第1話 取材
とてつもなく、遅くなって申し訳ねぇ・・・
就活で急がしかったんや・・・
と言うことで、始まりますよ~
聖華高校 射撃部
「ではおかけ下さい」
「は、はい」
俺がそう促すと、取材に来た女性が緊張しながら向かい側に席に着いた。
この日、取材に来たのはスポーツライターの女性とカメラマンの女性、銃に詳しいという女性だった。
クレー射撃の大会から1週間ぐらいが経ち、記憶も少しあやふやになってきているので主観的に話してしまうがそれは仕方ないだろう。
それは良いとして昨日、今後の予定についての問題が発生した。
理由は海外からの留学生が2名、聖華高校に来て高校を卒業するまで俺達と一緒に学ぶという連絡が昨日の夜、ロシアとイタリアの両マフィアのボスからそれぞれの秘匿通信で来た。
その時、ロシア語とイタリア語を別々に駆使して情報を聞いてみると、どうやら自分の娘を社会見学として留学させたいらしい。
絶対に組織の内部情報を知ろうとしているだろと思いつつ、了解と了承の返事にプラスして彼らのご令嬢に何があっても俺は無関係という趣旨のことを伝えると、彼らの笑いながら了承してくれた。
これで俺に対して仕掛けてくることはないだろうが、裏稼業のトップの娘となるとそれ相応の理由があるに違いない。
この事を母さんや彩葉達に伝えると、2つのマフィアは俺よりも先に彼女達に伝えてあったようで俺が相談に行った時には家族会議をしていた。
そのため、次のような事柄を決めた。
まず、学校などにいる時に職業柄について聞かれた場合は表向きの社名などを使うこと。
あくまでも、書類上では一般企業の社長の子供として学校に来ているので、変に騒ぎになるよりはちょっと怪しまれる方がマシという判断だ。
次に、彼女達に関わる全てを疑え。
基本的にヤクザとマフィアの関係は、表向きは仲良くしているがその裏では腹の探り合いと駆け引きが凄まじい勢いで行われているため、彼女達の言葉を鵜呑みにするのは色々と危ない。
と言っても、特にこれと言って特別なことをするのではなく、注意深く観察して違和感を感じ取れれば良い方だ。
最後に、多少の出血は覚悟しておくこと。
これに関しては、マフィア勢との戦いもやむなしという話なのだが、弱小マフィアなどは俺達の組織に戦争を仕掛けてくることはない。
理由は組織の規模もそうだし、俺の能力を使った場合はコストに対しての利益が充分に出せるかが疑問視されるからだ。
裏稼業でも信念よりも利益率を重視する傾向があるし、ヤクザを取り巻く状況も暴対法によってかなり厳しくはなっている。
しかし、俺達の組織である武蔵黒澤組には関係のない話である。
何故かというと、構成員の人数を減らすのと同時にヤクザから依頼を受けて、ヤクザの代わりに仕事をする仕事を始めたからだ。
法律によってがんじがらめにされる組織よりも、法律が殆どない状況で仕事を始めた方が圧倒的にやりやすいからだ。
その分、警察の目やマフィアの目を誤魔化しながらの作業だったため、綿密な人選や偽装破門などを慎重に取り決めたりする苦労はあったが、それに似合うだけの利益を上げている。
ヤクザといえば面子を大事にする組織だが、時代と共に組織も変わらないといけないのでやむを得ない措置だ、と言うことで破門を言い渡されたメンバーにそう伝えてある。
これは互いの利益のために、血の流れるような争い事が発生した場合にある程度の自由が利くようにしたためだ。
そこまでしないと、自分達の縄張を守れないからな。
そのため、法律の強化が始まったとしてもしばらくは大丈夫そうだ。
それはともかく。
今は放課後で、東京スポーツの取材の真っ最中だ。
取材に来たのは、スポーツライターの女性とカメラマンの女性が1人ずつであり、取材で最初にやったのは実際の射撃についてだった。
クレー射撃で実際に使う道具だったり、弾丸の装填から目標の物体を狙い撃って使い終わった薬莢を排出するまでの動作を実際にやって見せたりもした。
その中で、カメラマンの女性はかなりの量の写真を撮っていて、スポーツライターの女性は疑問に思ったことをすぐに聞いてきてくれた。
そして、一通りの作業が終わった後には本格的な取材に移るため、普段はグダグダと雑談を行ってお茶なんかを飲む部屋に移って現在に至る。
「では最初に、氏名と所属高校を教えて下さい」
「黒澤恵介、聖華高校1年生です」
取材はライターの女性がメモを取る以外に、ボイスレコーダーで録音してそれを再生しながら取材内容を構成していくらしい。
そのため、まずは名前と高校名を言わないと誰が誰なのかがわからなくなる。
そして、ライターの女性が前もって用意してきた質問を俺に投げかけてくる。
「クレー射撃を間近で見ましたが、実際に撃っていて1番気をつけいるのは何でしょうか?」
