アリスと伝説記 1
アリスは、あっと言う間に文字の読み書きを覚えたわ。
それからのアリスは、教会にある本を読み漁る日々だった。
一通り教会の本を読み終えると、サンカレン図書館に通うようになった。
アリスは、知識を追い求めるようになっていた。その中でも、特に興味を抱いたのは、伝説記の事だった。
「サラサさん。母は、何故、伝説記のことを興味を持ったんですか。」
「それは・・・一度だけ聞いたことがあったけれど・・・曖昧な記憶ですよ。」
「それで構いません。教えて下さい。」
それは、私が教会から一人立ちさせられる・・・15歳の時です。
「サラサ・・・教会からいなくなるって本当?」
「本当よ。」
「やだよ、サラサが居なくなっちゃうなんて・・・・」
「仕方ないでしょ・・・決まりなんだから。」
「サラサ、どこに行っちゃうの?」
「図書館の司書になろうと思ってるわ。その為に勉強してきたんですもの。」
「サラサは、司書さんになるんだ・・・・」
「まだ、なれるって決まった訳じゃないけどね。」
「そっか・・・うん、決めた。あたしも司書さんになる。」
「まーた、思いつきで行動しようとする。」
「思いつきじゃないもん。あたし本、好きだし。」
「はいはい。だったら、アリスも勉強しないとね。」
「勉強嫌い・・・・」
私は、無事に司書になることが出来ました。そして、教会から離れる日がやって来る。
「じゃ、元気でねアリス。」
「うん・・・サラサ、あたしも絶対に司書になるから!」
「そうね・・・でも、アリス大丈夫?あんた全然、勉強できないじゃない。」
「大丈夫だもん!これから、いっぱい勉強するもん。」
「ふーん、そうなんだー・・じゃあ、期待せず待ってるから・・・」
「ちょっとは、期待してよ!」
「だって、アリスは、御伽噺やら童話ばっかり読んでいて、全然勉強しないし・・・」
「御伽噺じゃないもん。伝説記だもん。」 膨れっ面になりながら答える。
「はいはい、しかしなんで、伝説記に興味を持ったの?」
「・・・『七色の竜』の本当の話しをシスターに聞いたの・・・・」
今ある御伽噺の大半は、伝説記と呼ばれる書物の一節から創られたと言われてるのよ。『七色の竜』は、確か・・・・ある場所を指していると言われていたと思ったわ。
シスター、その場所ってどこのことなの?
ごめんなさい。そこまで詳しくは知らないの。もし、アリスさんが興味をお持ちなら、伝説記のこと、自分で調べてみるのも面白いかも知れませんよ。
自分で調べる・・・うん、やってみる。
そうです。何事も自分でやってみることが大事ですよ。
「なるほど、シスターのせいだったのね・・・」
「違うよ!きっかけはそうかも知れないけど・・・伝説記を興味を持ったのは・・・なんか、感じるものがあったんだよ・・・それがなにかは、よくわからないけど・・・」
「まったく、不思議な子ね・・・」
「伝説記が大事な何かを思い出させてくれる気がするんだ。」
「・・・・だと、いいわね・・・。」
「うん。」 アリスは、満面の笑みだった。
私は、教会を去り、サンカレン図書館の司書専用の寮で住まうことになりました。
アリスが司書になるのは、それから3年後の話しです。
「母が伝説記に興味を持った理由が、本当に曖昧なものだったのですね・・・・しかし、母は、すぐに司書にならなかったのですか?」
「はい。1回落ちました。」
「お母さま・・・・」
「あの子の場合、勉強嫌いが災いしたんでしょうね・・・・頭の悪い子ではなかったですしね。」
私とアリスは、図書館で又、一緒に生活するようになりました。
「サラサ、あたし司書になれたよ。」
「良かったわね・・・・初めっからちゃんと勉強してたら、去年受かってたでしょうに・・・」
「えへへ・・・」
「あんた、無理やり1年、教会に残ったんだから、シスターにお礼を言ったの?」
「うん。ありがとうって言ったよ。」
「・・・そんだけ?」
「うん。そんだけー。」
シスターお疲れ様でした・・・
司書になったアリスは、仕事そっちのけで、読書にふけることもしばしばで、先輩司書に目をつけられることに。
「アリスさん!仕事もせずに読書ですか・・・いい身分ですね。サラサさん、あなたの妹は、何を考えているのかしら?」
「あの・・・妹では・・・・」
「とにかく、サラサさん、あなたがちゃんと監督しときなさいよ。」
「アリス!あんたのせいで怒られちゃったじゃないの!」
「だって・・・」
「だってじゃありません!仕事は、ちゃんとやってからにしなさいよ。」
「うん・・・・わかったよ・・・・でも、面白い本がいっぱいなんだよ。時間がたんないよ。」
「ア・リ・ス!仕事優先、いいわね!」
「・・・・はい。」
アリスは、それから真面目に仕事をするようになったわ・・・・表向きは・・・
「あんた、又、本を読んでる・・・」
「ん?仕事は終わらせたよ。」
「ただでさえ、先輩たちに目をつけられてるんだから・・・目立つ行動は、控えなさい。」
「仕事終わらせたらしていいって言ったのは、サラサじゃん。」
「そうだけど・・・・あなたのことを、面白く思ってない方々がいるって事を覚えといた方がいいわよ・・・」
「なんで?」
「・・・・世渡りって知ってる?」
「それくらい知ってるよ~。」
「だったら、少しは上手くやろうとは思わないの?」
「んん?上手くやってるよ。」
「・・・・・あ、そう・・・」
アリスは、自分の仕事は、テキパキこなし、終わると読書をするその姿が、協調性がないと他の司書から見られるようになってしまったわ。