第84話 サイマー領主
UN10000、PV50000突破しました。ノンビリまったり進行中です。
E級冒険者から領主の家来にランクアップした俺達だが、肝心な領主がとても貧乏だった。後半年くらいで金が無く成り潰れそうなのだそうだ。勿論俺達の給料も無い。
「マーガレット、何故ここの領地は半年経ったら潰れるんだ?」
「うむ、国に治める上納金が無いのだ。売れる物は全部売ってオーク討伐の代金にしたのだ」
「で?いくら位なんだ?国に納める上納金って」
「去年も払って無いから2000万ゴールドだな、ははは、絶対払えんな」
俺達の主人のマーガレットは去年も上納金を納めていないサイマーだった。元々大して税収が無いのにオークが出て来たものだから税収が更に減って悲惨な状況にある様だ。しかし、後半年有るので何とかなるかも知れん、嫌何とかするのだ。魔族の女共に俺の優秀な所を見せなければ面目が立たないのだ。
「はいはい。皆さん集合!」
「何だい?」
「ここの領地の借金が分かりました、全部で2000万ゴールド!半年で集めなければ俺達の就職先は消滅します」
「そんな金無いよ!あたしたちは月10万位しか稼げないんだ」
「大丈夫です今から稼ぎます、今現在300万ゴールド有る上に盗賊売った代わりに貰った毛皮何かも有りますから、あとはたったの1700万ゴールドです。勇者が居れば大丈夫です」
「そう言われると何とか成りそうな気がするから不思議だね~」
借金は早く返す方が良いので直ぐに行動開始だ。驢馬の荷車に荷物を積み込んで街に出発だ、クエスト達成の書類を持ってギルドに行って毛皮も売るのだ。忙しく支度をしてるとマーガレットがやって来た、金を稼ぐのなら自分も協力したいって話だ。どこまでも真面目な奴だった。
「私の荷物も積んでくれ、一緒に行く。何せ私の借金だから自分でも稼がなくてはな!」
「まあ良いけど、マーガレットは働いた事有るのか?」
「無いな、毎日武術の訓練ばかりだった。剣や槍には自信が有る。まあ男として育てられたみたいなものだな。」
マーガレットは一人っ子だった、元は男の兄弟が居たが死んだらしい。貧乏領主なので唯一残ったマーガレットを領主として育てた父親も去年死んで、悲嘆した母親も後を追うように亡くなったので今は天涯孤独なのだと言っていた。何気に可哀そうな奴だが全然暗くない所が逞しい、この世界では人間は早くから自立する様だ。今は形見の剣と槍を抱えて歩いて俺達について来ている。
「マーガレット、荷車に乗れよ。お前一応領主だろ。俺達と歩くことは無いぞ」
「気にするな、金も払えない領主に価値など無いからな」
「意地っぱりだな、マーガレット」
「意地しか残って無いからな」
「女魔王さんっすね、意地っぱりな所がそっくりッス」
その後3日掛けて街まで歩いたが、マーガレットは一度も驢馬に乗らずに歩きとおした。見上げた意地っ張り領主だな。ここでマーガレットの外見を見てみよう身長170センチ85・60.85のナイスボディーだ、父親がデカかったのでマーガレットもかなり背が高い、年齢は17歳なのだそうだ、もう少し上かと思っていた。体つきは引き締まっていてアリアやココよりも強いのは間違いない、冒険者としても全然違和感のない女だった。
「着いたッスね、これからどうします?魔王さん」
「最初にギルドに行こう、クエストの報告だ、ついでにマーガレットも冒険者登録しよう」
「領主が冒険者って変じゃないっすかね?」
「貴族の3男とか4男なんてのは良く冒険者に居るよ、手柄を立てて養子に行くんだよ」
「ほう面白い、私も手柄を立てて養子を貰うかな(笑い)」
ギルドにオーク討伐完了の報告をした、何時もの顔の怖い受付もオークの耳の数と上位種に驚いていた。オークの耳が規定数に達したので俺達は全員C級冒険者に昇格した、その時に俺はマーガレットも同時に冒険者登録して強引にC級にした、俺達は5人でチームを組んでオーク討伐をした事にしたのだ。
