纏足
母は言った。
「女の子なんだからもっとオシャレをしなさい。」私は肯いた。
祖母が言った。
「女の子なんだからもっとツツマシクなりなさい。」私は肯いた。
姉が言った。
「女の子なんだからもっとカワイクしなさい。」私は肯いた。
大人達の買った服で大人達の言う場所へ通った。
周りの子が言った。
「あなたの服はオコサマね。」私は肯いた。ただ、肯いただけだった。
何年か経って大人になって、私は気がついた。誰かに決めてもらわなければ、自分は服を選ぶこともできないということに気付いてしまった。
いつから私を決めてくれた人が居なくなっていたのかはわからない。きっと気付くのが遅かったのだ。
何か決めないと、と思い目の前の洋服に手を伸ばした。しかし、私にはその後に何をすべきかわからず、しばらくそうしたまま固まっていると店員が試着室に入ってはどうかと助け船を出してくれた。
試着室の中で私は鏡に写った自分の白さに驚いた。
「女の子なんだから外でなくお部屋で遊びなさい。」そう言われていたことを思い出した。手に取った服は組み合わせもちぐはぐで不恰好だった。
私が試着室のカーテンを開けると店員はぎょっと驚いた顔をした。
「これ、ください。」私は小さな、しかし目一杯の声でそう言った。