 「次の村で今日は宿を取りましょう。」


 シフォンがそう提案すると、皆、賛同した。


 「明日にはルースダムに着くわね・・・」

 「本当にやっとだよ~。」


 「ムラガ、ミエテキマシタ!」

 「やれやれ、今日もよく歩いたな。」


 村が見えると自然と足早になるシフォン達。

 程なく、村にたどり着く。


 「やはり、ここも寂れてますね。」

 「宿屋があるのかも怪しいね~。」

 「ヤドヤガ ナイナラ、ミンカニ トメテモライマショー。」


 この旅におけるシルクの役割は大きかった。

 彼女の積極的に人とコミュニケーションとる姿勢が行く先々で功を奏し。

 宿屋のない集落でも民家にお世話になることが出来たのだ。

 シフォン達貴族には、そう言った事に縁遠く上手くいかなかった。

 デービット。彼は・・・人には向き不向きがあるもので・・・。



 村には宿屋はなく。シルクが村のまとめ役らしき人物と話しをする。

 話しは、あっさりと付いた。

 村には幾らでも空家があり、好きな処を使っていいとのことだった。

 シフォン達は、適度な大きさの空家を見つけそこに泊まることにした。


 「丁度いいとこが見つかって良かった。」

 「そ~だね~。でも、食事を自分たちで用意しないといけないのが、玉に瑕だね~。」

 「・・・それで、誰か料理できる?」


 貴族の子女だ料理なんてしたことがない。


 「それだったら、大丈夫。デービットができるよ~。以前、自慢していたよ。」

 「あら、意外。」


 食材を買い込んだシルクとデービット戻ってくる。


 「噂をすればなんとやら・・・」


 「ん?なんだなんだ?」


 「今日から君が専属シェフって話しだよ。」


 「・・・ほ、他に料理を作れる者は・・・・・・。」

 何やら様子がおかしいデービット。


 「シ、シルク殿は料理は・・・」

 「サッパリデース。タベルノ、センモンデース。」


 「おいおい、どうしたんだい?一流料理人も真っ青な腕前なんだろ~。」


 「意外な特技があるものね。」


 「・・・・・・」

 デービットは、唇を噛みしめていた。


 「あれは・・・嘘だ。料理なんてやったことがないんだ!」


 「嘘・・・だろ・・・。」


 「じゃあ、今日は、どうするのよ?」


 「仕方ありませんね・・・みんなで作りましょう。」

 「それしかないわね。」


 シフォン達は、全員で協力して料理を作ることになったものの。

 なんとも要領の得ない・・・それでも、なんとか料理らしき物が出来上がった。

 それは、世にもおぞましい・・・。


 「・・・誰か・・・食べなさいよ・・・。」

 「コーユーコトハ、ダンシノ シゴトデース。」


 リチャードとデービットは、醜い争いを始めていた。

 押し付け合いをしたが決着がつかず、結局、多数決で決めることに。

 その結果。リチャードが犠牲・・・試食することになった。


 リチャードの手は震えていた。


 「本当に食べるのかい・・・これを。」

 つんざくような刺激臭でリチャードの顔が歪む。 


 「はよ、食べろ。勿体ないだろ・・・」


 恐る恐る、料理を口に運ぶリチャード。

 すると・・・リチャードは泡を吹き昏倒した。


 シフォン達は、料理を家畜の飼料にして下さいと村人に託した。


 傍から見ていたジェイドは、唐突にシフォン達の泊まる空家を訪れると

 台所に入り、余っていた食材でサッサと料理を作った。

 作り終えると彼は言う。

 「調理ができないなら、焼くだけですむ食材にした方がいい。

 凝った物を作る必要はない・・・旅ではな。」

 そう言うとスタスタと空家を出て行った。


 「・・・これ、食べていいってこと・・・。」

 「みたいだな・・・。」

 「ジャア、ワタシ タベテミマース。」


 シルクは、一切の躊躇なく料理を口に運んだ。


 「コレ、オ~イシ~イ~。」


 その言葉を聞いた一同は、料理にかぶりついた。


 「本当に美味しい・・・なんか・・・悔しい。」

 「あんないい加減な人にも、特技があったんですね。」


 「しかし、なんで彼は一緒に食事をしないんだい?」

 「知らないわ。」

 「サンカレンのカフェでも何も食べてなかったし・・・」

 「謎ね・・・。」


 腹ごしらえ終えたシフォン達はくつろいでいた。

 コリーダが立ち上がり、話しを始める。


 「あんたたち、明日には、ルースダムに入るわ・・・そこで言っておきたい事があるわ。」


 「なんだい、言いたいことってのは~。」


 「亜人への迫害は、サンカレンの比じゃないわよ・・・

 何を見ても、何が起こっても、騒がないでよね。

 あそこでは、あたり前のことなんだから・・・・・・。」


 「この旅の出発前にも何か言ってましたね。」


 「あそこでやらかせば・・・今度は助からないわ・・・・・・。

 いい!絶対に騒ぎは起こさないでよね。」

 コリーダは釘を刺した。


 「はは・・・起こすわけないだろ~。」


  ◇◇◇


 翌日。空家を綺麗にかたずけ。ルースダムに出発した。  

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