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29. 辺境伯令嬢の戦いの結末



 


「これは、これは。 辺境伯令嬢でしたな。 私は、モリアーティ=ドルド=レーベンハイム侯爵と申す。 さて、この凶行のご説明をして頂こうかな?」




 出たよ。 コレがこの侯爵の嫌らしい所なんだよ。 最初に最高指揮官出て来いって、言ったのに出て来やしない。 ハリーストン殿下が、ビビりながらも声を上げたから、それに乗っかったって事だよ。 自分は最高指揮官では無いが、大人でこの場における最高権威を持っているものだと言いたいわけだ。


 で、私が最初に、説明しろよって言ったもんだから、その御返しとばかりにね。 これで、私が根拠無くブチのめしたって言ったら、こいつそこから何処までも、追及して来るぞ? 最悪、御爺様への責任問題にまで発展する。 


 だから、こっちに非は無いって言わなきゃなんないのよ。




「モリアーティ=ドルド=レーベンハイム侯爵閣下。 フリージア=エスト=エスパーニアに御座います。 どうぞよしなに。 さて、レーベンハイム侯爵の、ご質問の儀に御座いますが、わたくしは先程わたくしの立場を表明しております。 それで、全てがご説明になるかと?」


「はっ! 辺境軍の指揮官が、本領王都での凶行! これの何処が説明に成るのかね?」


「侯爵閣下には御存知かと思いますが、辺境軍の指揮命令系統は、辺境伯に一任されております。 また、その指揮権は本領内でも独立しており、よく本領軍と足並みを揃え、外敵から御国を護ると、軍規にございますわ」


「ならば、何故、本領軍と行動を共にしない」


「現在この場所には、本領の軍はいらっしゃいません。 何故なら、わたくしが呼び掛けた、この場所に居られるやも知れなかった、本領軍最高指揮官への呼びかけに、ハリーストン殿下が御答えに成りました。 侯爵閣下の言われる凶行とやらは、我が領の、そして、わたくしの大切な者に対する明確なる殺意を持った攻撃により、統一軍法に置ける、《 緊急対応条項一条一項 》に該当致します」


「ほう、よほどその侍女が大切とお見受けする」




 嫌な笑いを頬に浮かべるのよ。 侍女を助けるために軍を動かすなど、非常識と言っているんだね。 まったく! 本当に私達の事を、調べても居ないんだ。 普通、調べるだろ? 当人だけでなく、取り巻いている者達の事もね。 余ほど軽んじているか、どうでもよいと判断してるかだね。 じゃあ、理由を言ってやろうか!




「ええ、とても大切な人ですわよ、モリガンは。 この侍女は、この国の者では御座いませんもの」


「なに? 外国人か? 外国籍の庶民を、緊急対応条項を使ってまで? 辺境とはなんとも不可思議な所ですな」


「あら、本領では国賓並みの方に対して暴虐を働く者を、みすみす逃すのですか? はて? 本領の外交は如何どうなっているのでしょう? モリガンは―――、ローレンティカ帝国、皇帝陛下の信認厚いエデュケット家の重鎮にして、わたくしの師でもある、ロッテンマイヤー=フォン=アフト=エデュケット女史が、()()()と皇帝陛下にお願いして付けて下さっている方なのですよ? 更に彼女は臣民であると共に、「九ノ宮」家の御身内。 彼女の事、何もお調べに成らずにお呼びに成ったのですか、フルリンダル学院の方々は」


「そ、そのような高貴な方を、お前の侍女に? 何故だ」


「御爺様にも、ロッテンマイヤー様にも、愛されておりますから。 出来る限りの教育をと、御爺様がローレンティカ帝国に掛け合って下さったのです。 「九ノ宮」の末姫で在らせられる、エレノア御婆様の、御関係者なのです。 なにか、問題でも?」


 そうだよ、私が軍権を振り回したのも、それが理由。 万が一、モリガンに怪我でも負わせたら、この場に居るすべての人の首が飛ぶんだ。 私も含められるかもしれないけどね。 その前にレイヴンが止めに入るけどさ。 一応、何重にも安全対策は取ってるんだ。 とった上で、相手から手を出してもらうように仕向けたんだよ…… 対処は私がするってね。 周囲のお馬鹿さん達に、判ってもらえるように、もうちょっと説明しとくか! はぁ、面倒だなぁ……




