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6.伯爵令嬢はお家に帰る

誠にすみません!


セーブしたつもりでした。 どうも、その前の物が更新されてしまったようです。


まともな方をUP 致します。

 






 和平交渉は、滞りなく終わったんだ。








 よかったよ。








 あのスクロール巻物の情報がちゃんと確認できたんだ。 レイヴンが集めた情報なんだから間違いは無いんだけど、ちゃんと見つけらるかどうか、ちょっぴり不安もあったんだ。 でもちゃんと見つけてくれたらしい。 




 あの迷宮はアントーニア王国の持ち物になる。 いや、デギンズ殿下の持ち物かな? まぁ、その辺はあっちの事情とか政治とか絡んで来るから何とも言えないし、もう向こうに渡しちゃったんだから、私達がとやかく言う事は無いもんね。




 セレベス高原に居る遊牧民の方々との交易もちゃんと認められたし、和平条約文書の中にもきちんと明文化してあるから、横槍入れられる隙はないよね。 大丈夫さ、問題は無いよね。 








 やっと肩の荷が下りたよ。








 私達は、ココでやっと、サナトス城塞から領都クナベルに向けて旅立つことが出来たんだ。 やっとね。 街道を行き交う人々の表情も明るいし、畑の作付けもうまく行ってるみたい。 ほら、例の物語の中じゃ、今頃この領都周辺にまでアントーニア王国軍が迫ってて、逃げ惑う女性と子供達、必死の形相で手に武器をもって、来たるべき敵に立ち向かおうとする男の人達で、殺気立ってたって所かしら。




 ほんと、平和が一番よ。










 《ねぇ、レイさん、聞こえる? そして、見えている?》




 《ええ、勿論。 楽し気に行き交う人々。 親しみを込めた挨拶を送って来る領民の人達。 この笑顔を護りたかったんでしょ、フリージアは》




 《そうなの。 判ってもらえる? これ以上の幸福って無いわよね。 ホントに良かった》




 《貴女の頑張りが、この光景を作り出したのよ。 誇ってもいいわよ》




 《やだなぁ、レイさん迄、そんな事を…… みんなで頑張って、皆で捥ぎ取ったんだよ、この光景は。 だから、みんなが誇らないといけないと想うのよ》




 《貴女って人は………… でも、そんなフリージアが大好きよ》










 馬でさ、領都に向ってんだけどね。 風が頬を撫でるのよ。 心地いい風なんだから。 流石にロッテンマイヤー女史は馬車移動なんだよね。 淑女教育のお陰で、今は騎兵じゃ無く、お嬢様として横座りしてるお陰で、周りが良く見えるのよ。




 両脇には、いつも通り、エルクザード腹黒さんと、マエーストロ脳筋さんが付いてくれている。 お日様は高いけど、そんなに暑くない。 まるで、ピクニック気分ね。 凱旋御一行様とは思えない位質素だけど、其処がいいんだ。 私達が帰り着いたって事は、紛争が完全に終結したって事だもんね。




 領都クナベルは、そう大きな街じゃないんだ。 でも、この辺り…… いえ、辺境伯領の中では一番大きな街なのよ。 整備が遅れている街道とか、治水とかはまぁ問題なんだけど、でも、やっと帰って来たって感じがするね。








  お家だよ。  お家。








 辺境伯のお屋敷だから、お家呼ばわりするには、ちょっと大きすぎるんだけど、まぁね、そこんところは、腐っても辺境伯だからね。 賠償金もちゃんと貰えたし、一息つけるよ。 辺境伯が自由に使えるお金じゃないけどね。 前で騎乗してた御爺様が、スルスルと横に来た。










「フリージア、此度の事…………」




「皆様の頑張りお陰ですね。 御爺様の御活躍も凄かった。 フリージアとても嬉しいですわ。 なにより、御爺様が健勝に御帰還された事が」




「そ、そうか…… うむ、儂もお前と無事に領都に戻った事が嬉しいぞ。 それでな、すまぬな……」




「何を言われます?」




「いや、デビュダントの事だ。 王都の王家主催の舞踏会だったのにな……」




「それどころでは御座いませんでしたわ。 御爺様は、御爺様の為すべき事を為されたのです。 わたくしの事は、良いのです」




「い、いや、そうは云うがな…… フリージア、お前、ハリーストン殿下と御会いした事は無いのであろう? この機会にと思って居ったのだが……」




「政略結婚ですので、嫁ぐ前日まで、お相手を見る事もございますまい。 ……ちゃんと、お手紙は書いておりますわ。 週に一度は、時候のご挨拶も兼ねまして、こちらの様子とかを綴っておりますわ。 御心配には及びません」




