27. 伯爵令嬢の鉄拳制裁
私を抑える様に立っている法衣伯爵――― 御父様のことね。 その見知らぬ御父様が私の質問に答えてくれたんだ。 一介の侍女の問いに答える――― 普通はあり得ないよね。 なにか告白したい事でもあるのかな? 自分の胸の内に抑えておけるような話じゃ無いのかも。 いや、きっと私が辺境伯の所の者って知ってるから、懺悔したくなったのかもしれないね……
「殿下の隣に立っている神官がね、私と妻の婚姻契約を調べ直したのだよ、フリージアの侍女殿」
「はい、それで?」
「あぁ、王家に命じられ、親族に強要され、愛する者と引き離され…… 見知らぬ相手と、婚姻を結ぶ。 その相手は、陛下の御婚約者であり、どこか普通では無く…… 結婚式の時にベールを上げると、其処に意志の光は無く…… そう、まるで人形のような御方であった。 その御方と生涯を共に生きる相手とする…… これ程、残酷な事は無い。 しかし、勅命は勅命…… 恙なく婚姻は終えたのだ……」
「はい……」
「君は辺境領の者であろう…… アメリリアが保養所でどの様な姿であったか知っておるか? 結婚して五年…… 娘が生まれて三年目にして…… 彼女はついに心を完全に壊してしまったのだ。 王宮から届けられる薬は毎日飲ませた。 しかし、どうにも…… 結婚して暫くたってから、一年も過ぎない事だったか、レーベンハイム侯爵閣下より、内密に呼ばれたのだ。 私の最愛の人であった、レンブルトン公爵閣下の二女、マーリヤ=ノイ=レンブルトン公爵令嬢が、私を待っていると。 結婚間もない私にとっては、「罪悪」と同じ事なのだが…… 私は愛の無い…… ” 人形のような御方 ” との生活に怯え、耐えかねていたのかも知れない」
「はい……」
「法衣伯爵の財では愛人など囲う事など出来はしない…… しかし、レーベンハイム侯爵閣下より、マーリヤがあまりに不憫、王家のした事は余りに無残と言われ…… 彼女の為の家と彼女を養うための財貨を公爵閣下から下賜されたのだ…… 互いに愛し合う私達には、福音のように聞こえたのだ。 レーベンハイム侯爵の提案を受け入れてしまった。 そして、以前のように愛し合うようになったのだ…… が……」
「が?」
「罪悪感が酷くてな…… 屋敷で、人形のように大人しく、なにも言葉を発しない妻。 なにも……ほんとうになにも出来ない彼女にな。 マーリヤと情を交わした日には…… アメリリアとも…… そして、子が出来たのだ。 ほぼ同時に…… 両方とも女児だった。 マーリアとの生活の場は明るく軽やか、アメリリアとの生活は暗く重く…… 同じ時期に出来た娘に対しても…… どう接してよいやら…… 思い悩むうちに、アメリリアは病状が悪化……」
「療養所へと?」
「そうなのだ…… その時に娘にも告げてしまったのだ。 わたしと暮らしても、今と変わらぬと……どうしたいかは、娘が決めればよいと…… そう、言ってしまったのだ…… 幼い我が子に言ってしまったのだ。 聡い子であった。 自分の居所が無いと判ってしまったのかも知れない。 父親としては……忸怩たる思いも有るが、全ては辺境伯にお任せした。 いや、辺境に捨てたのだ…… 後悔は十四年前に、すでに済ませた。 あのように凛とした娘になっていたとは……知らなかった」
「伯爵様…… 良くご覧くださいませ。 よく」
私の言葉を、どう取るかは知らん。 ただ、モリガンを自分の娘と認識した御父様に、なぜかイラッてなったよ。 なんて身勝手な奴だ!!! まぁ、状況は理解したよ。 状況はね。 レーベンハイム侯爵閣下の悪意の塊のような甘言にのったんだ。 そっか、もうその時から、自分の娘じゃ無かったんだ。 十四年前に、辺境に捨てたんだ…… よくわかったよ。 で、今回の懺悔話の趣旨が判らん。 何処で、私が次女以下の存在になっんだ?
