第79話 盗賊現る
お~!ブクマが何か増えてますね。100個溜まると冒険者でいえば初心者冒険者なんですかね?1000個溜まると中級で1万個なら上級冒険者位ですかね?10万個溜まるとオリハルコン級の冒険者とかになるのかな?1万個以上溜まると書籍化するみたいだからそう的外れでも無い様な気がしますね。
「ロバート!朝飯だぞ」
「ロバート?・・・驢馬の名前っすか?」
「そうだ、こいつは驢馬のロバート君だ。今俺が考えた」
「何か無駄にカッコいい名前っす、外人ぽいっすね」
この驢馬はとても役に立ってくれているので、良い餌を朝は食べさせるのだ。そこらの草でも良いのだがトウモロコシや大麦とかの飼料を食べさせると元気になるのだ。俺達がパンばかり食べてると力が出ないのと同じだな、米を食べないとやる気が出ないのだ。俺が餌や水をやるのでロバートは俺のいう事は良く聞く様になって来た。一日中見ていると何となく表情が分かるように成るから不思議なものだ、ロバートは頭が良いので俺の言いたいことが少し分かるような感じだった。
「あんた、動物好きなんだね」
「おう、餌をやって美味そうに食う奴なら全部好きだぞ。カエルから鳥まで何でも飼ったな」
「ああ、それで飯作るのが好きなんですか。人間も餌付けしてますもんね」
「ココも餌やってみろよ、仲良くなれるぞ」
「噛まれそうで怖い・・」
どうもココは動物が苦手の様だな、恐怖心を持つと動物は直ぐに気が付くから舐められるのだ。噛まれたら噛み返す位の性格じゃないと動物の主人にはなれないな。俺は猫や犬に噛まれたら噛み返すから直ぐに噛まれなくなるのだ、これが野良人間の特徴だな。ロバートに朝飯を食わせて、俺達もパンとスープで手早く朝食を澄まして出発だ。今日もテクテク歩いて40キロ移動するのだが別段嫌とは思わなかった。景色を見たりアリア達と話をしてると面白いからな。
「そう言えば、オークって何だ?」
「オークは魔物さ、豚と人間の合わさった様な奴だよ」
「強いのか?」
「あたしとココが居れば1匹なら余裕で勝てるけど2匹は厳しいね」
「ふ~ん」
アリアとココの2人がかりで1匹なら余裕、2匹なら不利って言われてもオークの強さが全然分からない。そもそもアリアはショートソードを使うし、ココは弓を使うのだ。連携して戦えば1匹相手なら余裕が有るって事なのかな?アリアとココは俺達より一つ上の冒険者だ、俺達は初心者見習いのE級冒険者、アリア達はD級冒険者。大体C級位ならプロの冒険者でオーク達と互角に戦えるのだそうだ。
「全然強さの基準が分からんな、武装した兵士はどの位のランクになるんだ?」
「武装した兵士ならC級位じゃないかな、完全武装の騎兵ならB級位だと思うけど」
「成程、冒険者って大した事無いんだな」
「俺達全然クエストした事ないし、他の冒険者を知らないからしょうが無いっすよ」
「どっかにオークが落ちてないかな、戦って見れば強さが分かるんだけどな。C級冒険者でも良いな、オークより強いなら練習台に丁度いい」
「盗賊とか出ないっすかね、お約束で何か出るハズっす」
ここまで歩いて来ても何も出ないのだ、それどころかすれ違う人間もドンドン減って来ている。俺達は僻地に向かっている様だった。これだけ人が少ないと盗賊も出そうに無い気がする。金を持ってるやつが通らなければ商売にならないのだ、少なくとも大人数の盗賊は居ないだろうな~等と考えていたら、案の定盗賊が出現した。
「ウエ~ヘッヘ、お前ら荷物を置いて・・・うわ!」
汚い3人組の盗賊が現れた瞬間勇者が3人をぶちのめす。相手の口上を聞いてやるような優しさは勇者は持って無いのだ。俺は3人の身ぐるみはいで使えそうな物は荷台に載せた。ボロなナイフとか剣しか無い貧乏な盗賊だった。
「どうしますか?消しましょうか」
「こいつらプロじゃないな、普通は農民か何かじゃないかな。道に急に出て来るとか馬鹿だろ」
「なあアリア、こいつらどうしたら良いんだ?」
「盗賊は殺しても良いし、奴隷商に売っても良いんだ。後は役人に渡しても金になるよ」
「ふ~ん」
「殺さないでくれ!俺達は農民なんだ、食うに困って仕方なくやったんだ!」
「そうだ、あんたらを傷つける気は無かったんだ!」
悪人ってのは傑作だ。いきなり武器を持って出て来たのに悪気はないって言うのだ。俺はこいつらの言い分が可笑しくてゲラゲラ笑ってしまった。こんな戯言に騙されるのは馬鹿だけだ。
「でもお前ら、女2人だけだったら襲って犯すだろ?ついでに口封じに殺すか奴隷商に売るよな?」