「…………返事が返って来た事は無いのだろう?」




「…………お忙しいのですわ、きっと」










 思案気に、遠い目をする御爺様。 ちゃんと、手紙書いてるよ? この紛争の前にも、王家主催の舞踏会に出られそうにない事も、御爺様の援軍要請の口利きも頼んだよ? 返事無かったけどね。 そんなもんさ、この国の中央は、辺境領なんて目に入ってないもの。 まして、ほら、例の御伽噺が王都では進行中って、レイさんも言ってたもの。




 多分、あちらでは、見た事無い ” お姉様 ” が、王都の高位貴族さん達が通うフルリンダル学院で、ハリーストン殿下にチョッカイかけている頃ね。 私が王都に居ないから、どうなってんのか、判んないけどね。 それにさ、もう、本当に長い間、御父様を見てないから、どんな方だったかも、覚えてないんだ、実際の所ね。




 三歳で御爺様の御領に来てから、十五歳までの十二年間、一度も此方においでになった事無いのよ? 私の生活費を送ってくることも、ドレス一枚、宝飾品一個、文房具とか、身の回りの物も、なにも送っては来られなかったのよ、なんにもね。 貴族籍の名鑑には、ちゃんと私の事は、フルブランド伯爵令嬢として、記載されているんだけどね。






 何だか、私自身、良く判んないよ? 一体私が誰なのか。






 まぁ、レイさんから教えて貰った、御伽噺の筋からすると、この紛争でエスパーニア辺境伯は滅亡する筈で、私の強力な後ろ盾は全て失われたって事になってんだよ。 どうすんだろ? これ?








 《ねぇ、レイさん。 王都の話はまだ生きてるって言ってたでしょ?》




 《ええ、そうね。 もう、御伽噺のような事は起こらないと思うけど、でも、フリージアを排除しようって動きは残ってるかもしれない。 それが気掛かりなの。 もし、その御伽噺が何らかの強制力を持っていたら、まず間違いなく、貴女を排除しようとするでしょうから》




 《えぇぇ…… でも、どうやって? 私はフルブランド伯爵家には三歳から一度も行ってないのよ》




 《……情報収集が必要ね。 貴女には遠くまで見える「眼」と、良く聞こえる「耳」を持ってるんでしょ?》




 《そうだった! うん、そうするよ。 レイさんありがとう!》




 《どういたしまして》








 穏やかに、領都クナベルの辺境伯居城に着いたよ。 まぁ、お家って言ってたけど城よね。 ほんとに城。 城門にはちゃんと衛兵さんが立ってるし、中庭には噴水迄有るんだよ…… いつ見ても馬鹿デカいよねぇ。 




 エントランスホールに入って、お屋敷つうか、御城の使用人さん達が総出でご挨拶。 御領主様の御帰還を、みなさま心待ちにしていたんですものね。 安心感が違う。 御爺様は、王国最強の誉れ高い白戦鬼様ですものね。 そんな御爺様にくっ付いて、御城の中に入ったんだ。




 久し振りの自室。 必要最低限の調度は、いつも落ち着くよね。 色合いにしても、華美な感じしないし。 ホッと一息つけるよ。 装束を解いて、メイドさん達が準備してくれた部屋着のワンピース姿になるのは、いつもの事。 




 なにせドレス姿は、結構疲れるんだ。 ロッテンマイヤー女史には、何時も臨戦態勢で居ろって言われるんだけど、このお部屋の中だけは、自由にさせて貰ってるんだ。 ほら、ずっと息を詰めている事なんて、出来っこないでしょ?










 ******************************










 さて、お風呂でも入って、私宛に来た手紙でも、整理すっかなぁ~ なんて、思ってたらミネーネ侍従長が珍しく私のお部屋に来られたんだ。 白髪がメッシュみたいに見える、赤い髪のナイスミドルなオジサマなんだよ。 物腰柔らかいんだけど、私は知ってる。 この人、元、御爺様の副官。 戦場の赤鬼。 赤い髪は屠った敵の血の色とか言われちゃうくらいの、剛の者なんだ。




 柔らかな物腰に、初見で騙される人、多数いるよね。 まぁ、あとで後悔の臍をかみちぎるんだけどね。








「お嬢様。 お疲れの所申し訳ございません」




「何で御座いましょうか、ミネーネ様。 侍従長自らお越しになるとは、なにか重大な事でも有りましたのでしょうか?」




「はい、お嬢様。 実はこれが王都から参りました」










 手渡されたのは一通の書状。 上等の羊皮紙に、王家の紋章が金箔で捺してある奴。 あぁ、やべぇ…… これ、勅命だ……










「御爺様はご存知ですの?」




「はい、御当主様より、お嬢様にお渡しせよと」










 羊皮紙に書かれている内容は、御爺様に王都、王城に伺候せよって事。 この度の紛争を収めた事に対する褒賞とか慰労とかするんだとさ。 まぁ、そうだろうね。 外敵を蹴散らかしたんだもんね。 そんで、いつも通り、辺境伯の権限で戦後処理もしちゃったもんね。




 まぁ、今回は和平条約も結んじゃったし、一応はお褒めの言葉を出さないと、王国としてもカッコ付かないもんね。




 で、なんで、その召喚状に私の名前が書いてあるの? 御爺様と一緒に来いって事? 戦闘報告には、私が軍の一部を率いた事とか、まして、騎馬突貫した事は書いてないよ? …………顔を見せろって事かな?