「……先程、云ったな、” 殿下の隣に立っている神官が、私と妻の婚姻契約を調べ直したのだ ” と。 それで判明した事がある。 アメリリアとの婚姻宣誓書が、教会に提出されていなかった。 いや、確かに署名はした。 そして、それを神官に渡した筈なのだが…… しかし、その宣誓書が無いのだと……」
「つまり、アメリリア様との婚姻は不成立となってると?」
「そうなのだ。 アメリリアが亡くなった後、正式にマーリヤとの婚姻を結んだのが…… 先の婚姻が不成立と言う事で、私の正妻は後にも先にもマーリヤただ一人となった。 婚姻以前の子は、本来庶子になり、婚姻後に養子として願い出なければ実子として認められなかった筈なのだが、マーリアとの子、今では「聖女」と呼ばれている、グローリアは、出生時に正式に我が子と認知した事。 それに、わたしの初めての正妻の子と言う事で、グローリアが嫡子として認められたのだ…… レーベンハイム侯爵の御力添えが有ったと聞く」
「左様に御座いましたか…… つまりは、アメリリア様は……」
「公式には愛人と言う事になっている。 さらに、あの娘は嫡子から単にアメリリアが生んだ子と言う事に変更され、貴族籍を失っている。 私生児扱いだそうだ……」
ほえっ? マジ? ならば、私は…… もう、伯爵令嬢じゃぁ無くなってたんだ! うはっ! 知らんかったよ!! 文章官がそんな風に訂正したんだ…… 上には報告なしだね! 国王陛下…… いや、王太子殿下辺りが知ってたら、飛びあがって止めにかかるもんね。
つまりは、私はお母様の子であって、こいつが御父様って訳じゃないんだな。 うん、よし。 これで、フルブラント伯爵家の行く末を、気に病む必要が無くなったよ。 現行の王国の戸籍法なら…… 今の私の身分は庶民と同じ。 なんでかって言うと、父親が確定していないから、お母様の実家の家名も名乗れないからね。 私生児っていう者に対して、貴族社会は酷く冷たい。
血筋的には御婆様の血を引く者だけど、きちんとした婚姻であった筈のお母様が愛人にされてたんだ。 その上、私はお母様の私生児扱い……っていうことは、” 父親は不明。 お母様は、フルブラント伯爵の愛人だったから、推定でフルブラント伯爵が御父様 ”って事になってんだ! つまりは…… 私の認知届まで、亡失させたのか、故意に!!
何処までも、やりおるね。 其処までして貶めたいか!!
でもさ、御爺様の孫には違いないからね。 門地は継げないけど、一応、御爺様が申請してくれれば、私は、お母様が生んだ子供ってことで、フリージア=エスト=エスパーニア辺境伯令嬢って事に成るんだよ。 現行法ではね。 このクソみたいな改正がいつ行われたのか知らないけど、御爺様の承認があれば何時だってエスパーニア辺境伯家に、孫娘として貴族籍を得る事が出来るもんね。
やったね! これで、名実ともに ” 辺境の子 ” だよ!!
ニンマリと口元に笑みが浮かぶんだ。 こいつの目には其れは入ってない。 当然だね。 実の娘が断罪されようとしているのを、見てるだけなんだよね――― こいつ。 その罪も、冤罪込みでね。 というか、冤罪ばっかりじゃん。 バカバカしい! そっちが見捨てた娘は、辺境の地で立派な「 辺境の娘 」になってんだよ!
売られた喧嘩は、高く買う事にしてるんだ。 それが、辺境領の対処方法なんだよ!