「わたくしは、この場に居られる皆様の命も一緒に御救いしたつもりでしたのに…… 万が一、モリガンが怪我でも負う事にでもなったら、一大事ですわ。 我が国の「庶民」が、殺意を向けたという事でさえ、帝国側に知れれば、この場に居る皆様の「 御命 」もアブナイ所でしたもの。 ―――そう云えば、本日、国王陛下は、ローレンティカ帝国「一ノ宮」家の御使者で在らせられる、ライオネス=レオン=シンガーデリクト卿と、ご歓談に成っておられるとか…… エスパーニア辺境伯様に任じられている指揮官職をもってして、暴虐に対し速やかな対応を致しました。 なんとか、これで、ランドルフ王国の体面は、保てたと、存じ上げますの」




 何人かの高位貴族さん、理解したみたい。 顔色がザッって青白くなったもの。 あれは、きっと、外交関係の役所の法衣貴族さん達だろうね。 今になって、自分達が全く私達に関して調べていないって判って、どうするの?  


 一瞬だけど、レーベンハイム侯爵閣下が、苦虫を一気に五匹くらい噛み潰したような顔しやがったよ。 これで、私が何故「武力」を用いて、あのバカ(ミストナベル)を排除したか、理解したよね。 法的根拠あるんだよ。 それに御国の外交に対する ” 相応の対処 ” って事でもね。 こいつの言う、” 凶行 ” ってのは、ミストナベルの暴発に対する ” 緊急避難的な対処 ” って事なんだよ。


 じっと、相手を見つめるの。 視線は外さない。 表情が読めるよね――― ” この線は無理か ” って顔に書いてある。 私に読めるくらいの「表情」なんだよ、笑えるよね。 コレが、自称 この国一番の権威を誇る  ” 侯爵閣下 ”  なんだよ? どうかしてるわよ……




「それは、それは…… そのような高貴な方であったとは! あ奴のやった事は、大変な事に御座いましたな。 ―――出来れば事前に、そのような高貴な御方で有るとお教え頂ければよかったのですが」


「モリガンは今、わたくしの侍女をして下さっております。 が、しかし、秘密にはしておりませんわよ? ご招待頂いた時に、きちんと ” 同道致します ” と、お返事を差し上げておりますわ? そちらの手落ちとしか、思えませんわ。 こう言った公式の行事ですので、敢えて(・・・)上座に座ってもらいましたのよ? お分かりなりませんでしたの?」




 トカゲの尻尾きりやがった。 でもさ、追撃喰らわせておくよ。 これで、全面的にそっちが悪いって事に成ったんだ。 さて、次はどうする? 恫喝か? それとも……




「なるほど、良く判りました。 とんだ失礼を申し上げて、深くお詫び申し上げます。 ―――見るに、辺境伯令嬢たる、フリージア様に置かれましては、随分と質素な御姿に御座いますな。 王都の社交界では見る事も無いようなドレス…… やはり、辺境領は相当に…… 質素に御座いますな。 そう云えば、先程、辺境伯令嬢に置かれては、王都の法衣伯爵令嬢の貴族籍を剥奪されたように御座いますな」


「ええ、そのようですね」


「どうでしょう。 私がフルブランド法衣伯爵に取り成し、貴女を正式(・・)に法衣伯爵の娘御となる様に力に成りましょうか?」




 ド田舎の貴族の爵位よりも、本領の爵位の方がありがたみが有るって思ってんのか? それとも、辺境領が貧乏で、満足にドレスも誂えないって言いたいのか? 本領の貴族籍を復活させてやろうって言いたいのか? 馬鹿にしてるんだね。 蔑んでるんだね。 よし、判った。 




「先程機会が御座いまして、フルブランド法衣伯爵様とお話させて頂きました。 フルブラント法衣伯爵様に置かれましては、我が母アメリリアを愛人となし、わたくしは認知されず、母の私生児とし、十四年前に辺境に捨てたと、申されました。 その方の家名を名乗るですか? それは、それは、なんと慈悲深い……」




 冷たいジト目で、候爵閣下を見詰めてあげるの。 ちょっと威圧しとくね。 逃げんなよ! 何が悲しくて、そんな目に合わされなきゃならないのよ。 あの人自身から、辺境に捨てた子って、言われたよね、私。 それを仲介して、仲直りさせてやる? 何を言ってんだ、こいつ……




「わたくしは、その事を先程、知りました。 母、アメリリアの婚姻が無効であった事。 わたくしが私生児扱いであった事。 わたくしの法衣伯爵家の貴族籍が抜かれている事も。 未成年者とは言え、何も教えられておりませんでしたので、本日 先程迄、ずっとフルブランド法衣伯爵家の家名を名乗っておりましたの。 無礼で御座いましたわよね」


