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7.伯爵令嬢は招かれる





 王都って広いわね。





 辺境とかは、城塞都市になっているんだけど、王都は…… 王城の城下町がダダァ~~~って広がってるだけだったよ。 街を取り囲む城壁が無いだけでここまで開放的な街になるんだね。




 勉強になったよ。




 常に外敵に晒されれる、辺境とは大違いなんだ。 王都では辺境では滅多にみられないような売り物が、これでもかって、売られているんだよ。 馬車の中から見えたパン屋さんの棚にあった、フワフワな見た目の白いパン…… あんなの、超高級品だよ? 辺境じゃぁ。



 辺境領………… 御爺様は戦うって事に特化してるから、食生活はまぁ食べられるって感じだったし。



 マナーの勉強する時に銀製のカトラリーで、骨付きローストばっかだったしね。 あぁ、俗に言う山賊焼きだよ。 ロッテンマイヤー女史が最初の頃、頭抱えてたんだ。 レイヴンの仲間達が来てくれてからは、「まともなマナーの勉強」が出来る、「食事」って感じになったけどねぇ……


 衛兵さん達の装具だって、その辺歩いてる人達の服だって、みんな素敵なんだよ。 あんなの、お祭りの日くらいしか着れないよ…… 




 何もかもが違うよね。 ホントに……




 平和って、いいよね。 戦う以外の事に、注力できるもの。 辺境領の領都も、周りの村々も、その内、きっと…… こうなってくれるって…… そう、信じたいわよね。






 ******************************






 ランドルフ王国



 王都ハイランド 王城ガルガンティア宮




 其処が私達一行の向かう先。 国王陛下で在らせられる、ルードヴィック=フェールタール=ランドルフ四世陛下が居られる場所なんだ。 「 勅命 」で、呼び出されちゃったしね。 御爺様に直接お褒めの言葉か掛けられるんだって。 私はその横にくっ付いているだけって………… 一応はね。


 王城は流石に高い城壁に囲まれていたんだ。 でかい跳ね橋は降りっぱなしだったけど、戦時でもない限り、跳ね上がる事は無いよね。 城門辺りを観察するんだ。 まぁ、鉄壁では無いにしろ、十分固いと思う。 城門の死角を探って居る私の視線に気が付いたのか、馬車に同乗してくれているモリガンが言うのよ。





「お嬢様、きちんと調べてあります故、ご心配には及びません」


「それは……、逃走路? それとも襲撃路?」


「両方に御座います」


「あの跳ね橋は?」


「内部機構も含め解析済みです。 進撃開始から十五分で突破出来ますわ」


「人の作ったものだから? 初期侵入は?」


「ルート確保に十分、内部機構破壊に五分」


「……御城、丸裸なのね」


「御意に」





「眼」と「耳」に関しては心配してないけど、ここまでとはね。 この分で行くと、御城の隠し通路とか、非常用脱出路なんかも調べ上げてるって事ね。 まったく、優秀な人達だわ。 大人しく馬車に揺られて、御爺様と謁見の間まで行くとしますか。





「時に、お嬢様」


「何でしょう」


「今宵、お泊りになる御部屋ですが、すでにレイヴン、及び アレの手下により「掃除」済みです」


「安心して眠れましょう。 ありがとう」


「勿体なく」





 掃除済みって事は………… お部屋付の侍女さん達の身元とかも調べ上げているってことね。 ほんと、何処までも優秀なんだから。


 馬鹿デカい城門を潜り抜け、御城の入り口に到着。 御爺様の馬車と私の馬車、それに幾許かの荷を積んだ馬車三台が車寄せに横付けされたのよ。 馬車の扉が外から開かれると、其処は王城入口。 眼が潰れそうなくらい豪華なエントランスだったよ。


 そりゃランドルフ王国の顔だもんね。 ピッカピカに磨き抜かれた大理石の床とか、高い天井に煌びやかなシャンデリアとか。 もうね、ほんと、御威光って奴よ。 ここのメンテナンス費用で、多分辺境領の主要な街路の整備、全部賄えるんじゃないかなぁ…… ほんと、羨ましい事だ。



^^^^^^



 侍従さんに先導されて、謁見の間に向かうんだ。 約束の時間はまだ先。 控室に一旦落ち着くんだよ。 謁見の間の真向かいにある小部屋に通されたんだ。 いや、その部屋、小部屋って呼称したけど、御爺様の居城の一番デカい応接の間より、デカいんだ。 豪華なソファがデデ~~ンと置いてあったり、猫足のローテーブルの上には、上品な御菓子が並んでたり。


 白い漆喰が塗り込まれた壁は、何処までも真っ白だし、天上にはなんか天使さん達の絵画まで描かれているのよねぇ。 当然豪華なシャンデリアが、昼間なのに煌々と明かりを灯していたし…………


 重厚な深紅色のカーテンの向こう側の、レースのカーテンが窓からの光を受けて淡く輝いているんだもん。 もう、うっとりよ。 タッセルなんか金糸の組紐よ、金糸の!! いくらお金使ってんだか!!!