第一、あんたの娘とは、面識が無いんだよ、私。 それを、イジメる? 有り得んな。 どっからそんな話をでっち上げられるんだ? あぁ、” 私は見た ”って奴か…… モリガンが上手く誘導してくれるだろなぁ…… あの子、そう云う所抜け目ないもん。
さて、奴等が上から言い放つ、放言をどうやって反撃しようかなぁ…… このあいだ、頂いた ” 聖名 ” を使うのはまだ早いしね。 レイヴンが【遠話】で連絡取って来た。
” 話は聞いていた。 主よ、貴女の貴族籍については心配ない。 こんな事も有ろうかと、エスパーニア辺境伯は貴女に《二重の身分》を、お与えになっている ”
” ん、どういう事なの? ”
” 余りにもフルブランド法衣伯爵家から放置されている為、エスパーニア辺境伯は君に孫としてエスパーニアの家名をすでに与えている。 君が頑なにフルブランド伯爵の家名を捨てずに自身をフリージア=エスト=フルブランド と、呼称していただろ。 あれは…… 爺さんにとっては、かなり嫌だったみたいだな ”
” まぁ、一応は御父様だと思っていたわ…… この国では「父親の家名のみ」が、女児に与えられる「家名」でもあるし…… 普通はそうじゃないのですか? ”
” 故にだ。 あの男が、主を捨てたといったろ。 お前の爺さんも、その事は薄々感じていたんだろうよ。 だから、何時でもエスパーニア辺境伯令嬢の名を名乗れるようにしておいたのさ ”
” 御爺様ったら………… ちっとも 知りませんでした ”
” あの爺さん、主の事を一番に考えているんだが、如何せん口下手なんだよ。 なまじ、文章官がどうこうしようと、主が辺境伯令嬢だという事は動かせない。 動かしようがないからな ”
” ならば、戦えますね ”
” あぁ、アノ面倒な「 名 」を、使わずともな! ”
御爺様…… ありがとう…… 本当に有難うございました。 私…… 知らなかったよ。 父親が誰だっていい、お前は儂の孫だって、言われた気分…… そうね、そうよね。 私は、私。 辺境の子、そして、リンデバーグ=フォン=エスパーニア辺境伯爵の孫娘だもんね。 よし! モリガンの様子を伺いつつ、反撃の狼煙でも上げるか。
私の後ろに控えていた三人の従者 ―――エルクザード、マエーストロ、それに、アーリアに目配せをするんだ。 その視線に気が付いた三人は、戦闘準備体勢から、戦闘態勢に移行したよ。 モリガンの方も佳境に入って来てるよね。 【遠話】で、彼等にお話を始めるのよ。 よしよし、ちゃんと魔法回路開いてたね。
”魔法騎兵アーリア、御爺様に《ご連絡》を。 ついで、将軍閣下にも。 軍、第一種機密通信の使用を許可する。 エルグザード、マエーストロ、両名は私の横に。 密集隊形を維持。 【身体強化】魔法の全面使用を許可する。 われ、辺境領 第一遊撃隊 指揮官 フリージア=エスト=エスパーニアが命じる。 急進準備!”
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「フリージア=エスト=フルブランド! 謝罪は無いのか?」
「お聞きしたき事が御座います、殿下」
「なんだと!」
「私が、命じたと言われております、” 「聖女」グローリア様を苛んだ ” 事ですが、誰か『その事実を証する事』が、出来るので御座いましょうか?」
「ふん、フルブラント伯爵家の家人、使用人はもちろんの事、伯爵家に行った者達も見て居る! 数々の『 証人 』がお前の罪を証しているのだ。 この期に及んで、言い訳でもするのか?! 」
「左様に御座いましたか、証人様が居られるのですね。 その証人様達は、勿論、神官様に誓いを立てられていると」
「私がその誓いを受けた! ルシアンティカ神官長の長男である、この私、ヘレナベル=ミスト=ルシアンティカ準司祭がな! 精霊様の御前にて、誓いを立て証言を受けたのだ! 揺るぎない証言なのだ!!」
やるね、モリガン。 準司祭には、そんな権限は無い。 教会に行った事があって、なにかの証言をする為に誓いを立てた事がある人にしかわかんないけど、「誓いの儀」に立ち会うのは、司教以上の高位聖職者様達だけだ。 だから、重要な事の証言は、本領に来なきゃ出来ないんだよ…… 準司祭がその「誓いの儀」を実行できるのなら、地方でだって可能なんだよね……
教会の権威を護る為に、絶対に認められなかった事なのにね。
つまりは、このヘレナベル準司祭の言った事は、教会と、王国の定めた「 法 」に、真っ向から歯向かうって事なんだよ。 その結果、教会から破門されるのも知ってるよね。 知らないって事は無いよね。 あれ? 知らなさそうだね……
フフフ…… この馬鹿どうして呉れようか……
「お前はもうとっくに貴族籍を失っている只の庶民だ。 その庶民が畏れ多くも殿下の婚約者様の名を騙るなど、大逆! 慈悲を以ての殿下のお言葉、さっさと「聖女」グローリア様に謝罪申し上げ、この場を出て行け。 国外追放の処分は、「聖女」様たるグローリア様の姉妹であるかも知れぬ お前への せめてもの慈悲と心得よ!!」
マクシミリアン=ヨーゼフ=マクダネル子爵かぁ…… あぁ、こいつもダメだ。 自分の知ってる事が全てだと思って居るんだよね。 どう転んでも、私は辺境伯の孫だ。 伯爵の娘で無くなっても、御爺様が認めれてさえ居れば、私は辺境伯の孫娘…… 伯爵籍をうしなっても、辺境伯籍は残るんだ。 そんな事すら視野に入ってないって…… 勉強してるのか? 頭いい筈なんだろ? 学院って……なんなんだ?
