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ぶ~外れです! 賞品は魔王です!  作者: ピッピ
第7章 魔王冒険編
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第83話 魔王やる気を出す

 セイロン男爵からの通信をコーヒーを飲みながら勇者と待っている。通信玉は魔力が無いと動かないので勇者のすぐ傍に置いている、俺は背嚢の中にしまい込んでいたから全然作動しなかった様だ。なにせ俺には魔力が無いからな。


「一体何が起こってるのかな?平和な感じに見えてたんだがな」

「シルフィーネさん達が居るから戦争とかなら楽勝っすよ、もしかしたらヤバい奴が召喚されたんですかね?」

「そうだな、あいつ等が幾ら強くても戦車とか自衛隊が現れたらヤバいな」

「そりゃあヤバい所じゃ無いっすよ、虐殺されるっす」


 俺も勇者も小心者なので二人で話をしていると悪い予想ばかりに成ってしまう。もっと男爵と定期的に通信しとくべきだったと今になって後悔した。万が一俺の仲間が・・・いや止めよう。変な事を考えて実現すると嫌だから、こういう場合は楽しい事を考えるべきなのだ。


「マイナス思考は止めよう、鬱に成ってしまう」

「そうっすね、楽しい話するッス」

「・・・何が楽しいんだ?俺は食い物位しか楽しみがないぞ」

「俺は女っすね!彼女が欲しいッス」

「幾らでも居るじゃん、付き合えば良いだけじゃん」

「え~、告白して振られたら立ち直れないッス」

「大丈夫、慣れるから!振られても平気だから。次にもっと良いのを捕まえれば勝ちだから」

「ふぇ~、魔王さんは勇者っすよね。その折れない心が欲しいっす」

「何言ってるんだ、出会いと別れは普通だぞ。初めて付き合った女と結婚する奴は居ないぞ。自分に合った女を見つけて結婚するんだぞ、良いと思ったら付き合って、駄目だと思ったら次に行くのだ」

「結婚以前の問題ッス、まず相手を見つけないと・・・」

「デモデモだってちゃんか!全然勇者らしくないじゃん、気に入ったヤツ全員嫁にする位の勢いを持てよ若いんだから」

「魔王さんは?」

「俺はハーレムは面倒だから良いや、自分の時間が無くなっちゃうからな」


 戦闘力は物凄いが女には極端に弱い勇者だった、見た目も悪くないし、物凄く強いから普通にしてればモテるのだが、こいつは目つきがイヤラシイから持てないのだ。多分彼女が出来たら落ち着いて急にモテだすタイプの奴だと思う。まあそれはそれで困るのだが。


「あっ、通信っす!」

「魔王様!いますか!」

「居るぞ、一体どうした?何が有った!」

「いったい何処に居るんですか!何故連絡をしないんですか!何処に居るのだ魔王!さっさと帰って来い!」


 何だか向こうが騒がしい、男爵じゃなくてシルフィーネや腕輪ちゃんが怒鳴ってるし。何故か俺が怒られてる様だ。


「いまアルガルド帝国だ、冒険者として偵察中だ。書置き見てないのか?」

「「「「こんな文字読めんわ!」」」」


 こっちの大陸に逃げ出すときに、置手紙をしてきたのだがうっかりして日本語で書いて来た様だ。誰にも読めないので俺が何処に居るか分からなくなってパニックになってるらしい。


「あははは、魔王さんらしい阿呆っぷりっすね!」

「うむ、慌てると日本語になるのは当然だな、そこまで考えてなかった」


 その後延々サキュバス達やシルフィーネ、腕輪ちゃんにトランザムと順番に怒られた。そして彼女達は俺に早く帰って来いって怒ってた。しかし帰れと言われて大人しく帰る俺ではない、帰れと言われたら絶対に帰らないのが俺なのだ。


「黙れ!俺に指図するな!勇者、通信を切れ!」

「了解っす」


「・・・・・・・・」

「これからどうします?魔王さん」

「さて・・どうするべ?」

「魔族達の協力が無かったら俺達何も出来ないッスね」

「そうでもないぞ、勇者が居ればここら辺は切り取れると思うぞ。何なら大陸を全部取っても良いかな?」

「大陸全部はダルイから、ここら辺だけにしましょう。余裕が有ったら他の所も取るッス」

「そうだな、それで行こう。行き詰ったら・・何もなかった顔をして魔族の国に帰ればいいや」


 俺達の方針は決まった。ここの領地を分捕るのだ。そして豊かにしてノンビリ暮らすのだ、平民から貴族に成りあがってやるのだ。大体こういうのが普通なのだ、いきなり魔王とか戦争とかあんまりだ、コツコツ努力して成り上がるのが面白いのだ。根性と努力で成り上がってやる。