そしてオーク討伐の業績から俺達チーム・マーガレットはチームとしてはB級って事に成った。うむ、何でも言ってみるもんだな、ダメ元だったが成功した様だ。ついでに毛皮もギルドに買い取って貰った、値段は高くもなく安くもないギルド価格だ、これが12万ゴールドに成ったので食料なんかが買えそうだ。
「毛皮って結構売れるもんだな」
「服や敷物になるからね、冒険者の革鎧とかにもなるよ」
「俺達の居た世界より需要が有るみたいっすね、やっぱ丈夫だからっすかね?」
革製品は財布位しか使わないので良く考えた事は無かったが、この世界では動物の皮が売れる事は良く分かった。化学繊維やプラスチックが無いから加工しやすく丈夫な革には需要が有るという事だな、そう言えば今でも革ジャンやライダースーツ何かは革だな。俺もバイクに乗る時は革ジャン着てたな、転倒した時に怪我が減ると思って。でもな、転倒するのは革ジャン着てないシーズンなんだよ、冬は寒くてスピード出せないから転倒しないんだよな。
「何遠い目してるんですか?」
「いや、色々考えてたんだ。こっちの世界の事を知らないと金もうけも上手く行かないからな」
「全て君達に任せる、私は金もうけは分からんからな。領地の治め方と剣と槍以外は全然知らん」
「私達も冒険者のクエストで小銭稼ぐ位しか知らないね、後は身体売る位しか無いよ」
「身体を売るのは禁止する。変な病気を貰うと困るからな、やりたい時は俺か勇者で我慢してくれ」
「へへへ・・・、お金払うッス」
「「「・・・・・・・・」」」
「だからお前はモテないんだよ!馬鹿!」
「え~!お金払ったらだめなんですか!」
こいつは駄目駄目な男だ、彼女が居た事が無いのは本当だった様だ。プロしか知らない奴とは話が合わなくて困るな、逆に俺は女を買った事無いからこいつの考えは良く分からない、何時も彼女が居たからな。 その後アリアの借家に帰ったら家に住み着いている奴がいた、俺達が1週間程留守にしていたので近所の貧乏人が住み着いた様だ。
「何だいお前ら、私の家から出て行きな!」
「まあ待てアリア、追い出すな」
「何言ってるんだ、ここは私が家賃払ってるんだ!」
「黙れ!俺に任せろ」
家に住み着いてるのが男だったら俺は直ぐに全員捕まえて港に売りに行っただろうが、家に住み着いていたのは女と子供が2名だった。とても貧しいらしく痩せてボロボロの服を着ていたのだ。
「お前ら住むところあるのか?」
「ごめんなさい、有りません」
「そうか、それじゃここに住んで良いぞ。その代り働いてもらうからな」
「何だって!あんた正気かい!」
勿論俺は正気だ、アリアは自分が借りた借家に住みつかれた事に腹を立てているが、無人の家なのだから貧乏人が住み着くのは良くあることだ。それに俺は領主の領地に送り込む人間を探しているのだ。
「何を考えているのだ?魔王」
「領民を増やす事だマーガレット、この子達は領地で保護する。第一領民ゲットだ」
「良いっすね、留守番してもらう人が要るっす。雇うと金が掛るからこの人達にしてもらうと助かるッス」
「そう言われると、そうかも知れないね」
正直に言えば怯えた目をした女と子供を追い出せ無かったんだ、甘いのは分かっているが救えるのに見捨てるのは無理だ。それに領地に送るのは若い方が良い、これからの領地を担ってもらうのだ。
「すまんなサトウ、余計なもの抱え込んだ。お前の負担が増えた」
「良いッス、見捨てるのは無理っすよ。見捨てると後で後悔するっす」
「正義の味方は金が掛りそうだな」
「そうっすね、悪を殺せば終わりって訳じゃないっすね。殺すのは簡単っすけど、食わせるのは大変っす」
どうやら正義の味方は大変な様だ、こいつらを責任を持って食わせて行かなければならないからな。悪を殺しても金にも食い物にも成らないのだ。さて、勇者の沸かした風呂に入って明日への英気を養うとしようか、マーガレットと一緒に入ろうかな?それとも小汚い子供を洗ってやろうかな?