葵
「葵さん、葵さんは僕の味方だよね?」
僕が葵さんに公園で再会して最初に口にしたのはそんな月並みの言葉だった。
「どうしたの?光君、何があったの?」
「母さんは紫の味方をするんだ、裏切ったのは紫なのに!なのに、なのに、母さんは紫を擁護するんだ」
「大丈夫、大丈夫よ光くん。私はどんな事があってもあなたの味方よ、例え世界中の人が光くんを責めてるとしても」
そう言って葵さんは僕を抱きしめてくれた。
「あ゛お゛い゛さ゛ん゛」
僕は葵さんの胸で泣いてしまった。
僕が泣き止むと
「ねえ、光君、今夜、家に来ない?」
「いえ、そんな意味じゃないのよ、でも、光君が望むなら、私は、大丈夫よ」
「葵さん、今日は家に帰りたくない」
「わかったは」
覚悟を決めた様に葵さんは言葉を紡いだ。
僕はそうして、葵さんの家に向かった。
「ねえ光くん葵って漢字の意味って知ってる?」
僕が答えに窮していると、葵さんは話を続けた。
「葵って漢字は【くさかむんり】に、癸って書くじゃない?癸は太陽で方角を知るための器具の事だから、葵は太陽に向かって成長する植物の事を示しているの、だから、私は私の 光をずっと見ていたいな。
だから、その、す好きです、付き合ってください」
余りの急展開に驚きながらも僕は僕に向けられた好意が嬉しくて、助けてくれたから
「僕も葵さんの事が好きです。こちらこそよろしくお願いします」
その晩、僕は葵さんと体を重ねた、そう、葵さんと僕はお互いに初めてを捧げ合った、けっして裏切らないと示すために。
朝、僕は家族に気づかれない様に家に帰り朝食を食べ家族と一切会話をせず学校に行た。
教室に入ると葵さんと紫が話していたようだが、僕が入って来るのを見ると話をやめてしまった。
「葵さん、何話してたの?」
「光君と付き合ってるから、手を出さないでって話してたの」
「それでなんて?」
「『勝手にすれば!』って言われちゃった」
紫が食ってかかりそうだったが、何も言わず席に着いた。
「源、紫さんと何かあったのか?」
壬生が空気を察したのか聞いてきた。
「まあ、色々と」
僕はお茶を濁すと
「そうか、何かあったら話してくれよ」
壬生は月並みな言葉を返してきた。
僕は自分から話を濁したにも関わらず、もっと聞いてくれない壬生に少しの苛立った。
その日僕は放課後ギリギリまで葵さんと一緒に過ごし夕食を食べに家に帰った。