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5 運命的な出会い

すみません、長くなりました。

あとあまあまな展開はまた次回のデート回2になります。

暫しお付きあいください!

今まで使っていなかった魔力を、1日で大量に使ったクレアフューナは歩く体力すら残っていなかった。

ラスフィードに横抱きにされ、寮の部屋まで送ってきて貰った。顔はラスフィードの胸に埋めたままで、誰とも顔を合わせることなく帰って来られたのには感謝しかない。

「クレア、ついたぞ」

「…ラスフィ、ありがと」

感謝の言葉を述べるも、顔を合わせることは出来なかった。1日付き合ってもらったのに、何も成果がなかったことで申し訳ない気持ちがいっぱいで、張り裂けそうだった。

「ラスフィ、パートナーやっぱり…無理だよ私には」

「クレア…」

「こんな落ちこぼれ、パートナーにしたら…皆からラスフィが何言われるか……」

顔を上げることなく、クレアフューナは言葉を続ける。

悔しい気持ち、申し訳ない気持ち。悲しい気持ち、だけど諦めたくない気持ち。そんな中、自分の我が儘でラスフィードを付き合わせることは、クレアフューナには出来なかった。

「…明日は、時間ある?クレア」

「……明日も授業休みだから、ね」

いわゆる土日である今日と明日は、授業は全て休みになる。しかしクレアフューナは、再び練習しに行こうと思っていた。

「なら、今日のお礼に…明日、クレアの時間をくれないか?」

「ラスフィ?」

「街に買い物に行こう。明日、9時に部屋に迎えに来る。今夜はもう寝るんだ、クレア」

ラスフィードは再びクレアフューナを横抱きにし、ベッドへ強制的に運んだ。布団をかけると、ラスフィードはクレアフューナの額にキスを1つ落とし、優しく笑いかけた。

「明日、楽しみにしているから」

そう告げると、ラスフィードはクレアフューナの部屋から出ていく。行く行かないの返事をすることなく出ていったが、もう行く気は満々なのだろう。そして、クレアフューナというと返事云々よりも、額にされたキスのことで頭がいっぱいだった。

前世でキスをしたことはあるが、それよりもドキドキしている。

「え、え…えぇぇぇぇ」


ーラスフィの、バカぁぁぁぁあっ!!


次の日。

あれからぐっすりと眠ったクレアフューナは、朝風呂に入り、出かける準備をしていく。昨日はラスフィードの時間を貰ってしまって、そのラスフィードが自分の時間をくれないかと頼むなら、断るわけにはいかない。

髪の毛をとかし、洋服を選び、少し化粧もして…どうしよう、私わくわくしている。クレアフューナは鏡に映る自分がにやけていることに気が付いた。記憶が戻る前のクレアフューナの休日はお菓子作りばかりで、買い物もそれ関係のものばかり。母からは可愛い服や化粧道具などを、寮に送られていたが使うことはなかった。

ちなみに、休みに作ったお菓子は食堂で売ったりしていたので、それなりの貯金がある。親からの仕送りもお菓子の材料くらいしか買わないので、貯まっている。

「…相性がいい媒体でも、買おうかな」

ラスフィードなら、見繕ってくれそうだ。そんなことを考えていると、約束の時間が近付く。クレアフューナは最終確認でおかしな箇所がないか調べる。姿見でくまなくチェックを重ねる。

しばらくすると扉を叩く音が聞こえる。自然と笑みがこぼれ出しているクレアフューナは、小走りで扉に向かう。扉を開けようと手を伸ばすが、その前にカーペットのしわに足をつまらせ、大きな音と叫び声をあげながら転んでしまう。

何が起きたのかと、ラスフィードは失礼を承知で扉を開け部屋に入る。そこには派手に転んだクレアフューナの姿が。

「…大丈夫か?クレア」

「うん、焦りすぎちゃった…」

「急がせたか?」

「そうじゃなくて……」

早く、ラスフィードに会いたくて…と言葉を続けようとしたクレアフューナは、顔を真っ赤にして何でもないと叫んだ。

そうじゃなくて…の続きが気になるラスフィードは、クレアフューナの顔を覗き込む。よく見ると今まで見たことのないおしゃれな格好、軽く化粧されていて今は真っ赤な顔。これはひょっとすると…

「…そんなに俺に会いたかった?」

「!!」

図星をつかれたクレアフューナは、顔から火が吹き出すのではというほど真っ赤にする。そんな肯定とも言えるクレアフューナの態度に、ラスフィードは満足そうな笑顔を浮かべる。

「怪我はない?クレア」

これ以上突っ込んで聞くと、買い物の話を無くされそうだと考えたラスフィードは、至って普通にクレアフューナに向かって手をさしのべ、立たせる。

「えぇ、ありがとう…ラスフィ」

どこも変になっていないことを確認すると、鞄を取りにクレアフューナは部屋の奥へ戻る。再びラスフィードのもとへ戻ってくると、行きましょうと声をかける。

クレアフューナの言葉に頷くと、ラスフィードはクレアフューナの手をとった。

「今日はよろしく、クレア」

「こ、こちらこそ…」

スマートなエスコートに、さすがは王子様だと感心し、クレアフューナはぎこちない様子でラスフィードの手を握り返した。


ー†ー


「何が見たい?クレア」

町へ出るとラスフィードがクレアフューナに聞いてくる。買い物に行こうと誘ったのはラスフィードなのに、なぜこちらに聞くのかとクレアフューナは首を傾げる。そんな様子に苦笑いを浮かべ、ラスフィードは話す。

