デービット失う
裏路地に入ったシルクは、神族としての一面を表に出した。
「ジェイチャンサン。今後ノ事デスガ・・・・」
「おや?急になんだい・・・楽しいデートの途中で。」
「次ニ行ク、ルースダム・・・私ノ掴ンダ情報デスガ、ウリエル様ノ勢力ガ何等カノ動キガアルカモデース。」
「ウリエル・・・あぁ、天使長の一人か・・・」
「ソレニ、魔族ニモ不穏ナ動キガアルヨーデス。」
「ほう・・・なかなか面白そうじゃないですか。」
「狙イハ、ジェイチャンサンカモ知レナイデスヨ。」
「私?それはそれで面白いじゃないですか。」
「マッタク・・・アナタッテ人ハ・・・」
「それで、魔族って・・・どの勢力が動いているかも掴んでいるんだろ?」
「・・・・・ウッドマンデース。」
「これはこれは、益々、面白くなってきたじゃないですか。もしかしたら、魔族と神族の直接対決があり得るじゃないですか。」
「ジェイチャンサンハ、楽シソウデイイデスネ・・・」
「君は楽しくないのかい?」
「私ニハ、私ノ役割ガアリマスカラ・・・面倒ゴトハ、ゴメンデス。」
「まあ、本当の楽しみは別にあるけどね。」
「別ノ楽シミ?」
「彼らが、あそこで何を感じ、何をするのか・・・興味が尽きないね。」
「彼ラ・・・シフォンサンタチノ事ヲ指シテイルノデスカ・・・」
「君も含めてね。」
「私モデスカ・・・・私ハ、私ノ成スベキ事ヲスルダケデスヨ。」
「・・・・君は、シフォン嬢ちゃんたちことをどう思ってるんだい。」
「ハイ?良イ、オ友達ダト思ッテマスガ・・・」
「そう言うことを聞きたいわけではないんだが・・・・」
「純粋ニ、オ友達デアリタイトハ思ッテイマス・・・シルク=アンブロワーズ トシテハ・・・」
「神族としての君は、どうなのかな・・・」
シルクは、その問いには答えなかった。
次に向かうルースダムでは、何やら大荒れの予感が漂うのであった。
◆◇◆
街のはずれの人けのない空地で独り鍛錬に励むデービットの姿があった。
一心不乱に槍を振るうデービット。
全然ダメだ・・・数日、鍛錬を休んでいただけなのに・・・気力体力共にガタ落ちだ・・・
鍛錬だ鍛錬。過ぎ去った時間は戻らない。とにかく、一日でも早く元の状態に戻さねば・・・
「デービット、デービット。」
どこからともなく、デービットを呼ぶ声が耳に入って来る。
「誰だ!私を呼ぶのは!」
デービットは、辺りを見廻すが人影は何処にもなかった。
「気のせいか・・・」
「ここよ、デービット。」
気のせいではない、確かにその声はデービットに届いていた。
「何処だ!何処にいる!」
改めて、周りを見渡すデービット。今度は、感覚を研ぎ澄ます。
この声・・・何処からだ・・・・近くに居るのは間違いないのだが・・・気配を感じない・・・・それほどの強者か?しかし、今の声・・・どこかで・・・
「こ・こ・よ♡」
その声をデービットが聞き取るのと同時に目の前に女が姿を現した。
「き、貴様は・・・・ユーワ!」
ユーワは、不気味な笑顔を魅せながらデービットに近づく。
「あら?何時から呼び捨てされる様な仲になったのかしらデービット。」
「貴様は、今や敵だ!」
「悲しいわね・・・クラスは違うけど、学院の同級生じゃない。」
「・・・・その同級生を貴様が殺したのを忘れたか!」
「あら?そうだったかしら・・・」
「貴様ぁ!」 デービットは、槍を構え臨戦態勢をとった。
「止めときなさい・・・あなたでは、私をどうすることもできないでしょ。」
「そんなことは、わかってるさ!それでも、戦うが漢ってもんさ。」
「ふ~ん・・・どうでもいいけど・・・・それより、あなた・・・この間、領主の屋敷に来なかったわね、どうして?」
「貴様には、言う必要はない!」
「ふぅ・・・嫌われたものね。」
ユーワは、更にデービットに近づくと、ピタリと密着した。
「き、貴様・・・何をする・・・」
ユーワは、自分の胸を押し当てる様にデービットの身体に擦りつける。
「うわわぁぁ・・・何を・・・」
こう言ったことに免疫のないデービットは、あたふたしていると、甘い匂いがデービットを包んでいた。
なんだ、この香りは・・・頭がクラクラしてきた・・・それに・・・・柔らかいこの感触・・・
「ねえ、デービット。私といいこと・・・しない?」
「・・・馬鹿なことを・・・・言うな・・・」
「知らないんでしょ?教えてあげる・・・・」
デービットは、手に持っていた槍を落とし、脱力感が支配した。デービットは、ささやかな抵抗するものの、ユーワのなすがままに・・・。
「ほら、こんなに大きくなってる・・・欲しいんでしょ?」
「やめろ・・・やめるんだ・・・・」
「体は正直・・・欲しいって言ってるわよ・・・」
「そんなことは・・・言って・・いな・・い・・」
「フフフ・・・頑張るじゃない・・・私の魅了≪チャーム≫に抗うなんて・・・・と言っても時間の問題・・・あなたの初めて貰うわよ。」
ユーワは、デービットの唇を奪い・・・・。
こんなに柔らかいものなのか唇と言うものは・・・・何も考えられなく・・・・
◇◇◇
「ウフフフ・・・なかなか楽しめたわよデービット。これで、あなたは、私の手駒・・・・私の合図で言いなりになる・・・」
ユーワが邪悪な笑みを浮かべるなか、デービットは、幸せそうな顔で眠っていたのだった。