「だから、私が口添えして!」


「……御爺様の執務室の壁に一枚の申請書の写しが御座いますの」


「っ?」


「御爺様は初孫が生まれ来た事を大層お喜びで、生まれて来た女児の出生届の写しを取られ、壁に飾られておられますのよ? そこには、父としてフルブランド法衣伯爵の御名前、母としてアメリリア様の御名前、そして証人として、御爺様の御名前と、フルブラント法衣伯爵の御父上の御名前が記載されておりますの。 承認番号も、受付署名も…… 」


「な、ならば、お前は!!」


「それが有る限り、わたくしは、フルブラント法衣伯爵家の娘だと信じておりました。 愛人が生んだ子の認知届を、いくら探したところで御座いませんわ。 提出されている書類は、正妻との間に生まれた女児の出生届ですから…… この国には、隠し子、御落胤等、色々な事情がある方々がおいでです。 ” 権利と義務を遂行すべき貴族籍は、細大漏らさず記すべし ” と、法典に御座います。 王国の戸籍法典は、細大漏らさぬように網の目になっておりますのよ? 一部を書き換えても、他の書類との整合性がとれませんわ」


「馬鹿な……」




 なにを言っているんだ? 馬鹿なのは《お前》だ! その昔のお手盛り戸籍であったら、お前の思うがままに出来たろうにな! 法典は日々整備されているんだ。 知らんかったのか? フルブラント法衣伯爵の懺悔話でさ、もう情も、何もかも無くなったんだよ。 そんな家名、名乗りたくもない!




「しかし、先程、フルブラント法衣伯爵様とお話いたしまして、色々な思いも無に帰しました。 わたくしは、エスパーニア辺境伯の孫であることには、変わりありません。 御爺様が法衣伯爵の《声なき意思》を感じられたらしく、わたくしがまだ子供の頃に、御爺様の孫で有ると証してくださっております。 早くに知っていれば、法衣伯爵様の家名を名乗る事も御座いませんでしたのにね。 本領の卑しくも煩わしい《家名》を、名乗らなくても良かったのに……」




 侯爵閣下の顔が面白い感じになってるよ。 蔑んだ相手に、蔑まれてるんだ。 ほら、今、どんな気分なんですか? あんた達が、後生大事にしている本領の貴族の家名なんてもんは、辺境じゃなんの意味も無いんだよ。 身分の怪しさが問えなくなって、いよいよ、焦り出したね?  次はどうするんだ? ホレホレ!




「―――にしても、みすぼらしい。 余ほど困窮されているのか? フルブランド法衣伯爵家の御長女(・・・)である、聖女グローリア様程とは言わぬが、もう少しましな姿で出てこれなかったのか? 財貨が乏しければ、お助けいたす事も出来ますが?」


「聖女グローリア様程? 発光シルクをあれだけ沢山使われている、あのドレスにございますか? 御冗談を! アレがどの様なモノか御存知有りませんの? つい先頃、” やっと、少量の量産が可能になった ” と、生産国であるアントーニア王国、デギンズ第三王子から、お手紙頂きましたのよ? 法衣伯爵家で、あの生地を使い、あれだけのドレスを誂える事が出来るのですか! 王国の官吏とは、なんとも、凄まじいお給金で御座いますのね…… 辺境の地では、とても購えませんわ……」


「ど、どういう意味だ!!」


「生産国であるアントーニア王国からの物品は一度、オーベルシュタット辺境領、領都クナベルを通過致します。 そう云う取り決めでしたので。 たしか…… 発光シルクの総取引量は、反物でニ十反に届かない筈。 あのドレスには、少なくとも五反以上の生地が使われておりますわ…… それに、以前、大聖堂にてお召しになっていたのも、同じ発光シルクを使った、違うデザインのドレスに御座いましたね……」


「何が言いたいのだ!!!」


「 ” 購い ” が、何処から出ていたのか…… いいえ、誰があの発光シルクを用意したのか。 フルブランド法衣伯爵家単独では、とても、とても…… 侯爵閣下はご存じありませんか?   あぁ、そう云えば、キンランド商会を御存知ですか? あの商会が、強引に持って行ったと、アントーニア王国の外交筋から、《大変強く》苦情を申し入れられておりますのよ? そのキンランド商会の支店が、領都クナベルにも御座いましてね、問い合わせを行いましたの」


 ニッコリと微笑んどくよ。 おい、侯爵。 ネタは上がってんだよ。 ハリーストン殿下の筋から国庫金引っ張り出して、発光シルク作ってる工房に ”お金” を押し付け、出荷先の決まっている反物、強引に持って行ったんだってな! 滅茶苦茶 怒られたんだ、デギンズ殿下にな!!! それに、置いてった金額じゃ、足りないって、嫌味も凄いんだ!!