「撃っている最中でしたらターゲットの周囲に何があるのかを気にしますね」
「と言いますと?」
「銃を扱う上で気をつけないといけない点が4つあるんですよ」
「へぇ、4つもあるんですか」
「はい、まず1つ目は銃を持った瞬間からその銃にいつも弾丸が装填されているとして扱うんです」
「それは実際に装填されていなかったとしても?」
「えぇ、銃による事故を起こした人の多くが弾丸が入っていなかったと言い訳しますので、銃をレクチャーする人は最初にそう言います。ここの顧問も最初はそう言っていました」
「となるとやはり、そこで意識の差が出てくるんですね?」
「所謂、銃のプロという人ほど自然の動作の中でも気を遣っているはずですよ」
「プロは銃に対して気を遣う、と」
ライターの女性が、手持ちのメモ用紙にメモを書き終わると質問が飛んできた。
「では、次に気をつけていることを教えて下さい」
「次に気をつけているのは壊したくないものに銃を向けないことです」
「確かに銃を構えて向けられたら怖いですからね」
「それもありますし、銃を扱っている人物にとって壊したくないものに銃を向けていなかったら、暴発しても当たりようがありませんからね」
「なるほど、ではそれと連動して最初に言ったことにつながるんですか?」
「いえ、その前にワンクッションがあります」
「ほぅ」
ライターの女性が書いている動作を止めて、俺を見ながらこう訪ねてきた。
「では、そのワンクッションとは何でしょうか」
「撃つ瞬間まで引き金に指をかけないと言うことです」
「引き金はそう簡単に動くものなのですか?」
「銃の種類にもよりますが、簡単に動く銃だと驚いた拍子に簡単に動きますからね。やっぱり、銃を持っている間は銃のフレームやトリガーガードと呼ばれる引き金を覆っている部分に指を添えておきます」
「そうすれば、暴発の危険性は大幅に減りますね」
「えぇ、少なくともこの4つの原則を守っていれば人為的な暴発は防げますね」
「人為的、と言いますと銃自体の暴発もあり得るんですか?」
意味深な俺の発言に、ライターの女性は首をかしげながらそう聞いてきた。
そのため、俺は簡単な言葉を使って説明した。
「火薬の量や種類、銃の手入れや使う環境によって暴発する可能性が発生します」
「つまり、メカニックな部分で注意を怠れば暴発してしまうんですね?」
「はい、あくまでも可能性の範囲内ですがその可能性を限りなくゼロにするには使い終わった後に手入れをするのが1番良いですね」
「なるほど!」
そんな会話をした後は、好きな銃のカテゴリーや入部のきっかけ、その他諸々の話をしてお開きになる。
「それでは!今日はお世話になりました!」
「どーも、こちらこそ楽しい時間をありがとうございます」
そして一通りの取材が終わった後、ライターの女性とそういうやり取りをした最後はカメラマンの女性が部員達の集合写真を取って終了となった。
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「あ~、疲れた」
「ったく、1人で全部やるからだろ」
取材が終わった後、ぐったりと椅子に腰掛けてそう言った俺に響子が呆れた口調で返してきたので俺は反論をする。
「だってよ~、取材のご指名は俺だぜ?その俺が逃げ出してどーするよ」
「だからって真面目に受け答えしすぎなんだよ」
「真面目に取材しているんだから真面目に返さないとまずいじゃん?」
「だからってなぁ?」
俺がそう言うと、響子は他の部員達に答えを求めた。
すると、
「まぁ、これで部活動の知名度は多少は上がったな」
「部員数も増えれば将来的には彼を中心とした部活動になるだろうね~」
「ふふっ、その時は杏ちゃんがサブリーダーになりそうですね」
「ふん、その時になったらお願いするわ」
「おい、マジかよ」
と、部員達が好き勝手に言い出したので響子は驚きつつも、現状の部活動を思い出してあまり多くは語らなかった。
射撃部の部員は俺以外の全員が2年生であり、2年生が5人で1年生が1人という非常にアンバランスな形になっている。
その結果、来年度までに一定数の部員数を確保できなければ結果を残したところで廃部が確定する。
これは部活動をするに当たって、2人以上の部員がいなければ部活動として認められないという学校の規則があるためだ。
そのため、今回の取材で射撃部が学校内外において知名度の底上げをするために、俺はわざわざ危険を冒して取材に応じた。
そのことを知った響子達からは、次期部長としての期待が高まるが俺としてはあまり嬉しくない状況でもある。
何故なら、リーダーという存在が俺に合わないからだ。
とは言え、今回の取材によって俺の周囲の状況が徐々に変わり始めるのである。
以前、取材を受けた時にもこんな感じでした
どこで何を取材されたかは言えませんが。




