第10話 家の事情で苦労する行事
聖華高校 教室
「…」
俺は教室の自分の席で、1つの悩み事について本気で悩んでいた。
それは5月上旬、射撃大会で結果を残したことで射撃部の廃部が流れた後に学校で行われる行事である授業参観についてだ。
そのことについて、廃部の件がなくなってホッとした夜に母親が思い出したかのように俺にそのことを言ってきたので、その時は血の気が引いた気がした。
正直、高校に上がって授業参観があることに驚きつつも俺を悩ませている重大な懸念材料がある。
それは、家族がヤクザだと言うこと。
クラスメイトには、一般的な会社の社長の子供だと言っているが会社勤めに見えない人が時折、送迎に来ていた時期もあったから母親に理由を聞くと周りを威圧するつもりでやったと言われた。
逆効果だからそういうのはやめてくれ、と俺は怒りながら猛烈に頼み込んだら渋々ながら了承してくれた。
それと引き替えに、授業参観だけは外せないと言われてすんなりと了承しちゃったから恐らく、彩葉と琴音も来るんだろう。
(あーやだやだ、こんな面倒くさい心配事に悩まされるんだったら変に交渉しなきゃ良かった)
只でさえ、平和な学園生活を送りたい俺にとって自分自身がヤクザだと言うことを、表立って言いたくないのに親が来るのはかなりのストレスになる。
そのため、引き受けちまったもんは仕方ないからせめて変な格好で来ないでくれよ、と思いつつも授業を受けるのだった。
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昼休み 中庭
「しっかし、学生達もずいぶんと落ち着いてきたな」
「そうですね、入学してから最初の2週間は恵介君と一緒にお昼ご飯を食べようとする人が多かったですからね」
「それでも週2のペースで色んな人と昼食を食べていたら皆、慣れたようね」
「ビッチみたいに色んな人と会話をしたらそりゃ、慣れるでしょ」
「それは恵介君の人徳でカバーしているからいいと思うわ~」
とは言え、昼食の時にはよく一緒に食べているメンバーである珠緒やまどか達の他に、珠緒の友人である尾頭祐子が加わった。
彼女は、お姉さんキャラである彩葉と違って完全なおっとりキャラであり、何をしても動物のナマケモノのようにのんびりとした性格である。
そのため、単独行動をさせると雲のようにどこかへと行ってしまうので集団行動では注意が必要らしい。
そんな祐子が何故、珠緒と友人になったかというと珠緒が意外と世話好きで、おっとりすぎる祐子を見てられなくなって会話をするようになったらしい。
そんな訳で、祐子も昼食を一緒にすることになったがかなりのんびりしている。
のんびりしすぎていて、まどかちゃんやなのはちゃんもかなり戸惑っているが俺としてはあまり気にしないで会話を続けていこう。
「人徳なのか?ってビッチとは違うだろ~」
「じゃあ何?強姦魔?やだ、不潔~」
「なかなかにひでぇ事、言いやがる」
俺と珠緒の会話に、まどか達はいつものことかと思ってスルーしていたが祐子はニコニコしながらこう言ってきた。
「お二人は恋人みたいに仲がいいんですね~」
「こ・・・!」
「あぁ、確かに普通に姉弟よりも仲がいいと言われますね」
祐子の発言に、珠緒は赤面して声を詰まらせた一方で俺は普通に返したのを聞いて、まどか達も飲み物を吹き出した。
「うおっ、いきなり吹くんじゃねえよ」
「あ、あのぉ・・・!」
「姉弟以上の仲がいいってどういう意味!」
「あくまでそう見えるってだけだろ、なぁ?」
「え、えぇ・・・確かにそうね」
まどかとなのはが矢継ぎ早に質問してきたので、俺は珠緒にそう言って話を振ると彼女は冷や汗をかきながら答えた。
しかし、それでは納得しないまどか達によって質問攻めを食らったが終始、祐子はニコニコしながらその会話を聞いていた。
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授業参観 当日
相変わらず、教室は俺ともう1人の男子生徒である東郷雄一郎を中心として騒がしいが、その雰囲気にちょっとした緊張が見られる。
まさか高校生になってまで、授業参観があるとは思ってもいなかったからだ。
そんな中で俺も緊張しているし、まどかも今朝からずっとだんまりだ。
「まさか、射撃部のエースも緊張するとはな。俺も驚きだぜ」
「そういう雄一郎はどうなんだ?親御さんが来るんだろ?」
雄一郎に声を掛けられたので、俺が思い出したかのようにそう言うとこんな返事が返ってきた。
「俺ン所は両親が来るな」
「おぉ、うらやましい。俺のところは父親がいなくてね~」
「実際、そうでもねーよ」
俺が憧れの表情でそう言うと、雄一郎は面倒くさそうな顔で説明してくれた。
彼曰く、彼の両親はそれぞれの考え方の違いから口論が絶えない上に父親は毎日の如く、違う女性を家に連れ込むので彼自身は高校を卒業したら家を出て就職するらしい。
家庭と言っても、色々あるんだなぁと思っているとホームルームのチャイムの鐘が鳴ったので雄一郎との会話はそこで区切り、それぞれの席に着いた。
「えー、今日は授業参観と言うことで―――――」
担任の先生が色々と説明するが、授業参観があるとは言っても特にこれと言って特別なことをする訳でもない。
理由は、普段通りの日常を親御さんに見せることでどういった学園生活を送っているかを知ってもらう意図がある。
そのため、一般的な生徒は普段通りの生活を送っていれば良い。
(だがウチの母親の場合、自身がヤクザだとはっきりとわかるような服装で来るかもしれない!)
俺の母親はヤクザの組長であるため、普通の人との価値観やら何やらがかなりずれている。
正直な話、母親は警察からも目をつけられているので来ないでほしかったのだが、決まってしまったものは仕方がない。なるべく、穏便に済ませるように努力しよう。
俺がそう思っていると、先生の話が終わって教室から出て行ったので、授業開始のチャイムが鳴るまでに多少の時間が空いた。
その時間を使って、緊張して黙り込んでいるまどかに声を掛ける。
「なぁ、まどか」
「ひゃ、ひゃい!」
「かなり緊張しているようだが大丈夫か?」
「だ、大丈夫でしゅから!大丈夫でしゅから話しかけないでくだしゃい!」
「・・・」
全然、大丈夫なようには見えないがこれ以上の会話を求めたら、失神してしまうかもしれないから俺は黙っておく。
しかし、まどかの声によってクラスは幾分かの緊張がほどけたようで会話もラフなものになってきた。
そして、担任の先生が入ってくるのと同時にクラスメイトの親御さんが入ってきて授業が開始した。
授業参観・・・うっ、頭が・・・
という冗談はさておき、そろそろ主人公の能力を使う場面を増やしていこうかな、と思っています。
理由としては、彼女いない歴=年齢の作者にとって楽しい学園生活なんてあまり想像できませんので、そうさせてくだちぃ