サンカレン
シフォンは、幽霊との会話を試みる。
「あなた、この本を返して欲しいのでしょ?だったら、わたしと話しをしましょう。」
かえせ・・・かえせ・・・それをかえせ・・・・
「やっぱり、無理だよ~。会話なんて・・・」
「大丈夫、会話は成立します・・・・あなたの話しを聞きたいの・・・・あの人のことを・・・。」
あの人・・・・あの人ぉぉぉ・・・・
シフォンは、本を掲げながら幽霊に近づいて行く。幽霊の挙動が止まる。
「これは、返すわ・・・大事な物なんでしょ。」
本を手渡そうと幽霊に差し出すと、その本が幽霊に触れると、キラキラと昇天するがの如く消えてなくなった。
そうすると、幽霊の形相が優しく変わる。
ありがとう・・・・これを見つけてくれて・・・・大事な大事な、想い出・・・
「良かったですね・・・・あなたは、何故、幽霊に?」
わかりません・・・・私は静かに眠っていただけでした・・・ある時、どす黒い何かが私の中に入って来たのです・・・・
「・・・・あの、封印魔導書の影響ですか?」
・・・・あれは、魔族の呪いが込められた魔導書・・・ただ・・・それだけでは、理性を失うこともなかった・・・・
「どう言うことですか?何か別の要因があったのですか?」
・・・・現れたのです・・・あの・・・男が・・・・
「あの男?あの人と一緒に居たと言う。」
・・・私は、歓喜しました・・・あの男が居ると言うことは、あの人もと・・・・
「・・・あの人とは会えたのですか?」
いいえ・・・あの人は居ませんでした・・・そう、居るはずが無いのです・・・何年たっているとお思いですか・・・・
「伝説の時代ですよね・・・」
・・・伝説の時代かどうかは知りませんが・・・何百年、何千年か昔のことのはずです・・・・
「伝説の時代には、千年前説と三千年前説がありますが、はっきりとは、わかっていません。」
・・・・私が目覚めたのは・・・あなたたちの言う15年位前です・・・・どす黒い何かが入ってきて・・・・私は、必死に抗っていましたが・・・・10年前でしょうか・・・・あの男が図書館に現れたのです・・・・
「10年前・・・あの男・・・・」
・・・・私は、あの人を捜しました・・・・けれども・・・あの人は居ませんでした・・・・あの男は他人の空似かとも思いました・・・・でも・・・あの姿・・・見間違えるはずがない・・・・・私は、激情に駆られて・・・・どす黒い物に支配されてしまったのです・・・・
「それで、理性を失ったと・・・」
・・・・それでも、私は耐えていました・・・・完全に支配されてしまったのは・・・つい最近の事・・・・また、あの男が一人で現れたからです・・・
「・・・・あの男・・・なにか心当たりが・・・」
・・・・それにしても・・・あなた・・・どことなく、あの人に似てるわね・・・・
「わたしがですか?」
・・・・ええ・・・・それこそ、他人の空似ですね・・・・
「そうだ、呪いは・・・」
・・・それは、大丈夫・・・あなたたちが魔導書を切り裂いて・・・呪いの効力はなくなっています・・・・
「良かった・・・」
・・・・そろそろ・・・逝きますね・・・・いつまでも、ここに留まる訳にはいきませんしね・・・
「待って下さい・・・・アリスと言う司書を知っていませんか?」
・・・アリス?知りませんが・・・・そうだ、あなたに似た子は見たわね・・・・目覚めたばかりの時に・・・・あの魔導書がここに運び込まれたあの時に・・・
「・・・・何か知りませんか?」
・・・・私に言えることは・・・その時にその子は、呪われたってことぐらい・・・・
「どうして、呪われたのですか?」
・・・・魔導書が運び込まれた時・・・誤ってその魔導書の入った包みが落ちてしまったの・・・その時、近くに居た者たちが呪われたの・・・その中にその子も居たのです・・・・
「・・・・他になにか・・・」
・・・・ごめんなさい・・・これ以上はなにも・・・・
居ても立っても居られなかったのかサラサが幽霊に質問する。
「あなたは、始まりの司書カレン様なのですか?」
・・・・始まりの司書かどうかは知りませんが・・・私はカレン・・・・何故かは知りませんが・・・おひさまのカレンと呼ばれてました・・・・
「おひさまのカレン・・・・」
「なるほど、それで、サンカレンなのか~~。」
「ありがとうございました。カレンさん。母のことを教えてくれて・・・・」
・・・・ありがとうは・・・こっちの台詞ですよ・・・本を返してくれて・・・・
カレンは、スーッと消えて行く。
「あっ!待って!まだ、聞きたいことがいっぱいあるんです!」
サラサの呼び止めるも、そのままカレンは逝ってしまうのだった。
「逝ってしまいましたわね・・・・」
「スゴイ、ケイケン シマシタ・・・ユーレイサント カイワガ、デキルナンテ。」
「君は、話してなかったろシルクくん。」
「ソレ・・・イイマス・・・・」
「これで、デービットさんの呪いも解けているはずですね・・・」
「確認しに宿屋に戻りましょう!」
この時、気絶していたモノノベが目を覚ます。
「あつつっっ・・・おや?幽霊がいない・・・・」
「モノノベ先輩。幽霊問題は片付きましたので・・・・」
「はは~ん・・・モノノベ流陰陽術が効いたのだな・・・うんうん。」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・あ、はい。」
「わーははははぁぁ・・・これにて一件落着!」
結局、この幽霊騒動は、モノノベが解決したことに表向きはそうなった。モノノベの知名度は上がり、ますます、天狗になったとか・・・・