妹
僕が学校から帰って玄関のドアを開けると目の前に女の子が立っていた。
「はじめまして、光くんであってるよね?
私の名前は紫。先日、児童養護施設にいた所を源さんご夫妻に拾われて、今日からこの家に住むことになったの。一応あなたの妹と言うことになるから、よろしくね」
僕は驚きのあまり言葉が出なかった。確かに両親はお人好しで時々、突拍子もない事をするが今まで一度たりとも 人を拾ってきた事はない。
「もしかして光くんじゃなかった?」
少し不安そうに紫が首を傾げる。
「いや、光であってるんだけど、急な話でどう対応すれば良いのか わからないんだ、えーと、紫ちゃん」
「一応、妹なのだから紫で良いわよ、お兄ちゃん」
紫がニッコリと微笑んだ。これは、可愛………
「わかった、紫、わかったから、お兄ちゃんはやめてくれ!」
一瞬 紫に、妹に! 悩殺されかけた。
「どうして? お兄ちゃん、紫はお兄ちゃんの妹だよ?」
良いようにからかわれてる! 絶対にからかわれてる!
「わかった! わかったから、好きに呼べば良い、それより紫はこれからどうするんだ?」
僕が話題を変えようとすると。
「そうね、特に予定はないけど1人で食べれるようになったら出て行くつもりよ」
話は変わったのだけど、今度はなんだか僕が出て行けって言ってる風な言い草じゃないか。
案の定
「紫ちゃん、光の言う事なんか気にしないで何時迄もここに居て良いのよ」
リビングから母さんが、口を挟んでくる。
そんなつもりで言ったわけじゃないんだけど……
「不束者ですがよろしくお願いします。藤子さん」
「そんな、他人行儀じゃなくて、お母さんって呼んで良いのよ、紫ちゃん」
「もう少し時間をください。まだ、そう呼ぶのには少し抵抗があって……」
女の世界に入っていく2人を横目に、僕はため息をつき、自分の部屋に入った。
そんなこんなで、僕は紫と同じ屋根の下に暮らすことになった。