 御爺様に促されて、ふっかふかのソファに座るの。 あっ、これアカン奴だ。 体重載せる場所間違えたら、後ろにひっくり返る。 やべぇ~~~。 なんだ、これ? 着座と同時に、お部屋付であろう、侍女さんが、紅茶を入れてくれたんだ。 いい香りが、広がった。



 ん? これ、お高い奴だよ。 ちょっと渋めの…… 



 何処までも一級品揃えてんね。 軽く会釈して、美味しいお茶を頂いたんだ。 いや、参ったね。 ほんと、美味しいお茶だ。 淹れ方も完璧。 入れてくれた侍女さんに、ニッコリ微笑んでおいたよ。 マナーの一種だけどね。 ちゃんと、そこらへんも見られている感じがするんだ。 値踏みされている? そんな感じ。


 こりゃ、いいね。 ロッテンマイヤー女史のマナー講座の実践的試験会場っていう訳だね。 いいよ、最高点叩き出してやるから!! そこからは、まぁ講座通りに、大人しく、淑女的に、御爺様とお話したり、調度品について語り合ったりして時間を潰したんだ。





「お時間に御座います、辺境伯様、お嬢様。 謁見の間を開かれますので、お越しください」


「相分かった」





 侍従さんが呼びに来てくれた。 さて、これからお初に御目にかかりに行きましょうか。 未来の舅様と姑様にね!





******************************






 静々と歩を進めて、謁見の間に入る。 礼典則通りの動き。 玉座の前方に進む。 今の場合、辺境伯たる御爺様の右斜め後ろに位置取るのが正解。 私一人の場合は、入口の扉から十歩で淑女の臣下の礼を取りひたすら御声が掛かるのを待つんだけどね。


 で、玉座からニ十歩くらいの距離で御爺様が止まる。 そんで臣下の礼。 私もそれに続くの。 まぁ、此処までは問題ないよね。 


 玉座の両側に居並ぶのは、ランドルフ王国の高位貴族の方々なのよ。 煌びやかなお衣装ね。 宰相閣下、財務長官閣下、将軍閣下、外務大官閣下、大僧正様…………


 レイさんの御伽噺、思い出しちゃったよ。 この方々の二男様、三男様って、 ” お姉様 ” の事を気にかけておられる貴人の方々。 そして、ハリーストン殿下第四王子の側近だとか…… 此処には…… 居ないね。 


 子供だからか? 王族はそうそう表には出てこないからか?  まぁ、いいか。 この場は、御爺様の慰労だからね。 頭を垂れながらも、辺りの様子を伺ってると―――





「ランドルフ王国、ルードヴィック=フェールタール=ランドルフ四世陛下がおいでになります」





 声を張った侍従さんの言葉。 ほぅ…… やっと、お出ましだね。 衣擦れの音が耳に聞こえる。 複数人数の気配。 優し気で、威厳に満ちた御声が掛かったの。





「オーベルシュタット辺境領、リンデバーグ=フォン=エスパーニア辺境伯爵 大儀であった。 アントーニア王国のランドルフ王国への侵攻を良く止めた。 紛争の報告は受けた。 此方の準備が整うまで時間が掛かった。 その間に撃退するとは、あっぱれである。 白戦鬼が健在だと、改めて思ったぞ。 アントーニオ王国との和平交渉も結んだと、外務卿より報告があった。 オーベルシュタット辺境に平和をもたらすものと、そう納得した。 よって、エスパーニア辺境伯爵には褒美を取らす」





 朗々とそう言葉を紡がれる国王陛下。





「有り難き幸せ。 王国の藩屏たる、エスパーニア辺境伯爵家といたしまして、光栄の極み。 謹んでお受けいたします」


「うむ。 かんばせを上げよ」





 陛下の声にこたえて、顔を上げるの。 御爺様だけ上げろって事じゃないよ。 伺候した私も一緒にね。 だって、呼び出したの、国王陛下の方だもん。 間違いないよね。 この辺の遣り取りは、ロッテンマイヤー女史にレクチャー受けてるものね。


 宰相閣下が、紫のクッションみたいなモノを捧げ持って来たんだ。 上になんか乗ってるね。 宝飾品か、短剣か、まぁそんな所だろうね。 戦費は賄って呉れなさそう……  あっちから捥ぎ取ったから、いいけどさ。