 まぁ、お陰で、領都クナベルの、キンランド商会の支店の強制捜査出来たんだけどな!! 奴隷取引と合わせ技で、出店許可取り消し。 退去命令が出せましたよ!!




「き、貴様……」




 財貨の源、潰しちゃったもんね。 お隣の辺境伯さんにも、そのお隣にも…… 情報を渡したから、本領以外では、キンランド商会の信用ガタ落ち。 普通の買付すら出来ない状態だって? 表の商売が出来ないから、かなり非合法、物品やら取引をしてるらしいじゃん。 おかげで、摘発しやすくなったよ。 各辺境領じゃ、奴等の駆逐にてんてこ舞いしてんだ。


 キンランド商会の商会長…… 泡食ってんだろうなぁ~~ 絶対に、侯爵閣下に泣きついてるよね。 言う事聞かないと、色んな悪巧みの証拠もって、宰相府に駆け込むぞって、脅されてんだろ? 「目と耳」が、調べ上げてくれてるよ!




「こ、小娘が!!! 良い気になるな! 綺麗ごとばかりで、世の中が回るとでも思っているのか!!!」


「侯爵様? お言葉ですが、汚濁にまみれて、汚れ切ってしまった国は、民の安寧を護れませんわ。 無論、貴方の その御言葉は正しいのですが、侯爵閣下のそれは…… もはや、取り繕う事も出来ない、汚濁ですわよ! 権能、権益を持つ者は、公平にそれを民に分け与えなければ、国は持ち得ません。 ……すでに国庫も随分と寂しい状態にあると聞きます。 何故でしょうか? 判り切った事です。 本来、国庫に入るべきモノが、民の為に使われるべき財貨が、一部 高位貴族様の金庫に入っているからです。 それも不当に、不法に!!」


「こ、この私に!!! 何を言うのか!! 増長も甚だしい!!! 教育してやる!! レーベンハイム侯爵家の恐ろしさを思い知れ!! 影!! 容赦は要らん!! やれ!!!!」




 激昂したね。 図星突かれると、怒りだすんだ、大人げないね。 成人したての私に、ムキになっちゃって…… で、影? つまり、暗殺者をこの場に張り込ませたの? それで、私に向けて、その刃を向けたの? 



 なんの対処もしてないと―――― 思ったの?




 馬鹿ね……




 ボタッ、ボタッ―――― ボタボタ……



 私を指さして、激昂している侯爵閣下の周囲に、生首が 五、六っ個 落っこちて来たんだよ。 皆さん、一撃で首を刎ねられて、茫然とした表情をしてらっしゃる。 こうなっては、「私の力」でだって、どうにもならないわよ? 侯爵様ったら、そのまま固まってらっしゃるの。 一撃必殺で、私を無き者にして、無礼討ちって事で幕を引こうと思ってたんでしょ……



 甘いね。



 私の前にふわりと影が落ちたんだ。


 レイヴン…………




「 主よ、主に殺意を向ける者は、全て屠った 」


「 ありがとう、レイヴン。 どんな状況になっても、貴方に護ってもらっているから、強く在れました 」


「 それが、主だ。 ありのままの主だ。 だから、俺は護るのだ 」




 側に居てくれているのは、感じてた。 だから、思いっきりできたんだよ。 ありがとう、レイヴン…… ありがとう…… みんな……




「モリアーティ=ドルド=レーベンハイム侯爵閣下。 もう、戻れない場所に来てしまいましたね。 貴方の悪行、諸々の所業は、全て将軍閣下を通じ国王陛下に、お渡ししておりますわ。 王太子殿下、王太子妃殿下…… そして、生まれてこなかった、御子の事も…… その後の所業も…… 国王陛下がどの様な裁定を下されるのかは存じ上げませんが――― 極刑は免れないと、思います」




 私に向って指示(さししめ)していた、指が震え…… パタンと腕が下がった。 膝から力が抜け落ち、その場に崩れ落ちたの、レーベンハイム侯爵閣下。 両膝をつき、両手で顔を覆い…… 細かく震える ” おっさん ”




 バタン!!




