第7話 大会当日 前編
クレー射撃はネットや本で知っている程度なので、細かい部分はあまり気にしないでくだちぃ
と言うことで始まりますよ~
大会当日 駐車場
「空砲の音と大会の周囲で行われている出店!こう言う空気ってやっぱり大会よりもお祭りって感じだ!」
俺が会場近くの駐車場に降りると、大会があることを知らせる空砲と大会に出場する選手や観客達の腹を満たすための出店がたくさんある。
俺がそれらの光景にやや興奮していると、同じく車から降りた彩葉達が心配そうに注意してきた。
「恵介く~ん、興奮するのはいいけれど大会のことも忘れないでね~?」
「忘れてないよ?その証拠に必要な装備が入っているリュックを背負っているし」
「そうは言っても心配なので見ちゃいます~」
「ちょっ、恥ずかしいから車内でやってくれよ~」
「よしよし、全部入ってるね」
「ナァゼミテルンディス、珠緒サン」
そんな感じに姉弟でワイワイやっているとそんな空気に参加できず、遠巻きで見ている響子達の姿が見えたので、開けられたリュックを閉じてから彼女達のところに行った。
すると、
「彩葉さん、達だよな?何で来てるんだ?」
「あ、そっか。君達はこういったイベントで姉さん達に会ったことなかったっけ」
「あ、あぁ」
彼女達は呆然としながら、俺にそう呟いた。
響子達は、武蔵黒澤組の構成員である母親を持っているので組織としてのイベントには、参加したりもしていたが射撃大会のような第3者が企画するようなイベントでは彩葉達を見かけていない。
そのため、俺と彩葉達の会話を見ていた彼女達には形式張った組織の一員ではなく、普通の姉弟や恋人同士に見えていたはずだ。
その結果、それを見ていた部員達からは色んな意見が出てきた。
「・・・ずいぶんと楽しそうだった」
「そりゃあ姉弟だからね」
物静かな恵里香がそう言ったので、俺がそう返すと明理が反応してきた。
「それにしちゃ、ずいぶんと親密そうだったがどういうこっちゃ?」
「色々と訳ありでね~、そう多くは話せないんだ」
俺がそう言うと、今度は杏が不満げにこう言ってきた。
「え~?余計に気になるんだけど~?」
「ごめんよ、話せる機会があればいいんだけどねぇ」
俺らがそんな感じで会話をしていると、
「君達が射撃部の部員達ね~」
「見た感じ、楽しそうで良かったのです~」
「ふん、まずまずってところね」
と、俺の肩や腕に手をくっつけながら彩葉達が会話に入ってきた。
そのため、響子達は短い悲鳴を上げて震え始めた。
(どうやら彩葉達の無言の黒いオーラが見えたらしいな)
彩葉達は意外と嫉妬深いため、慎重に言葉を選ばないといけない上に響子達の母親が構成員だと知られたら運が悪いと消されてしまうかもしれない。
そんな訳で、俺は普通にこう言った。
「ちょ、黒いオーラを出すなって。響子達が怯えてるだろ?」
「あら~、それはごめんなさいね~」
「そんなこと言ってたらけい君が食べられちゃうのですよ~」
「どういった意味だよ、それ・・・」
「勿論、性的にでしょ」
「さすがにそこまではしないでしょ、ねぇ?響子達よ」
この1ヶ月間で、俺と彩葉達の関係は大きく変わってしまった。
まず、琴音や珠緒から正式に告白されてそれを受け入れてしまったので姉弟兼恋人という関係になり、彼女達との時間が以前よりも増えた。
増えることに問題はないのだが、彩葉達がかなりべったりとくっついてきているので、私生活において対応に困っている。
例えば食事の時に彼女達が俺に食べさせようとしたり、一緒にお風呂に入ろうとしたり、布団の中に潜り込んできたりもしている。
それを見た九条さん達からは、苦笑されているが彩葉達とは恋人以上の関係になっていない。
これは、俺や珠緒が高校を卒業してから色んな手続きをしようとの取り決めを彩葉達としたためであり、それ以上の関係になると組織的に抹殺するという脅しでもある。
ヤクザが自分の仕事をやめてしまえばそいつが属していた組織からは勿論、全ての構成員から見下げられる存在になる上に就職すら大変なので、ヤクザからすると死刑宣告に近い形になる。
しかも、やめたそいつが何かしらの罪を被っていれば警察からの礼状が来るので、社会復帰どころの話ではなくなる。
そのため、彩葉達は自分の立場や未来を失わないために行動をして、俺は彼女達を失わないために行動するように心がけている。
それはともかく
大会の参加するに当たって、必要なものは事前登録した時にメールできた暗証番号と大会の参加許可証の他に、ショットガンを持っている人は銃本体と所持許可証が必要だが幸いにも俺達は全員、銃は持っていないので参加許可証だけで十分だ。
と言うことで、俺と射撃部の部員達は参加者として大会に参加することになり、彩葉達は観客として観戦することになった。
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会場 待機室
「クレー射撃の参加者は全部で60名、5人一組で合計12組のゲームとなる。無論、俺達もその中にバラバラで組み込まれるがやることは変わらねぇ」
俺や響子達がいるのは大会の待機室で、ここでショットガンの最終確認や大会用のショットガンが渡される。
俺達は銃の許可証を持っていないため、ここで人数分の銃が手渡されるけど弾丸は5ラウンド分で合計300発も必要なため、会場に行かないともらえない上に持ち帰ることもできないので俺達も銃の確認を行う。
(銃の仕様は上下2連装式のショットガンで、学校で使っているのと同じ種類の銃な上に口径も12番ゲージを使っている。しかもチョークがないシリンダーボアか)
2連装式のショットガンは、構造がシンプルなので信頼性に富んでいるがその分、細かい部分で性能の変化が見られる。
例えば、12番ゲージというのは銃身の内側が18ミリという大きいサイズから多数の鉛弾が出てきて、しばらく纏まって飛んだところで拡散する。
この時にどれだけ、纏まって飛んでいけるかを決めるのが銃口付近につけられたチョークと呼ばれている絞り込みだ。
絞り込みは、最大で1ミリ程度だがこれがあると纏まって飛ぶ距離が伸びる。
今回の場合、ショットガンによる競技はトラップという種目で行われるので絞り込みは必要ないと言うことらしい。
「銃の異常はないな?」
「「「「「問題ないです」」」」」
俺が響子達に確認を取ると、彼女達はそれぞれの銃を点検し終わっていたようで異常がないことを伝えてきた。
「じゃあ、後は本番だけだね。肩の力を抜いて気張っていきましょう」
「「「「「はい!」」」」」
俺がそう言うと、笑いながら彼女達は返事を返してきた。