地下5階
モノノベを連れ図書館に戻って来たリチャードたち。そして、図書館玄関口で待つシフォンたち。
「やー、待たせたね、後輩くんたち。」
「それでは、参りましょうか・・・・封印書の所蔵庫である地下5階に・・・・」
そう言うとサラサは、そのまま、図書館裏手に向かう。
「図書館内から行くのではないのですか?」
「はい。図書館内からでは、地下5階には行けません。離れに地下に通ずる小屋があります。そこからでないと行けません。」
「そうでしたか・・・」 あの人の言った通りか・・・
小屋に着いたサラサは、一際大きな鍵を取り出し小屋の扉を開けた。ギギギィと重い音が響く。
その小屋に入ると大きなパイプオルガンと彫像が不自然に置かれていた。
サラサがそのパイプオルガンの座席に着くと旋律を奏でた。すると、彫像が回転し地下への階段に通じていた。
「こんな仕掛けが・・・・」
「ムムム・・・この先から邪気を感じる!フン!フン!フン!」 変なポージングをするモノノベ。
「いちいち、それをしなきゃならないのですか先輩?」
「これは、俺の霊力を高める行為。必須である。」
「ここから先は、ランタンが必要です。そこにありますので、お持ち下さい。それでは、行きますよ皆さん。」
サラサは、皆を連れ地下に降りて行く。
「結構、降りますね・・・」
「地下5階まで一気に降りますからね。」
地下5階に着いた一同。ランタンで照らし出される部屋は、閑散として幾つかの本棚がある程度だった。だが、異様な空気が漂っていることは、誰にも感じられた。
「君たちは、これ以上は近づかない様に・・・先程、除霊した物より遥かに強力な邪気を放っている。」
「フン!フン!フン!」 モノノベは、例の如く訳のわからないポージングをする。
「うおおおぉぉぉ・・・もっとだ!もっと!」 モノノベのポージングは続く。
シフォン達は、モノノベを冷ややかに見つめっていた。
「いつまで続くんだいこの儀式は・・・」
「納得行くまででしょ。」
「デモ、スゴイデース、センパイノ マリョクガ、イジョウニ タカマッテマス。」
「あれは、モノノベ先輩の魔力を高めるルーチンなんでしょうね。」 意味はわかりませんけど。
「うををおおぉぉぉぉ・・・・そうだ、それでいい!!」 モノノベはポージングを終了させる。
モノノベは、高まった魔力・・・霊力を収束させていく。荒々しかった霊力は、一片の揺らぎのない霊力へと変化していた。
「凄いことをしているんですけど・・・あのポージングのせいで台無しですね・・・」
モノノベは、ゆっくりと歩き出し、ある本棚へと向かう。
「あそこは・・・ミシェル=クランが残した封印魔導書の棚だわ・・・」
「封印魔導書・・・」
「危険すぎてミシェル=クラン自ら封印したとされている魔導書です。」
「されているって・・・それって・・・」
「誰一人、その魔導書を開くことすらできていないので・・・・ミシェル=クランが封印したってことにしたみたいですね。」
「それは、嘘ってことかい?」
「・・・・誰にもわからないから、嘘と言う訳ではないと言えるのです・・・」
「真実がわからないから、魔導書の価値を高めるため、そう言った設定が付け加えられたのでしょうね・・・」
モノノベは、本棚の前で止まると妙な構えをすると・・・
「フ~~~~~・・・シャウ!」 奇声を上げるモノノベ。
「あの~先生・・・今度は、写本じゃないので、破かないで頂けると・・・」
「大丈夫だ、問題ない。」
「モノノベ流陰陽術・・・斬る!」
「今、切るって言いましたよね・・・ちょっと待って下さい!」
サラサの制止も虚しく、モノノベは、手刀を繰り出した。
「シャウ!!」
魔導書は、一刀両断された・・・と思われたのだが、次の瞬間、瞬く間に修繕されたのだった。そして、逆にモノノベに魔導書の圧が襲い掛かる。
モノノベは、吹き飛ばされ、ズドーンと激しく壁に打ち付けられた。
「モノノベ先輩!」
モノノベは、気を失っていた。
ゆ・・るさ・・な・・・い・・・ぜっ・・たい・・・に・・・・
今度は、誰もが聞くことが出来た謎の声。
「なんなの・・・この声は・・・・」
「シルク、あんたが聞いたのってこの声?」
「ハイデース・・・」
魔導書が自由に動き出し、そして、具現化する幽霊。『始まりの司書カレン』。
絶対に許さない・・・あの男だけは・・・絶対に・・・・
「シフォンさん、どうする?さっきのヤツとは、別物よ。」
「モノノベ先輩の魔力は、尋常じゃなかった・・・それを、いとも簡単に退けてしまうあの魔導書・・・わたしたちでどうにかできるとは思えませんが・・・・」
「そうも言ってられないわよね。」
「サンニンデ、チカラヲ アワセレバ ナントカ ナリマース。」
「そうだ!伝言を頼まれていたんだった~。」 リチャードは、急に思い出した。
「伝言?」
「そう言えば、あんた、あの人と何か話していたわよね・・・・」
「又、あの人ですか・・・」
「エー ナンデスカ?ソノ デンゴンッテ。」
リチャードは、ジェイドとの会話の内容を話すのであった。