「先日行われました、王家主催の舞踏会に御欠席に成られました故の処置と…… 第四王子様の御婚約者として、国王陛下、王妃殿下、王太后陛下への御目通りとご挨拶が目的かと」




「なるほど。 判りました。 あちらでの滞在は……  フルブランド伯爵家ですか?」




「……それがですね、お嬢様……」










 皆迄言うな。 受け入れが出来ないとか、準備が出来ないとかって理由で、どっかのホテルにでも泊まれって言われたんだな。 結局は要らない子だからな!










「王城一室をご用意されるそうです」










 はぁぁぁぁ? 一介の伯爵令嬢に、王城の一室を宛がうの? マジで? なんで? 馬鹿じゃないの? えっ、それとも、首実検? 私が第四王子の隣に立っても問題が無いかどうかの確認の為? どっちかって言うと、そっちな気がするね。 一度もお目見えしてないんだし、見極めようってな思惑もあるんじゃなかろうか?




 本来なら、王家主催の舞踏会でのデビュダントで見比べる心算だったんだろうね。 国境紛争があっても、辺境伯がどうとでもするから、私を王都に送って来ると思ってたんだろうねぇ…… 御爺様の再三に渡る陳情を無視してたのにねぇ…… こっちの状況見てなかったんだねぇ……








 田舎の礼儀の成ってない伯爵令嬢に躾を施す心算なんだろうねぇ……








 よし、いくさだ!! ロッテンマイヤー女史に磨きをかけて貰おう!! まだ、王城に行くまでには、時間がある。 それと、情報収集だ! いつもお願いばっかりだけど、またレイヴンにお願いしよう。 繋ぎは、いつも通りモリガンにお願いしよう!




 護衛は、エルクザード と、マエーストロ にお願いしようう。 最低限伯爵家相当。 旨く事が進めば、辺境伯孫娘って事で、辺境伯爵家相当の装備と人員で固めよう! 御爺様に、そうお願いしよう。 うん、そうだね。 どうせ、御父様はなんにもしてくれない筈だもんね!










「了承致しました。 御城に向かう日まで、ロッテンマイヤー女史にご指導を受けたく思います。 よろしくお願いします」




「御意に」










 辺境伯領 領都クナベルに到着したその日に、次の戦いが始まるとは、思ってもみなかったよ。 どこまでも、続くね。 宜しい、私の行く道は闘争の道。 生半可な思いでは生き抜く事すらままならない。 では、覚悟を決めて突き進むことにしましょうか。








 優雅に、華麗に、したたかに!!!










 ~~~~~~~~~~~~~~~~~










 レイヴンは、妙に上機嫌で出て行ったんだ。 金色の目がキラキラしてた。 なんでか判らん。 ロッテンマイヤー女史の授業の合間にモリガンに聴いてみたんだ。




「モリガン、なぜレイヴンはあんなに ” やる気 ” を、見せていたのでしょうか?」




「お嬢様、レイヴンはお嬢様の目となり、耳となる事を楽しんでおりますのよ? 普段、お嬢様のお願いされる事は、彼にとっては片手間以下の事。 今回は全力を以て事に当たれると、そう思っている筈です」




「そう……なの。 そういえば、モリガンも言葉遣いが変わりましたね」




「お嬢様、わたくしとて、お嬢様の御側使いと成りました故、相応の礼法は納めます。 ロッテンマイヤー様より、薫陶を頂いております」




「苦労を掛けますね。 ありがとう」




「勿体なく」




 ふたりで顔を見合わせ、ちょっとクスッとした笑いを浮かべる。 まぁ、そうだよね。 そうなるよね。 側付きの侍女って態にしておいた方が何かと便利だしね。 王都に行くまであと二週間。 その間はロッテンマイヤー女史に更なる礼法の特訓を付けて貰っているの。 御爺様のメンツ潰さない様にしなきゃね。 




 だって、王妃教育、公爵夫人となる為の教育を、こっちでするって事を王家から捥ぎ取って来てくれたんだもんね。 




 さて、気合を入れ直して、ロッテンマイヤー女史の御到着を待つことにするか!!!









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