第8話 大会当日 後編
大会 射撃場
予選の5ラウンドが終了し、決勝での戦いでは異様な空気に包まれていた。
その原因は、俺の射撃の腕がとても高いことだった。
事実、俺は折り込んだショットガンに弾丸を詰めて銃身を射撃に適した場所に戻すとカチリと音がして装填が完了したので銃を構えると、目標物が機械から飛び出した。
そのため、俺はそれを狙ってから引き金を引き絞るまでに掛かった時間は1秒程で、飛んでいる目標物を撃ち落とした。
それを見ていた観客にはどよめきが走り、電子表示板には全ての目標物が打ち落とされたことを示す数値が書かれていた。
その表示板に書かれている俺の名前の下に『130/150』という数値が書かれており、他の選手と比べて1発の撃ち漏らしもないことが観客のざわめきを引き立たせている。
他の選手は、少なくとも1発以上は撃ち漏らしているのに男である俺が撃ち漏らしがないということが異例中の異例だということだ。
しかし、俺はそんなざわついた空気を気にせずに次の目標物が飛ぶのを待つため、使った薬莢を排出して際装填している。
そして、俺が撃つべき目標物は全てが撃ち終わった。
「撃ち方、終わり!射撃要員は交代せよ!」
そのアナウンスと共に、俺は構えていた銃を下ろして息を吐きながら肩の力を抜いて待機室に移動した。
俺が参加していたグループでは、俺が男だということで参加者から熱い視線を受けていたがそれらを全て無視して、射撃に集中していたら150点中の150点という最高得点をたたき出してしまった。
そのため、参加者や観客からはかなりのどよめきが走っているのが目についているので、改めて女性中心の世界なんだなぁと改めて実感した。
実際に参加者は全員、女性であるのと同時に観客もほとんどが女性なので男がクレー射撃なんてできる訳がない、という言葉が射撃場まで聞こえてきたぐらいだ。
俺が最高得点をたたき出した結果、そういった言葉は聞こえなくなったがあまり嬉しくはない結果だな。
理由は俺がヤクザだからだが、小さい頃に良心でダムの決壊を防いだのに親がヤクザということだけで、記事には口汚く書かれたのが印象に残っている。
それでも、俺が持っている能力は必要な時に平気で使わせてもらうが今回の件でも取材した後に、口汚く書くんだろうなぁと思いながら待機室に戻った。
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夕方 大会終了後
「結果はどうだった?」
俺が響子達に訪ねると、響子がこう返事をしてきた。
「私が147点で明理が恵介と同じ150点、恵里香が148点で美玲が146点、杏が145点だった」
「そか、なら今回は何とか存続できたってことだな」
「てことは――――」
俺がそう言うと、響子達が期待した目で俺を見てきた。
そのため、俺はやれやれといった感じでため息を吐いてこう言った。
「今回は俺達の勝ちだ!」
「「「「「やったーーーー!」」」」」
響子達は俺の宣言で、大きく飛び跳ねながら喜びを分かち合った。
彼女達がそうなるのも無理もなく、この1ヶ月間はハードな訓練続きだったからそれから解放されるとなるとはっちゃけたくもなる。
訓練ではショットガンによるクレー射撃で一定数の点数を稼がない限り、他の銃を触ることすら厳禁にしていた。
そのため、訓練の終盤あたりには愛用の銃に触れないストレスで彼女達の人格がおかしくなりかけていたため、今回の件で解禁となった。
そのため、彼女達にその旨を伝えるとさらに喜び包まれたので周囲の人達からドン引きされていたが仕方なしだろう。
そんな訳でこの事は後日、生徒会や関係各所に報告するということで纏まってその場は解散になった。
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家への帰路 車内
「一先ずは安心したといった表情ね」
「あぁ、訓練をやった甲斐があったというものさ」
帰宅時の車内において、珠緒がそんなことを聞いてきたので眠い目をこすりながら俺はそう答えた。
今までの緊張がほどけてどっと疲れが現れた証拠だが、今大会での結果は俺の予想を超えた結果となっていた。
元々、銃には興味があって射撃部に入部したが部活での空気があまりにもお粗末だったので、俺が理想とする空気に鍛え直したら普通に大会で勝てるレベルになってしまった。
もう俺1人で十分なんじゃないかなってレベルだが、リーダーは苦手な上に面倒な業務が多々あるようなのでしばらくは普通の部員で十分だ。
俺がそう言うと、彩葉や琴音が笑いながらこう返してきた。
「それが1番、恵介君に合っているわ~」
「けい君がリーダーとか変な感じがするのです~」
「てか、意外な一面が見れたわ」
彩葉達にはこの1ヶ月間、モチベーションの上げ方や保ち方の他に人を引っ張っていく方法や教え方などを聞いてお世話になったのだが、普段は1人で色んなことをやっているので人に物事を聞くこと自体が珍しい。
そのため、大会前にたくさんのことを彼女達から聞いたことに驚いていた。
しかし、それによって彼女達との距離も縮まったような気がする。
元々、母親の方針で1人でも生きていけるように色んな教育を受けていた影響で、自分1人で生活する上で必要な知識は自分で習得してきた経緯がある。
その結果、高校生になる頃には多くのことを知ることになった。
「とは言え、今後はこういったイベントがない限りは聞かないだろうけどな」
「あら~、残念ね~」
「せっかくだからもっと聞いてもいいのです~」
「でも仕方ないじゃない?恵介は結構、口下手だし」
帰路につく車内でワイワイと喋っていたが、家に着いた後は急激に眠気が襲ってきたのでお風呂で身体を洗ってからすぐに眠った。
射撃大会が長くなりそうだったので、二部構成にしました。
今後も、話が長くなりそうだったら二部構成や三部構成にしますので、よろしくお願いします。