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春の君の嘘なんて僕は知る由もない  作者: 朝日奈 イリナ
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TRIVIAL TROUBLE

アニメの展開からすると成葉は明日早朝にインターホンを鳴らし一緒に学校に行こうと言ってくるだろう。流石に成葉と言えどそんなアニメみたいな展開を何度も何度も繰り返すはずがない。むしろ彼女はアニメが嫌いだったはずだ。それが故に小さい頃からアニメ好きな僕は罵倒(ばとう)(けな)され10年以上たった今でさえ成葉に嫌悪感、苦手意識を感じているのだ。そんな彼女に限ってするわけがない。ないのだ!結局寝床の上で考え始め、時計の短針は4,5周していた。

完全にやらかしてしまった。気づいたら時計の針はいつも家を出る時間を指している。結局一睡もしないまま学校へ向かった。せめて生徒会の仕事さえなければ教室少し寝るということも出来ただろうに。働かない頭をなんとか起こして押し付けられた仕事をこなす。結局成葉来なかったな・・・。仕事を終え寝ぼけ眼をこすり教室に向かおうとする。しかし、また今日も呼び止める声。それはやはり成葉のものだった。しかし今日はいつもと違い彼女は乱れた服装をしている。近づき無意識に校門を開けている自分がいる。

「「ふぁ〜」」

二人同時だった。どうやら成葉は朝が弱いらしい。二人とも寝ぼけているからだろう。横並びで自分たちの格好など気にせず教室に入っていく。もちろん時間など気にすることなく。

今日は最悪な日だった。一睡もしないまま学校に行き、朝のSHRにはおろか1限にも遅れて教室に行き、そのせいで1日中説教をされた。それに追い打ちをかけるかのように担任に成葉の遅刻がバレており、それを誤魔化したということを生徒会の先生に言わない代わりに成葉の遅刻癖をなおせと言われた。ほんとに無茶苦茶だ。担任だから当然成葉の家も僕の家も知っている。隣同士仲良くやれよと言われたが席のことだけじゃなく家のことも言われたのだと今気づく。本当にため息が止まらない。本当に貧乏くじばかりを引く。

「これが成葉じゃなかったら俺はただの幸せ者なのに・・・。」

自宅に向かう途中小さく呟いていた。不意に振り向くとそこには後ろから飛びつこうとでもしていたのだろうか。少し前傾姿勢に手を前に広げた成葉の姿があった。しかし今までの独り言を聞かれていたのだろう。急にしょんぼりし俯いて目の前を走っていった。通り過ぎる瞬間、その顔、その瞳には輝く粒が見えた。

クソッ!どこに行った?!走り去っていった成葉を探して街中を走り回っていた。念のためと自宅に帰ると案の定成葉も帰った形跡がなかった。どこに行った!!ぼくはかなり後悔していた。そりゃ誰だって自分の悪口をいっているその現場に居合わせたら逃げ出したくもなるだろう。それに彼女は僕に何をしたというわけではない。少なくとも再会してからは。・・・いや、暴言は吐かれたが。しかしそんなことは取るに足りないだろう。彼女を探すために必死に頭を働かせるがどうでもいいことばかり頭を()ぎる。アニメでは大体二人で行った思い出の場所などにいるのが定番だろう。しかしかなり前の話だ、そんなにすぐに思い出すほどの場所などない。それにアニメ展開はこんなに続くわけがない。クソッ!考えるよりまず行動だ。僕は大きくないこの街を何度も全てを見回るくらい走り回った。しかし頑張りと結果は比例しない。諦めかけ自宅方向に向かい、歩を進めたのそ刹那。橋の淵から身を投げ出す少女。いくら暖かくなってきたと言ってもまだ四月の中旬だ。おかしい。橋からの高さは10から15mと言ったところだろう。普通の人なら危険なレベルの高さだ。一瞬のことで誰か判断がつかなかったがわかったことは腰まである長い黒髪であるということ、同じ高校の制服を着ていたこと。そして彼女の瞳には煌めく雫で満ちていたという事だった。

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