閑話 まどか視点
今回は主人公とは別の視点で書いてみました。
今までそういうことはあまりしてこなかったのでうまく書けているか、わかりませんが楽しんでもらえたら幸いです
「はわわわわ!」
「?どうしましたー?」
小学校に入学した時、私やなのはちゃんが初めて父親以外の男性と出会ったのはその時が初めてでしたし、“彼”と出会ったのも自分の教室に入った時が初めてでした。
彼は基本的に、こちらから声を掛けないとあまり喋らない人でしたが会話をしていると色々と教えてくれますから話題には尽きませんでしたし、何よりも彼が笑うととても心が温まるのを覚えています。
そして、何よりも彼と隣同士の席に着いていましたので学校の休み時間にはよく一緒に喋ったり、色んなところで遊んでいました。
しかし、転機が訪れたのは私達や彼が小学3年生の時でした。
その年の夏、それまでにはない程の大雨が降り続いていましたので東京に引いている川の内、1つのダムの貯水量が上回ってしまいました。
その上、ダムの排水溝が土砂や流木によって詰まってしまって水位が減少しない限り、排水することすらできない状態でした。
このままでは、ダムの崩壊によって洪水が発生する大惨事になる一歩手前というところで奇跡が起こりました。
私達の同級生である彼が、身の危険を冒してまでダムに来て排水作業を1人で行い始めたのです。
この時の様子は今でも大雨の時に話題に上がる程、有名になっていて当時の写真や映像がいくつも残っています。
そしてその時の様子を見ていた人達は全員、口を揃えて『八岐大蛇が現れた』と言う程の大きさがあったそうです。
その同級生こそが黒澤恵介君で、後の取材で『多くの人を見殺しにはできなかった』と語っています。
だけど時の人になった彼を追っかけたり、ファンになった人という話はあまり聞きませんでした。
何故なら、彼の一族はこの東京で1番有名な裏稼業の人であり、彼に無理矢理迫ろうとする女性はその人達に追い返されてしまったからです。
それがあったので彼を取材する記者さんはあっと言う間にいなくなってしまい、気が付けば八岐大蛇の能力を持つ少年の噂が一人歩きしていきました。
その結果、当時のクラスメイトから距離を取られてしまい、私達も自分達の親の方針で距離を取ってしまいました。
そのため、彼は中学までは同級生がいなかったと聞いています。
そんな噂が立って数年が経過して、私達は高校に入学することになりました。
私達もあの時よりかは大分、大人になって物事を自分で判断できるようになって来た時に偶然の再会をします。
それは、恵介君が私達と同じ聖華高校に入学してきたことです。
小学生の時は、親に遊ぶことを禁止されて彼と疎遠になっていたにも関わらず、こうして再び彼と会話ができると言ううれしさに声を掛けずにはいられませんでした。
「あ、あの・・・あなたもこのクラスの生徒さんですか?」
「はい、そうですが?」
「は、はわわ!」
声こそは声変わりで変わっていましたが、初対面の人に対して敬語で喋る癖は小学生の時から変わっていないようでした。
しかし、雰囲気などは小学生の時よりかはずいぶんと変わっていて完全に大人の雰囲気を醸し出している上、色んなことを知っている知識人になっていました。
私達も、受験勉強の間に色んなことを学んでいましたが彼の知識量はその日ではなく、彼にしか知らないような知識まで持っているようです。
そんな彼が、入学してすぐにやったことは部活動の入部でした。
彼曰く、中学生の時は勉強に集中していたので遊んでいる暇がなかったからその時間を、高校生の時に取り戻したいと言っていました。
とは言え、そんな彼が選んだ部活動は射撃部という落ちぶれた部活動であり、来月まで成績を残さないとつぶれてしまうところに入ってしまいました。
この情報が学校中に知れ渡ると、多くの生徒から落胆の声が聞こえてきました。
何故なら、彼はダントツのイケメンであるのと同時に色んな知識を持っているため、多くの部活から引く手あまただったからです。
そのため、どうやって射撃部を閉鎖させるかという過激な発想を持つ人まで出ているとのことですから、私やなのはちゃんはその人達とは仲良くなれそうにありません。
ですが茶道部に入った私達にとって、恵介君が射撃部に入ったことに関しては多少の嫉妬を覚えてしまいます。
ですので、私達は私達なりに行動することにしました。
~~~~~~
数日後
―――ピリリリリ、ピリリリリリリ、ポチッ
今日は休日ということで、映画館に誘ってみようと思って行動しました。
これはなのはちゃんとの打ち合わせで、恋愛では徐々に距離を詰めていくのがいいという情報をネットで見ましたのでこうなりました。
「はい、黒澤です」
「まどかですけど今、時間空いてます?」
幸い、恵介君は電話に出てくれましたが今日は休日の上にいきなりのお誘いなので、私個人としてはあまり期待しないでいます。
「大丈夫だがどうした?」
ここまでは問題ないようで、後は映画を見る時間帯を聞くだけです。
「映画のチケットを3枚、買ったので一緒に見に行きませんか?」
「映画って何時からの映画だい?」
「14時からです」
私がそう言うと、少しの間が空いて恵介君はこう言いました。
「この後の予定を確認しないといけないから折り返しの電話をしてもいいか?」
(そうですよね、急に電話をして映画を見に行こうなんて恋人でもないとすぐには答えられませんよね)
私はそう思いつつ、謝罪の言葉を口にしました。
「はい、急なお誘いでごめんなさい」
「別に構わへんよ~」
恵介君はそう言ってくれましたが、私としては何でメールで前の日に確認しなかったんだろうという後悔の念が膨れあがっていました。
その思いと共に、待つこと10分。
彼が午後の予定が空いているから行こう、と言う発言に頭がついていけずに少し頭が真っ白になりましたが、彼と共に行けるということが実感できるととても嬉しくなりまた。
そのため、すぐになのはちゃんに連絡を取って一緒に映画を見ることを伝えると、私と一緒に喜んでくれました。
それからすぐに、映画館に行く準備を整えて待ち合わせの時間に合わせて家を出発しました。
~~~~~~
最寄りの駅の広場
「はわわ!本当に急に入れてしまってすみません!」
「大丈夫よ、まどか。彼自身が数少ない男だから護衛が必要なだけであってこれぐらい問題はないわ」
学校の近くにある駅に到着すると、休日なのにスーツ姿の女性が何人かが集まっていて気になった私達は近づいてみると、その中心に恵介君がいたので反射的に謝ってしまいました。
何故なら、スーツ姿の女性達は完全に極道の雰囲気を出していましたのでとても怖かったんです。
この場に、なのはちゃんがいなかったら私は泣き出していたかもしれません。
「諸事情でこうなったがあまり気にしないでくれ。彼女達は仕事熱心だから」
恵介君は申し訳ない表情で行ってくれましたが、私は完全に縮こまってしまったのでなのはちゃんが受け答えをしてくれました。
そして、彼からある理由を聞かれました。
「それはともかく、なんで映画に誘われたのか。理由を聞いていいか?」
「あっ、それはですね」
私達が恵介君を映画に誘った理由を話すと、彼は納得した顔になっていました。
そして恵介君を含めた私達は、ボディガードの人達が周囲の人達を威圧しながら電車に乗って映画館に着くと、映画を見てその内容で盛り上がりました。
今後もこういったものも挟みながら書いていこうと思いますので、よろしくお願いします