「・・そんな事しね~!」
悪人って言うのは最初から極悪なのは少数だ、いきなり人を殺しだす連中は完全に狂人だ。こいつらの様に少しづつ悪い事をしてドンドン悪くなってゆくのが普通なのだ。犯罪の一線を超えるっていうのはこういう事だ、後は捕まらない限りエスカレートして行くのだ。
「お前らのアジトに連れて行ってもらおうか。そこでお前らの処罰を決める事にする」
「・・・」
「お前らが言うように物取りなら、生かしておいてやる。違えば殺す」
「・・・・」
俺はこいつらにチャンスを与えてやった。こいつらの言うように旅人の物を取るだけならアジトには食い物や金目の物が有るだけだろう、それ以外の物が有ればこいつらは死ぬのだ。殺した奴は殺される、命は等価でなければならないのだ。じゃなければ犯罪者だけが楽に生きられる世の中になってしまう。
「案内しろ、断ればここで殺す」
「・・・分かった・・」
「甘くなったッスね。魔王さん」
「まあな、今は魔王じゃないからな」
俺が魔王だったら、魔族の国で盗賊を見つけたらその場で殺していただろう。魔王として国民を守る義務が有るからだ、だが今は魔王じゃない、ただの人間の冒険者なのでそこまで厳しくする必要もない、俺は4人を守れればそれで良いのだ。
「ここです」
「・・・何にもね~な」
「ボロな小屋が有るだけっすね」
盗賊に案内されて来たアジトは小さな小屋が有るだけだった。中には狩猟の道具が有るだけだ、村の狩猟小屋なのだそうだ。ここに攫った女や殺した証拠が有れば即座に殺す気だったが。、こいつらはどうやら初めて盗賊をした連中らしい。そして初めての獲物が俺達だった様だな。
「俺達が初めての獲物なのか?」
「そうなんだ、冒険者がこんなに強いとは知らなかったんだ。これならオークと戦った方が良かった」
「オークだと。お前らもしかしてボッチ村の人間か?」
俺達がオークの討伐に向かっているのがボッチ村、こいつらはそこの住民らしい。ここから1日の距離なので辻褄は合うようだ。さらに詳しく聞いてみると、こいつらが逃げ出した原因はオークに有るらしい。元々貧乏な村なのだがオークが現れる様になったので、狩や畑作業が出来なくなって生活が苦しくなった来たらしい。領主に討伐を頼んでも領主も貧乏でまともな兵士が居ないので無理なのだそうだ。
「それで村を逃げ出して来たのか?」
「そうなんだ、街に行きたいけど村長に有り金残らず取られて金が無いんだ」
「なんで村長に金取られたっすか?」
「ギルドにオークの討伐依頼を出す為だって言っていた」
全部で100人程の小さな村なので全員から金を集めても大した額にはならないそうだ。領主が半分金を出してやっとかき集めた金が300万ゴールドなのだそうだ。
しかし凄い貧乏な領主もいたもんだな、お抱えの兵士を持って食わせると金が掛るのは分かるが、自分の村を守れないのなら意味が無い領主だな。昔の豪族が支配していた様な構造なのかな?家族や親せきで支配者をやってる様な感じなのだろうか?まあ俺には関係無い話だと思うが、ここで俺達がオークを殲滅出来たら領主の戦闘力よりも俺達の方が上って事だよな。へへ、つまりここら辺でやり放題って事か。
「はははは~!やり放題なのだ~!」
「何するっすか?戦争っすか?支配するっすか?」
「ちょっとやめてよ!私は冒険者でいたいんだよ」
「支配者も良いかも・・・、私一回で良いから偉くなってみたい」
捕まえた盗賊達は、俺達がとんでもない人間だと気が付いた様だ。軽い気持ちで悪人に成ろうとした普通の人間が、魔王を見たのだからたまらない、青い顔をしてだだ震える事しか出来なかった。自分の村にオークよりも恐ろしい者達が来そうなのだ。盗賊なんてのは旅人から何か盗むだけだが、村や領地を丸ごと取ろうとする人間ってのはどの位悪いのか見当もつかない様だ。
「さあ、お前ら、きりきり歩け!村に案内するのだ!」
「道案内が出来て良かったっすね、魔王さん」
「ひい~!魔王!・・・」
「気にするな!ただのあだ名だ!へ~へっへ」
俺達は嫌がる盗賊の尻を蹴飛ばしながらボッチ村に向かったのだ。気分の良い俺はロバート君に眉毛をマジックで書いてやったら凄いイケメンの驢馬になったので益々気分が良くなった。村長ってのも面白そうだな、領主ってのもやった事ないな。4天王みたいなものかな?最弱の4天王とか面白そうだ、負けた時に負け惜しみを言う役って憧れるよな。でも敵は誰だ?勇者は味方だし、魔王は俺だしな・・・。