 御爺様が前に出るの。 宰相閣下無表情で、御爺様の前に紫のクッションを差し出したんだ。 ちらっと見えた。 短剣だった。 色んな宝石がくっ付いた、実用性皆無な奴。 褒美として取らせるって事ね。 儀式的な物よ。





「王家の宝物である、『護国の短剣』を、下賜される」


「有り難く頂戴申す」





 宰相閣下の言葉に、御爺様が応えるのよね。 バチバチって音が聞こえそう。 そう云えば、今回の紛争で、王国の助力を請うた御爺様の前に立ちはだかったのが、この宰相閣下だったんだ。 国庫がどうの、準備がどうのって、その上、根回ししてた、周辺の辺境伯家に対して、なにやら要らん事を吹き込んだらしいんだ。 結果、周辺のお家からの合力も当てに出来なかったってね。


 なんにしろ、エスパーニア辺境伯爵家の力を削いでやれって意思を感じるのよ。 馬鹿ねぇ…… そんな事したら、王国本領丸裸になるのにねぇ…… 文化的な生活が送れるのは、戦乱の気配が近くないからなのに…… 平和ボケって奴かしら。 国内の権力闘争にかまけてたら、外敵に狙われるわよ? 対外勢力に対しての抑止力な辺境伯爵家の力を削ぐって………… 




 ほんと、馬鹿…………




 恙なく、戦勝報告は終わったの。 さて、貰うもの貰ったし、帰ろうよ。 辺境領に…… って、だめか。 もう一つの目的が有るもんね。 王家には。





「エスパーニア卿よ、そちらの娘がフリージア=エスト=フルブランドなのか?」


「左様に御座います、陛下。 我が孫、辺境領の子、フリージアに御座います」


「そうか…… この場には、ハリーストンが居らぬ。 あやつは、学園にての要職が在る故な」


「残念に御座いますな。 我が孫は筆まめでしてな、よくハリーストン殿下にしたためております故、心は通わせておると、愚考しております」





 なんでか、国王陛下の隣に座ってた、王妃殿下がちょっと引いてた。 何となく事態が見えたよ。 わたしのお手紙は、誰かが止めてんだね。 いいよ、別に。 見たことも無い婚約者さんへの義理は、お手紙だけなんだしな。 こっちからの歩み寄りの証拠って奴だよ。 相手に届いて無いって、確信が持てた。 御爺様の揶揄が、効いたね。


 直接お話する御許可を頂けなかったから、臣下の礼を尽くして、御爺様と謁見の間を退出したんだ。 ふ~、緊張したぁ~ 礼典則上、なんら問題は無いよね。 よし、今夜を乗り越えれば、辺境領に帰れるぞっと! 侍従さんに連れられて、用意されているお部屋に向かう。 あとこの御城で行われるのは、晩餐会だっけ?


 そこで、王子様と引き合わさせるのかなぁ…… まぁ、そんな感じだろうね。 





「フリージア、王城はこのような有様だ。 気を引き締めて行け」


「はい、御爺様。 なにかしらの揶揄や、侮りはあると思いますが、辺境領のみなの為にも、無様は晒せません。 お気遣いありがとうございます」


「うむ…… 継嗣の定まっていない、エスパーニア辺境伯爵家…… 色々と言って来ような」


「やはり、御父様を継嗣にはされないのですね」


「出来る訳なかろう? 辺境領に一度も足を踏み入れない男なのだぞ? あの地に根差した男が良いのだ。 フリージアが良き婿をとって、盛り上げて呉れたらと思う事いかばかりか。 それを、あの王太后様がな! お前をハリーストン殿下の嫁にとゴリ押しされてな…… 古き約定を持ち出されたのだ。 忌々しい事に、その約定はまだ生きて居ったのだ。 すまぬな、お前が男児ならばと、言った事があったな。 あれは、そういう意味も含んで居ったのだ…… けっして、お前を軽んじた言葉では無い」


「御爺様…… フリージアは良く判っております。 判っておりますとも」





 長い廊下を侍従さんに連れられて歩く私達。 お部屋の方にはきっと、レイヴンたちが待っているね。 



 今夜の晩餐会っていう戦場。



 レイヴンたちが持ってくる情報が私の武器。



 さて、どこまで、戦えるかな。



 変な言質を取られない様にしなきゃね。





 気を引き締めて、頑張ろう!!!






暑いですねぇ~


暑中お見舞い申し上げます~



物語の再加速中です。 され、フリージアさんの戦いの場は、王都、王城内と成りました。 


次回、晩餐会での出来事、乞うご期待です!

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