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春の君の嘘なんて僕は知る由もない  作者: 朝日奈 イリナ
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分かっていた。気づいていた。しかし目を瞑り覆い隠し気付かないふりをしていた。こんなはずがあるはずないと。信用したくなかったのだろう。彼女、湊 成葉は少なからず多少にも僕に行為を向けていた。断定はできないが、それがわかった。そんな彼女に酷いことを言っていた。しかもそれを聞かれてしまっていた。後悔してもしきれないやるせない気持ちが僕を襲う。考えるよりまず行動そんなこともできないまま僕は彼女が身を投げ出すのを黙って見ていた。その間0.数秒。ふと我に返った僕は彼女を助けるために川に向かって飛び込む。その刹那-。彼女の身体は綺麗な体制を保ちながら落ちていることに気づく。それはまるで飛び込みの選手かのように。そしてそれと同時に聞き覚えのある探していた声が耳に響く。

「信歌君?!」

突然呼ばれた名前に反射的にその方向を見るとそこにはほかの誰でもない成葉がいた。驚きと動揺を隠せず体勢を崩しながら僕の身体はまだ冷たい川の水に叩きつけられた。

息をあげながらようやく川から上がる。成葉は俺のことを心配してカバンの中に入っていたタオルを手渡してくれた。川に飛び込んだ少女はどうやら本当に高飛び込みの選手だったらしく部活で上手くいってなかったからむしゃくしゃして制服だということも忘れて飛び込んだらしい。彼女は僕が飛び込んだことに驚きながらも誤解を招くようなことをしたと一言謝り足早に逃げるように去っていった。まったく女の子ってのは自分勝手だ。彼女も成葉も。

「ヘクシュン!」

あぁ、風邪をひいたかもしれない。僕も早いうちに帰ろう。そう思った瞬間、成葉から

「あの〜・・・、お詫びも込めて家でご飯食べていかない?」

家が隣なのにわざわざよっていく必要があるのだろうか、そうは思ったがまためんどくさいめに合うのは懲り懲りだ。ここは先生に頼まれたことも解決するのもあるし、お言葉に甘えておこう。

マンションのドアを開ける。濡れた身体は自宅でシャワーを浴びたので迷惑にはならないだろう。自分の住んでいるマンションだというのにただ隣の部屋に行くだけなのになんだか悪いことをしているような気がした。玄関の靴は几帳面に靴だなに収められており成葉の性格が伺える。少し奥に行くとキッチンがありシンクの中には食器が1セットどうやら成葉は一人暮らしをしているらしくダイニングの机に向かう椅子も何もかもが一人分。どことなく違和感を感じる部屋だ。一言で言うと人間味のない、殺風景な。

それに机には沢山の封筒と袋。それに開きっぱなしの文字の沢山書かれたノート。成葉はノートに何かを書き込むとそれらをすぐに片付けた。片付けは苦手とは思えないのだがなぜ散らかっているのだろう。そんなことを考えていると成葉は持っていた大きなビニール袋から沢山の食材を取り出す。そこからは目にも留まらぬ慣れた手つきであっという間に1品、また一品と料理が完成した。

胃袋を満たす幸福な料理。成葉と1通りたわいのない話をしたあと自宅に帰り自室のベットで天井のポスターを眺めながら今日1日を振り返る。なんだか密度の濃い1日だった。走ったり飛び込んだり騒がしいことこの上ないだろう。この時僕が幸せを感じていることを誰も知らない。それは僕自身も例外ではなかった。いや、自分がどれだけ幸運なのか気付かないふりをしていたのだろう。

今日は綺麗な満月だ。月明かりが僕を照らしながら僕はゆっくりと目を閉じた・・・。

「あっ!?」

幸福は時にして大事なことを忘れさせる。そう、僕がしなければいけなかった事のように。

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