サラサとアリス
シフォンとコリーダ、リチャードは、図書館にやって来た。シフォンの目的は、サラサと会い、母アリスの話しを聞くことだ。
シフォンは、サラサを訪ねると館長室に通される。
コリーダとリチャードは、気を使いシフォンとサラサの二人きりで話しができる様、自分たちの興味のある分野の本を読みに行った。
シフォンとサラサは、館長室内の応接用のテーブルの席に着くと話しを始める。
「サラサ館長、今日はありがとうございます。お言葉に甘えてお話をお伺いしにきました。」
「そんなに、かしこまらなくて良いわよ。」
「そう言う訳には・・・」
「あの子とは、姉妹みたいな間柄なんだから、そんなに、気にしなくていいのよ。」
「そうなんですか・・・では、サラサ館長。お話しを聞かせた下さい。」
「サラサで良いわよ・・・・さて、どこから、話しましょうか・・・」
「サラサさんは、先程、母と姉妹みたいな間柄と言ってましたが、母とは、子供の頃からの知り合いだったと言うことですか?」
「そうよ。アリスとは、同じ施設・・・教会で育ちました・・・」
アリスと出会ったのは、私が10歳ぐらいの頃だったかな・・・・
旅商人に連れられて一人の黒髪黒い瞳の少女が教会にやって来た。
「すまない、シスター。この子の面倒をみてくれはしないか?」
「どうしたのですか・・・この子は?」
「プリークネスの森で迷子になっている所を保護したんだが・・・・この子、記憶がないんだ。」
「まあ、大変。親御さんはさぞ、心配なされてる事でしょうに・・・」
「サンカレンに連れては来たが、髪色からドラゴニアの子じゃないかと思うんだが・・・」
「あら、なら何故、こちらに連れて来たのですか?」
「連れて行ったさ。でも、向こうの答えは・・・・」
そんな子は、我が国では、見たことがないし、迷子や行方不明の子もいない。
「だから、こっちに連れて来たんだが・・・・向こうも、もう一度、調べてはみるとは言ってたが・・・」
「それで、うちに連れて来たのですね・・・・わかりました・・・困っている人を放っとけませんから・・・」
「ありがとう、シスター。よろしく頼みます。」
商人は、少女を預けると仕事に戻って行った。シスターは、少女の前でしゃがみ同じ目線で話しを聞いた。
「あなた、お名前は?」
「・・・わからないよ・・・・でも・・・・アリス・・・って言葉は覚えてるの・・・」
「アリス。良い名前じゃない。」
「あたしの名前なのかなぁ・・・・」
「きっと、そうよ。親御さんがみつかるまで、うちに居れば良いですよ。」
「うん・・・・。」
シスターは、アリスを連れ教会の中に入って行く。中に入るとシスターは、一人の少女を呼んだ。
「サラサさん、サラサさんはいませんか。」
気怠そうに一人の少女が現れる。
「なんですか?シスター・・・」
サラサは、シスターの横にいる少女を見て察した。
「あ、私、用を思い出したんで、失礼します・・・」
「待ちなさいサラサさん。用なんてないでしょ・・・・この子はアリスさん、今日からしばらくの間、うちで預かることになったの・・・・サラサさん。あなたが、アリスさんの面倒をみてあげて下さい。」
あからさまに嫌そうな顔をして口答えするサラサ。
「なんで、私なんですか?他の人でいいじゃないですか?」
「サラサさん。アリスさんは、あなたと年も近いですし、良いお友達になれると思いますよ。」
「別に友達なんて必要ないし・・・・」
「とにかく、頼みましたよサラサさん。」
シスターは、サラサにアリスを託すと、教会の雑務をこなしにいってしまう。
サラサは、渋々ながらもアリスに教会内を案内した。
サラサは、一通り案内し終えると、アリスに質問した。
「あんたも、親に捨てられたの?」
「親・・・・いたのかなぁ・・・あたしにも。」
「何、あんた、親がいなかったの・・・・悪いこと言っちゃったわね・・・」
「ううん・・・覚えてないだけ・・・・」
「覚えてないって・・・・どう言うこと?」
「・・・・・気づいたら、森の中に一人でいたの・・・・覚えていたのは、あたしの名前らしき言葉・・・アリスってことだけ・・・」
「記憶喪失ってやつ・・・・初めて見たそんな人・・・・記憶喪失なのに言葉は話せるんだ不思議。」
「うん・・・なんでだろう・・・」
「・・・・・しょうがないわね、私があんたの面倒みてあげるからね、感謝しなさい。」
「うん。ありがと・・・」
何、何、この素直な子・・・可愛い・・・・
それが、私とアリスさんとの出会いでした。
アリスさんの親御さんは結局、みつかりませんでした。そして、記憶も戻ることもありませんでした。
私は、アリスさんの面倒をみるうちに、だんだんと親近感の様なもの感じるようになっていった。
私は、本を読むのが好きで一人で読んでいた時のこと。
「サラサ。あたしも本、読みたい。」
「別に読めばいいじゃない?」
「うん・・・そうなんだけど・・・あたし、文字が読めないから・・・・」
「ふーぅ。要するに、私に文字を教えて欲しいってこと。」
「うん。教えてよサラサ。」
「わかったわよ。ちょっと、待ってなさいな。簡単な本を探してくるから・・・」
サラサは、文字の読み方を教えるために適当な本を探しに行くのだった。