 ってさ、大きな音が響いて、一番大きな扉が開かれたの。 足早に駈け込んで来るのは、王太子様、将軍閣下、御爺様…… それに続くのは、オンドルフ=ブアート=ルシアンティカ神官長と、シドニアン=エラルーシカ=ウインストン宰相閣下  さらに、その後ろには国王陛下。 シンガーデリクト卿まで居るよ…… その他、沢山の近衛騎士、衛士、帝国近衛騎士の皆さん。


 王太子殿下の大きな声が、会場の中に響くの……





「この場に居る者に告ぐ!! 国王陛下の勅命である!!! 縛について貰う!」





 どよめく会場の人々。 でもさ、これって、大逆を企ててた人達の、決起集会みたいなものじゃない? 当然そうなるよね。 今更、理解したのか、あちこちで小さな悲鳴が聞こえるんだ。 知らんよ、自業自得だ。 何人も気を失って、その場に倒れ込んでる ” お嬢様方 ” 頭を掻き毟っている、大人の貴族さん。 


 後ろ手に縛られて、じたばたしてる人。 未だに何が起こっているのか判らない、今年卒業した、学院の生徒さん達。 いや、まぁ、此処まで派手にやらかすつもりは無かったんだけどね…… あんまり、馬鹿ばっかりだったから…… つい…… ね。









 その時さ、廊下を走る音がしたんだ……








 王太子殿下と、その最愛の人が住む、マリオン宮の侍女頭さんが駈け込んで来たんだよ。 きっと、王太子殿下に用事があったんだろうね。 なんか予想がついた。




「 殿下!!! おめでとうございます!!!!  珠のように美しく、とても元気な、男御子様が誕生されました!!! 王孫様のご誕生に御座います!! ミサーナ王太子妃に置かれましても、健やかなご様子!!! 母子ともに…… 母子ともに……」




 最後は泣き声に成ってたよ。 慶びに、声に成らないのが良く判る。 良かった…… ほんとうに良かった。 ベルグラード=ウーノル=ランドルフ王太子殿下が、拳を上げて吠える様に叫ばれたんだ。




「でかした! でかした、ミサーナ!!!」




 会場内の人達を捕縛中の皆さんも、仕事の手を止めずに、吠えてたよ。


 レーベンハイム侯爵はというとね、変な唸り声上げながら、頭を掻き毟ってた…………






 野望、潰えたり―― ってね!





 歓声が会場内に木霊するんだ。 みんな、歓喜に震えてるんだ。 ルシアンティカ神官長が、祈りを捧げ始めると、あちこちで同じように、祈りを捧げる人達が居たんだ。 神聖な風が私の周りを渦巻くの。 うん、精霊様もお慶びになってるのね。 ――――ちょっと、ちょっとだけ、「力」使っていいかな? レイヴン?



 《 少し、ならな。 主よ 》



 周囲の雰囲気に、会わせて同調するの。 歓喜と、精霊様への祈りが充満する中なら、出来るよね。 目に見えない、神聖な風と同調したとたん…… ふわりと光球が現れたんだ。 やっぱり、祈りの力は絶大だよ。 光球の中から、光の精霊様が顕現されたの。 やっぱり、見てたんだ。 なんか、感じてた。 この国を護って欲しいって、そう云う意思を感じてたんだよね。


 精霊様がにこやかに微笑んでいらっしゃる足元にね、光の粒が集まって、ちょっと大柄な男の人がボンヤリと表れたんだよ。 それで、私を見て、両手を大きく広げてね、囁くように私に語り掛けて来るの。




《 フリージアちゃん…… よく頑張ったね 》


《 もう、クッタクタよ、レイさん…… 最後まで、見守ってくれてたんだ 》


《 私がさぁ…… なんか言うよりも、貴女自身で考えて、そして、やり切った方が良いような気がしてね 》


《 それで、何も言わなかったんだ…… 》


《 ええ、そうよ。 だって、貴女の事、信じてたんだもの…… ホントによく頑張ったわね 》


《 えへへへへ、 ありがとう 》




 なんか、目の前に浮かんで、近づいてくるの。 光の粒が形になって、微笑んでるの。 まるで、精霊様みたいよ、レイさん。 まぁ、おっさんなんだけどね。 ……でも、とっても優しい目をしてるの。 やり切ったって、感じなんだ! シッカリと抱き締められたんだ。 うん、おっさんにね! 泣きたくなるくらい、嬉しいの。 だから思ったのよ――――








 思ったのよね―――







 この顕現はね…………





 私からの、ベルグラード王太子様と、ミサーナ王太子妃殿下と……





 そして、この国の人達みんなへの







 わたしからの、お祝いなんだよー ってね。








ざまぁぁ!!!!


黒幕、魔王様、撃墜! 嫌味の応酬、言葉の刃でちゃんちゃんバラバラ。 いちど、マジモノの言葉の戦いってのを、綴ってみたかったのです。 暗殺者の方々には、申し訳ないですけど、一瞬で終わらせて頂きました。 


頑張ったよ、負けなかったよ、我らが姫様!!!


物語は、収束に向かいます。


次回、最終話 琥珀色の魔女 (予定ですよ、予定。 

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