「気分転換を兼ねて、俺がクレアと出掛けたかっただけなんだ。だから、クレアが行きたい所でいいよ」

それってデートじゃないのと言う叫びをどうにか飲み込み、クレアフューナは魔道具が見たいと答えた。余程昨日の練習が悔しかったのだろう。そう感じたラスフィードは、笑顔で肯定した。

クレアフューナは、ラスフィードおすすめの魔道具店に行きたいと話し、行きつけの店に案内した。そこは大通りからは離れている、小さな隠れ家のような店だった。

前世からこういう隠れ家のような店が好きだったクレアフューナは、テンションを上げて店内に入っていく。

「わぁぁぁ…ラスフィ!素敵なお店ね!」

満面の笑みを向けられ、今度はラスフィードが顔を真っ赤にする番だった。嬉しくて何も言えなくなったラスフィードは、ただこくんと頷くだけだった。

そんな様子を特に気にしなかったクレアフューナは、ゆっくりと店内を見て回る。杖や剣と言った一般的な魔道具から、コンパクトやブローチなどのアクセサリー型の魔道具と種類が豊富だ。

その中でもチョーカーと指輪のセットになっている魔道具に、クレアフューナは目を奪われた。

明らかに初心者向けではない魔道具ではあったが、その魔道具からは属性を感じることが出来なかったのだ。どうやら属性付きのものではないらしい。

「へぇ、チョーカーについている魔宝石と指輪の魔宝石がリンクしているタイプか」

「そうみたい」

「このタイプは、チョーカーの石に魔力を溜めて、指輪から発動させるものだから消費魔力は多い」

ラスフィードは丁寧に魔道具の説明をしてくれる。ほぼ初心者のクレアフューナには扱うのが難しいかもしれないが、直感的に選んだ様子を見ていたラスフィードは、運命的な出会いなんじゃないかと話す。

「媒体は大体直感的に選ぶと成功する。魔道具がクレアを呼んでいたんじゃないか」

「魔道具が…?」

クレアフューナは魔道具を見つめ、近くにいた店員に手に取りみてもいいか問いかける。店員の了承を得たクレアフューナは、そっとチョーカーを手に取った。

光の加減で色が変わる石は、どうやらオパールのようで属性的には万能に使える。ただ、初心者に向いている石はパールなので扱えるかは不安である。

しかし、クレアフューナはそれをつけ魔法を発動させている自分が、何となくだかイメージ出来た。その事をラスフィードに告げると、何かを感じ取ったのか店員を呼んだ。その間もその魔道具を見つめていると、自分の魔力と魔道具が互いに引き寄せあっている感覚に陥る。

呼んでいた、というラスフィードの言葉が理解出来るような気がした。

「ラスフィ、私これ…」

これを買ってみようと思うとラスフィードに告げようとしたクレアフューナが見たものは、ラスフィードが片割れの値札がついている方の指輪をレジに持っていく姿だった。

「ラスフィ!?」

「クレアにプレゼント」

してやったり、といういたずらな笑顔を浮かべ、ラスフィードはクレアフューナの手を取り店から出ていく。そして近くの噴水がある広場まで向かうと、そこにあるベンチに座るよう指示される。

クレアフューナは仕方なく座り、ラスフィードを見つめる。

「ちゃんと、お金払うわ」

「いらない。その代わり…」

ラスフィードはクレアフューナの左手を取り、手の甲にキスを1つ落とす。身体中の熱が顔に集まったように、顔を真っ赤にするクレアフューナをラスフィードは更に驚かす行動に出る。

ラスフィードが購入し持っていた指輪を、クレアフューナの左手薬指にはめたのだった。

「ラスフィっ!?そこは…っ!」

「あぁ、予約済みの証だ。クレア、お前は俺の大事なパートナーだ」

ラスフィードの言葉に、クレアフューナは動揺が走る。何故なら昨日、クレアフューナはパートナーを組むことを考え直した方がいい、むしろやめたほうがいいとも言った。

それなのに、ラスフィードはパートナーと言ってくれる。

「でも、私…落ちこぼれで」

「落ちこぼれがなんだよ」

「魔法が、使えなくて…」

「練習ならいくらでも付き合う」

「ラスフィに、迷惑がかかるよ」

「それでも、俺はクレア…お前がいい。俺の中でクレアとなら、何かすごいことが起きるっていってるんだ」

真面目な顔して、あまりにも説得力のない理由に、クレアフューナは笑い始める。急な展開はラノベでありがちだなと考えるが、もう自分もラノベの住人かなと開き直る。

「ラスフィ、きっと修羅の道だよ?」

「覚悟の上だ」

「ほんと、ラスフィ…バカじゃないの?」

「…バカに言われたくないな」

2人、顔を見合わせ笑い合う。昨日悩んで泣いたのがバカみたいだと感じる。落ちこぼれの自分でいいなら、とことん付き合ってもらおう。それがどんな未来になるのかは誰もわからない。だからこそ、選んでもらったからには一生懸命頑張ろう。

貰ったこの指輪にかけて、そしてラスフィードの為にも頑張ろうと決めたクレアフューナだった。

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