10 メイド イン クレア
すみません、今回短いです…(汗)
一通り授業を終え、クレアフューナは自習室へと急いだ。
自分が辿り着いた理論を確かめたくて仕方なかったのだ。
途中、別授業を受けていたラスフィードと擦れ違ったが、心の中で謝りながら自習室に入った。
上がった息を整え、左手を前に出し魔法を発動させようとすると、扉をノックする音がする。
鍵をかけていなかったので、どうぞと肯定の返事をかけるとラスフィードが中に入ってきた。
「どうしたの?あんなに慌てて…」
「ラスフィ…ごめん、ちょっと待ってて」
説明は後でとだけ話し、魔法を発動させる。
頭の中でたくさんの水をイメージして、魔力を放出させる。そして、自分が考えて構成させた呪文を唱える。
「彼のものを潤したまえ!アクアっ!」
すると、クレアフューナの掌にピンポン玉サイズの水球が現れた。
クレアフューナの理論が実証された。
「やっぱり…」
クレアフューナが辿り着いた理論は、自分の魔力は転生特典でチート級に多く、質も高い。しかし、その質が違うことで既存呪文では発動出来なかった。
そこで、丁度授業で呪文構成学をタイミング良く受けていたので、先生に構成のコツや基本術式でなくても発動出来るか、他にもオリジナルの呪文を作っていた人がいたかどうかなどを聞きまくった。
若干の驚きと不信感を向けられたが、そこはここ数日で身に付いたスルースキルを発動させた。
「クレア!お前…」
「あ、えと」
説明が先か、謝るのが先か。1人あたふたしていると、ラスフィードにぎゅっと抱き締められる。
驚いたような声でラスフィードの名前を呼ぶと、やったなっ!と喜びの声をあげた。クレアフューナはラスフィードの喜びの言葉に安堵したのか、感極まって一筋の涙を流した。
ー†ー
「魔力に呪文がついていかなかった?」
少し気持ちが落ち着いた所で、転生の特典でチート級の魔力をもったせいで呪文が使えなかったという所は隠し、ラスフィードに説明した。
その説明で納得してくれるか不安であったが、確かにクレアフューナの魔力量はすごいと言われていたし、そういうこともあるのかもしれないとラスフィードは自分なりに解釈し納得してくれた。
安堵の溜め息をそっと隠れてつくと、ラスフィードの名前を呼ぶ。どうかしたのかと首を傾げてクレアフューナの名前を呼ぶと、そこには真面目な表情のクレアフューナがいた。
「ようやく、スタートラインに立てました。どうか、よろしくお願い致します」
「改まらなくても、よろしくするさ。…それよりも、クレアが作った呪文もっと見せてよ」
「わかったわ!メイド・イン・クレアの魔法見ててっ!」
それから暗くなるまで魔法の練習をし、一通りの属性魔法を使えるようにはなった。
ただ、サイズはピンポン玉サイズからなかなか大きくはならず、やっぱり落ちこぼれだと落ち込むのだった。
「んー…なかなか落ちこぼれから脱出出来ないよ…」
帰り道、お菓子の材料を買いたいとラスフィードに言ったら町まで一緒に出てくれた。
サイズはどうであれ、属性魔法は成功したのだから落ちこぼれではないよとラスフィードは声をかけてくれる。
「ラスフィ、ありが…きゃっ」
ラスフィードに意識を向けすぎていたクレアフューナは、前から来る人に気付かずぶつかってしまう。
すみません!とすぐに謝り、ぶつかった人が落としたものを拾おうとしゃがむ。
「……え」
落としたものが視界に入った瞬間、クレアフューナは驚きを隠せなかった。ぶつかった人は落としたものを見られたくなかったのか、素早く拾い上げその場を去っていった。
「クレア、大丈夫か」
「あ、うん…私がよそ見してたから」
『…それよりも、あれは……っ』
15センチくらいの四角く平べったい物体、全面にヒビが入っていて使い物になるかわからないものではあったが、確かにそれは…
『…スマホ、だった?』
クレアフューナが御影双葉だった時に必ず持っていたスマートフォンにそっくりだった。
しかし、魔法媒体にそういうものがあるのかもしれないと思うことにし、ラスフィードの横に駆け足で戻る。
色々気にはなるが、だからといってどうするということでもないのでクレアフューナは忘れることにした。
「今の学生、スマホに反応してた気がしたが…気のせいか」




