12 試験、開始!
1年以上放置してすみません…っ!
妊娠出産育児で、ようやく落ち着いてきたので亀更新で再開していきます。
「ん………っ、まぶし…」
昨日はカーテンを閉めないで寝てしまったから、朝日の光が直接体にかかる。
時計を見れば時刻は6時、いつも起きる時間だ。
朝食の準備をしようと体を左に返すと、そこにはラスフィードの姿が。
なぜここにいるのかと一瞬パニックになるが、すぐに昨夜の出来事を思い出す。
甘く優しい時間は、前世では味わえなかったもの。
「…気持ち、よかった」
ぽそっと声に出すと急に恥ずかしくなり、クレアフューナはラスフィードを起こさないようにそっとベッドから出て身支度をし、朝食の準備を始めた。
クレアフューナは気付いていなかったが、実はラスフィードは起きており、先程の一部始終を見ていたことはラスフィードの中だけの秘密にしておいた。
「ラスフィ、起きて」
朝食の準備をしている姿を見ていたはずなのに、ラスフィードは二度寝をしてしまったらしい。
目を開けると、エプロン姿のクレアフューナが顔を覗き混んでいる所だった。
目が合うと起きたと笑顔を浮かべながら言い、そっと離れていく。
朝ごはん出来ているけど食べられる?と聞いてくるクレアフューナに、ラスフィードは肯定で答える。
「ごめんね、ラスフィ。勝手に持ってきたコーヒー淹れちゃった」
「それは構わないけど…これ、クレアが全部?」
そこには生野菜たっぷり挟まったサンドイッチに、ベーコンエッグ、ミニグラタンにサラダと洋風の朝食が用意されていた。
寮生は食堂で食べる人が多く、自炊する人は殆どいない。基本的に学園生は貴族が多いので、それもあると思うのだが。
「うん、簡単だけどね」
当たり前とさらりと返すクレアフューナに、ラスフィードは驚いた。更にクレアフューナはポタージュもあるけど、いる?と聞いてくる。
ラスフィードはもちろんと答えた。
朝食を終え、制服に着替えるためラスフィードは一度部屋に戻る。
支度が出来たらまた迎えにくると告げ、部屋を後にしようとすると、クレアフューナに呼び止められる。
忘れ物かと思い振り向くと、クレアフューナから頬に口付けされた。
「…いってらっしゃい、待ってるね」
顔を真っ赤にしながら小さく呟くと、ラスフィードの背中をぐいと押し、部屋から追い出した。
あまりにも可愛らしすぎる出来事に、ラスフィードも顔を真っ赤にしながらその場に座り込んだ。
「可愛すぎるだろ…たくっ」
これは急いで戻らねばそう思ったラスフィードが、猛スピードで支度を終え帰ってきたことにクレアフューナが驚くのは、たったの5分後のことだった。
教室に入ると黒板に生徒達が集まっていた。
黒板には試験を行う順番と、対戦相手が書いてあった。
クレアフューナ達も皆にならい確認すると、一番最後で相手はやはりライトハルクとファイアリのペアであった。
やはり、余計なお世話を先生達はしてくれたのだ。
「…負けられない」
余計なお世話ではあるが、だからと言って逃げることは絶対にしない。負けられない、負けたくない。
意気込むクレアフューナの手を、ラスフィードはそっと握った。
暖かなラスフィードの体温に少し落ち着きを取り戻したクレアフューナは、ラスフィードに笑いかける。
「大丈夫、ありがと」
「クレア、俺がいる。…だから大丈夫だ」
「………うん」
しばらくして、生徒が全員登校し実技試験前に筆記試験の結果が渡される。
1人1人名前を呼び、結果の紙を渡していく。
「ライトハルク・クリスタル・ジークハルト」
紙を手渡され、結果を見ると少し残念そうな顔を見せる。今回も3位以内に入れなかったのだろう。いつもそんな時はクレアフューナがライトハルクのもとへ行き、お菓子を渡して慰めていた。
しかし、今回ライトハルクのもとへ行くものはいなかった。
婚約者のファイアリでさえも。
「ラスフィード・アメジスト・ファラン」
ラスフィードの名前が呼ばれ、クレアフューナはその表情を見つめる。まあまあかなと言いたそうな表情に、クレアフューナはほっとする。
ラスフィードは毎回3位であり、なかなか上には行けないが悪くはないとクレアフューナに話していたからだ。
「ファイアリ・ルビー・トロイメンツ」
ファイアリの名前が呼ばれ、自信満々に紙を受けとる。毎度1位をとっているのはファイアリだから、仕方はない。
「……うそでしょ、そんな!わた、くしが……2位っ!?」