 で、次の日。俺は早起きをして領主の屋敷の周りを散歩する、これからの計画を立てなくてはならないのだ。歩きながら考えるのが一番だ、脳に血液を大量に送り込む必要が有るからな。


「やあ、おはよう」

「ああ領主さんか、おはよう」

「いい加減名前を覚えてくれないか、私はマーガレットと言うのだ」

「へえ、花の名前か。良い名前だな」

「ここら辺に沢山咲いているのだ、まあ大して価値が無い花だがな」


 領主のマーガレットと一緒に朝の散歩をする事に成った、俺はここの領地の問題点について聞いてみたのだが、一番の問題は魔獣やオーク達モンスターが居る事だった、これが居なく成れば人も増えて豊かになるだろうと言っていた。また、人が増えると魔物を狩る事も出来るのだが、人が少なすぎて現在は魔物に生活を脅かされて居るって事だった。


「成程な、つまり人が増えて魔物が減れば良いんだな?」

「そうだ、だが簡単にはいかないのだよ。昨日のオークみたいなのが沢山居るのだ。討伐する金が無いのだよ、昨日の分でスッカラカンだ」

「任せておけ、マーガレット。毎日肉が食える様にしてやるからな」

「毎日肉が食える様になったらお前の嫁に成ってやろう(笑い)」


 俺は勇者の所に帰って今後の打ち合わせを行う、と言っても勇者は頭を使うのが苦手なので俺が計画を立てて勇者が実行するのだ。まず街に帰って俺達はC級にランクアップする、そして金に成るクエストを片っ端から請け負って金を稼いで名前を売るのだ。有名になれば言ってることが信用してもらえるからな。E級冒険者がマーガレットの領地は良い所だって言っても信用されないが、B級冒険者が言えば他の冒険者も信用してくれるって作戦だ。


「成程、難しいクエストをクリアすれば良いんスよね?」

「そう、殲滅クエストじゃなくても、金になる奴をクリアする。そしてマーガレットの領地に人を送り込むのだ」

「どうやって送り込むっすか?農民とか自分の畑を持ってるから絶対動かないっすよ」

「そうだ、だから何も持って無い奴を連れて来る。例えば孤児とかな」

「ははは、何の事は無い孤児達を助けたかったんスね。俺も賛成ッス!孤児の為なら殲滅クエストでも我慢してやるッスよ」

「良し、良い覚悟だ。綺麗事だけじゃ世の中は変えられんからな。俺達は汚れ役をやらないといけない。報酬は孤児たちの笑顔だ」

「へへ、何か勇者っぽいッス。やる気が出て来たッス、邪魔する奴は皆殺しッス!」


 俺達は今後の予定をアリア達に話した、そして報酬の半分150万ゴールドを渡した。彼女達は好きにすれば良いのだ、俺達に無理に付き合う必要はないからな。しかし、彼女達は俺達に協力してくれる事に成った。領主の家来の方が冒険者よりも地位が上なのだそうだ、今は貧乏でも普通の領主に成れば将来は安泰だって事らしい。

 そもそも冒険者っていうのは、有名になってどっかの貴族や金持ちに雇われる為にする仕事なのだそうだ、そういう意味では既に領主の家来に成ってる状態は都合が良いのだそうだ。


「つまりアレっすね、今は零細企業に就職した感じっすよね。俺達が頑張って優良企業にしようって感じっすよね」

「まあ平たく言えばそうだな、領主が儲かれば俺達の待遇も良くなるだろうな」

「だったら簡単だよ、皆で頑張ろうよ!ウチ達も頑張るよ!雇われただけ凄いよ!」

「そうそう、領主様に雇われるってのは冒険者としては名誉な事なんだよ」


 成程、冒険者って派遣社員で領主や貴族に雇われるのは正社員だったのか、確かに将来不安定なパート従業員ってのは不安だよな。領主に雇われると公務員みたなものなのだな。そう考えると納得がいった。ただし領主は貧乏なので俺達がここを立て直さないと消滅しそうな感じだ、言うなれば財政破綻した自治体みたいなものかな。今は給料ないしな、ゼロからの出発って奴か?いやマイナスからスタートかな?

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