御爺様がこんな事態も有るかと見越して先にそう手配されてたんだ………… 私を庶民とするべき、根拠がないんだよ。 それに、辺境伯ってのは、侯爵よりも「力」有るんだよ? 公爵家と同等って、この国じゃそう規定されてるんだよ?
その孫娘に向っての暴言……
御爺様への暴言ととってもいいよね。
お前も排除対象になったよ。
「謝罪の意味を見出せません―――」
「何!!! 何処までもお前は!!! 殿下、もう、容赦は要りません。 ここで、排除致します!!」
「―――なぜなら! わたくしは フリージア御嬢様の専属侍女に御座います故。 長らく御婚約者であった殿下、直接対峙されたミストナベル様におかれましては、御存知であるかと思いましたのに…… 残念に御座います」
ミストナベルの傲慢な言葉に――― 被せる様に、云うんだよモリガンは! まぁ、そう云うよね、モリガンなら。 殿下以下、有象無象の方々…… 大勢の人達の目の前で、大恥晒しちゃったね。 ミストナベルなんて、顔真っ赤にして怒っているよ。 衛剣に手が伸びた。
抜く……
モリガンに対し、直接行動だ。 彼女への「殺害の意」を露わにした! よし、《 緊急対応条項一条一項 》に該当する!
「 抜刀! モリガンを救え。 容赦は要らぬ! 急進!! 続け! 」
おそらく、周囲の奴等には、私達が急に消えたように見えたんだろう? 【身体強化】使っての駆け足は、のほほんと暮らす お前達の目には捕らえられないよ! いい感じの位置に、魔法騎兵アーリアが騎兵のサーベルをポイっと投げ出してくれた。 抜き身のサーベルの柄をがっしり掴んで、モリガンとミストナベルの間に身体を滑り込ませた。
「この次有った時…… 何でしたかしら? ミストナベル。 貴方は、たしかに わたくしの大切な侍女 モリガン に殺意を向けた。 辺境の民に害意を向けた。 まったくもって許し難い! 将軍閣下の御慈悲がまだわからぬのか!!!」
声高にそう叫んだの。 私の顔をやっと認識したのか、赤い顔が更に赤くなったミストナベル。
「ぬかせ! うがっえあおおうべ!!!!」
怒りに満足が言葉も発する事も出来ず、やみくもに突進して来たんだ。 へぇ、良い突撃するじゃない。 でも、まだまだ、新兵以下。 そんなんじゃ、オーク一匹狩れないよ。
振りかぶる衛剣を力任せに振り下ろす。 屁でも無いね。 軽く躱し、その腕にサーベルを叩き付けてやったよ。 右手にだけね。 ほら、生活するだけなら左手一本でも大丈夫でしょ?
「うぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
飛び散る血潮、切り離された片腕。 私の周りにエルグザード、マエーストロ、それにモリガン。 モリガンに至ってはどっから出したか判んないけど短剣まで持ってるよ。 抜刀状態の歴戦の戦士達とモリガンと私。 崩れ落ち、血の気を失ったミストナベル。
悲鳴が舞踏会場に響き渡るの。 おい、アーリア! なんで、実況しているの? 御爺様と、将軍閣下に直接? まぁ…… 仕方ないわね。
なんか、逃げ出そうとしている人も居るね。 ダメだよ、逃がしてあげないよ。
” 風の精霊様、お願い致します。 この部屋の出入り口、扉を、窓を、固めて頂けませんか? 内から外へ出られない様に、外から内に入れるように。 その偉大なる精霊様の御力に縋り、伏し願奉ります…… ”
そよと、風が頬を撫でるの。 お願い…… 聞いて貰えた! 突然、開け放たれていた扉が全てが、バタンって閉じたのよ。 扉を開けようと、ガチャガチャやってる人が、騒いでいるの。 あぁ、窓もね…… 同じだよ。 もう、この会場からは、誰も出られない。
「「「「 何故、外に出られんのだ!! 」」」
「「 【開錠】の魔法すら跳ね返される!! 」」
「「 嫌ヨ! 早く出たい!! 」」
「 なんで、こんな事になってるのよ!!! 」
「「 衛兵! 衛兵は何をしている!! 」」
いい年をした大人達が狼狽えてるの。 大声で喚き散らしてるのよ…… みっともないね。 なんか、罵声ばかり聞こえるの。 誰も何が起こっているのか、見極めようともしない…… 私を睨みつけてる大人って、レーベンハイム侯爵閣下くらいなモノかぁ……