ファイアリの言葉に教室がざわめく。入学してから常に1位だったのに、それを抑えた一位がいるということに。
「誰ですのっ!1位になった方はっ!名乗りでなさいっ!」
ファイアリの言葉に誰も反応を示さない。誰も名乗り出ないのではない、なぜなら1位ではないから。
「…え」
教室中の視線をクレアフューナは一気に浴びる。理由は1つ、名前が呼ばれていないのはクレアフューナだけだから。
「クレアフューナ・ジュエルアイズ」
「はいっ!」
「…次回からも頑張るように」
にこやかに笑う先生から手渡された結果には、全科目1位と書かれていた。
もちろん、誰よりも驚いているのはクレアフューナ自身だった。
クレアフューナは喜びの余り、ラスフィードに駆け寄りありがとうと叫びながら抱きついた。
ラスフィードは優しく抱き締め返して、クレアが頑張ったからだと甘く囁く。
「納得、いきませんわ…実技試験は必ず1位をとりますわっ!」
ファイアリはクレアフューナに睨みを利かせながら叫ぶ。
そうして、教室から飛び出していった。
ファイアリが出ていった後を追うのかと、教室中がライトハルクに注目がいったが、その姿は見られなかった。
『…クレアが、何故……っ!何があいつを変えた…』
-†-
「そこまで!」
実技試験は順調に進んでいた。身体の両肩両膝につけられたセンサーに相手の魔法や攻撃があたったら1ポイント、ペアのセンサーが全て当たればもしくは時間内にポイントが高かった方が勝者となる。
とはいえ、これは試験であり勝敗はさほど問題ではない。
魔法速度や的確な対応などの技術が評価の対象だ。
しかし、生徒の中ではその勝敗で賭けをしたりと楽しんでいる者もいた。
「…ききき、緊張してきた」
昨夜作っておいたクッキーを頬張りながら、緊張で身体を震わせるクレアフューナに対し、のんびりとクッキーを頬張るラスフィード。
「なるようにしかならないから、そう緊張するなよ」
「といっても…」
ラスフィードが笑顔を向け話しかけても、クレアフューナの緊張はほどけない。
口内にあったクッキーを飲み込み、コーヒーを口に含んだラスフィードは、飲み込むことなくクレアフューナに口移しで飲ませる。
そこに自分の魔力を乗せて。
たくさんの生徒がいるなかで口移しなんて、恥ずかしいことをと驚きを隠せないクレアフューナは、顔を真っ赤にしてラスフィードの名前を叫ぶ。
その様子を見たラスフィードは、満足そうな笑みを浮かべ、クレアフューナの名前を呼ぶ。
「緊張、しなくなっただろ?」
「あ……もう、ラスフィったら」
くすくすと声を出して笑うクレアフューナに、緊張している様子は見られなかった。
これなら大丈夫だろうと感じたラスフィードは、もう1枚クッキーを食べる。
すると、このクッキーからクレアフューナの魔力を少しだけ感じることが出来た。
すぐにクレアフューナに確認すると、何枚か試してみたとのこと。
「一応例の魔法をかけたから、うまくいけば発動しやすくならないかなぁって」
「まるで俺を魔法の媒体にするみたいだな」
そんなつもりはないのだが、そう囁くラスフィードがなんだか色っぽくて、クレアフューナは顔を真っ赤にして否定をしておく。
そんなやりとりを繰り返していると、ついに最終組つまりクレアフューナ達の出番がやってきた。
「いくぞ、クレア」
ラスフィードは左手をクレアフューナに差し出し、クレアフューナもその手をしっかりと握り返し、強く頷く。
試験フィールドに入ると、そこにはすでにライトハルクとファイアリの姿があった。
クレアフューナはその姿を見て、勝てるのかなと少しだけ不安になる。
そんな考えがわかったのか、ラスフィードは強くクレアフューナの手を握る。
「大丈夫だ、俺を…自分を信じろ」
「ラスフィ…そうだねっ!」
お互いにフィールドに立ち、媒体を用意する。
「降伏するなら今だぞ?」
「誰がするものか」
「ならば、叩きのめすまでですわ」
「絶対に、させませんから…っ!」
4人はにらみ合い、視線をずらすことをしない。
試験官も4人の様子を観察し、息を短く吸い声をあげる。
「それでは、試験開始っ!」
のんびり更新していきたいです。
よろしければまた読みにきてくださいっ!
新作を書き始めました。
こちらも亀なのんびり更新になるかもですが、よろしくお願い致します!
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