それにしても………… 煩いなぁ……
^^^^^^^
「静まれ!!! 辺境領、第一遊撃隊、指揮官フリージア=エスト=エスパーニアが、我が領の民に殺意を向けた下種へ、緊急対応条項一条一項により、制裁を下しただけである! 王城と言う事も有り、戦闘力を奪うだけとした。 この場の最高指揮官は来られよ!!! ご説明願おうか!!!!」
私の言葉に、水を打ったように会場に沈黙が落ちたの。 蹲るミストナベルに対して、動揺した瞳を向け、それでも絞り出すように、声を上げるのは―――
「な、なんという事を!」
「ハリーストン殿下で御座いますね、今ご発言に成ったのは。 ” 国王陛下の剣にして盾 ” 、御国の外辺部の平和を守る、エスパーニア辺境伯麾下、第一遊撃隊 司令官として問います。 先程、《善き国王とならん》と、仰いましたが、間違いでは御座いませんね」
「なっ!」
「聞き違いで無くば、ハリーストン第四王子は国王の座を狙うと宣言されましたね」
私がピタリと冷たい視線を合わせると、急にオロオロするんだよ、この殿下…… はぁ…… 仮にも「王位簒奪の意志あり」と、宣言したのに、なんで、其処で黙るんのよ? 今更ながらに分かったの? 殿下の言った言葉が、現時点では大逆罪に当たるって。 そして、その意を耳にした臣下は、速やかにその者を排除せしむ事になってるの。
その辺は、王子の教育課程に有る筈なんだけどなぁ…… わすれてたの?
「い、いや、しかし!」
「王位継承は、国王陛下の専権事項です。 単なる第四王子である殿下に其れを言う資格は有りません。 真意は如何に?」
「…………」
「このままでは、陛下に言上申し上げねばなりません。 そう云う気持ちで、これより《 民と国王陛下とランドルフ王国に 》尽くすつもりであったと言うのであれば、そう言上 申し上げますが、如何か?」
「……そ、そうだ……、その通りだ…………」
「良かった。 殿下を《大逆の罪》に問わねばならぬ所でした」
あからさまにホッとした表情をしてあげたのよ。 まぁ、一応は、王家の予備の予備だしね。 ついさっきまでは、婚約者として立ってたんだし、其処は、情と言うモノもあるよね。 枯渇しきってしまったけどね。
さてと、取り敢えず旗頭の心はブチ折った。 諸々の奴等を纏める為の旗はコレで折れた。 あとは、殿下をもって色々と画策してた連中だな。 あぁ、それと、殿下の側近たち。 こいつらは、なんとしても無力化しとかないと、あとあと禍根が残りそうだしなぁ……
殿下は今、下手な事言えば、この場で首が落ちかねない。 これ以上は何も言えない。 弁明すら出来ない。 私で良かったね。 将軍閣下なら、何も言わずに一刀でそっ首落とされてたよ…… 殿下が何も言えない状態になったら、きっとしゃしゃり出て来る奴等が居る。 そうさ、殿下の側近共だよね。
でもさ、私は私の所属と権能を示した。
辺境領軍の指揮官としてってね。
こいつばかりは、誰も掣肘を加えられない権能だものね。
だって、任命したの、御爺様なんだからね。
本領の人達にはどうする事も出来ない、御爺様の専権事項なんだよね。
そして、その権能の第一義に有るのは、
” 王国の安寧に護り切る事。 ”
なんのかんの言って来たら、排除するまで……
王国の剣と盾と呼ばれる由縁なんだよ。
さて、大掃除と参りましょうか……
さて、断罪シーン その2
伯爵令嬢は 辺境伯令嬢に 成りました。 御爺様の深き愛情が、ここにきて、王国の命運を救いました。 フリージアは辛うじて王国貴族籍を失っていません。 万が一失う事になれば、即座に帝国臣民籍となっていた事でしょう。
御爺様、ナイス!
血で汚れた、パーティ会場。 退出出来ない、パーティー出席者。 会場内にで覇気を漲らせているのは、 辺境領 第一遊撃隊 指揮官 フリージア姫様。
さて、お楽しみはこれからです。
頑張れ、負けるな、我らが姫様!
物語は、クライマックスへ。
次回、辺境伯令嬢は断罪する …………予定です 予定なんです!!
( 頑張ってます。 キーボードが不調です。 最後まで壊れずにいてくれるか! 頑張れ、マイ・キーボード! 負けるな、光学マウス! 君達に物語の結末は掛かっているのだ!!




